隣の席
俺が、大学の教室でお昼休みに弁当を食っていると、急に後ろから肩をたたかれた。
だれかと思う前に、声がしたので、すぐにわかる。
「一人で弁当?」
「うるせーよ、一人で食べたい時もあるんだよ」
小学校から大学まで一緒という、かなり珍しいと俺的には思う女子である海南照が、俺の横に座った。
「ほんとー?だって、ここ最近ずっと一人じゃんか」
笑いながら、俺の横で弁当を広げる。
今日の中身は、コンビニでも売っているような鮭弁当だった。
「いっただきまーす」
手を合わせて言うと、割り箸を割り、もそもそと食べ始めた。
俺も横で続きを食べる。
「ごちそーさま、でしたー」
海南が再び手を合わせていった。
「やっと食い終わったか」
「これが普通なんだよ」
5分ぐらいで食べる俺に比べて、海南は10分は最低でもかかる。
「さて、ゴミ捨てに行くか」
「あ、一緒に行くー」
俺が立ち上がるのと合わせるように、同時に立つ。
「…まあ、荷物はそのままでも大丈夫か」
「そうだよ、誰も盗りはしないって」
にこやかに言っている海南を見ると、確かにそんな心配も消える。
「じゃ、行くか」
教室を出て、廊下にあるゴミ箱へ、包み紙ごと燃えるごみとして捨てる。
「ついでにトイレ行ってくるね」
「俺も行くさ」
「…中まで?」
なにか期待をしているような目だが、俺はそんな根性はない。
「男のほうさ。なんで女のほうに行かないといけないんだよ」
「だって、面白いじゃん」
「面白くないって」
その直後、なぜか俺は手をつながれた。
「…へ」
振り払うこともせず、指をからめられる。
「ねえ、聞いてもいい?」
「なんだよ」
「あたしのこと、どう思う」
「それを、何でここで聞くんだ」
窓側へ静かに寄せて、俺は海南に聞く。
「だって、気になった時に聞いておかないと…」
「小学校からずっと一緒のところに通ってて、とうとう大学まできてしまった。何かしらの縁は感じるし、友達としては最高さ」
「うんうん」
「でもな、彼女とか、付き合うっていうことになると、また別問題。というか、別次元の問題な感じなんだよ。別に、嫌いっていうわけじゃないんだ。でも、好きかって聞かれて、そうですねって、俺は言い切れる自信はない」
俺は、長々と話したようだが、1分もかかっていない。
だが、それが1時間にも、何日にも感じるほど、長い時間が流れた。
「…そう。そうよね、急に言われても困るだけだものね。ごめんね」
海南は指を外し、俺から走って逃げるように行ってしまった。
「俺はなんてチキン野郎なんだか」
独り言を言うと、同じ方向にあるトイレに、俺も歩いて行った。




