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レンタルカレシの利用術?

作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
掲載日:2026/09/10

「理想の恋人」を1分133円で買えるサービスがある。

目的は胸キュンでも、ロマンチックなデートでもない。私が呼んだのは、ただの「即戦力」だった。

 カレシをレンタルした。1時間¥8000だ。当面、3時間でお帰りいただく予定━━。いや、そんなひとを邪険に扱うような言い方はよくない。カレにだって人格もプライドもあるのだ。まあともかく。

 制限時間はできる限り有効に遣わなければ……。何しろ今のわたしは金欠気味だ。

 レンタルカレシ3時間分の出費がぎりぎりの線なのだ。

 それ以上出費が重なるとその後食べていけなくなりそうなの。


じゃあ、時間を一分一秒たりとも無駄にはできないわね」

 わたしは深呼吸をし、玄関のドアノブに手をかけた。

 心臓がけたたましく鐘を打ち鳴らしている。

 ドアを開けると、そこには眩しいほどの笑顔を浮かべた青年が立っていた。

「はじめまして、今日一日きみの彼氏を務めるレンです」

 爽やかな声が廊下に響き、わたしは思わず気圧されそうになる。

 だが、ここで怯むわけにはいかない。

 なんせ一分あたり133円もかかっているのだから。

「……上がって。まずは、あなたに手伝ってもらいたい作業があるの」

 わたしは彼を部屋へ招き入れると、積み上がったダンボールの山を指さした。

「いいこと?これから3時間はわたしの言う通りの作業をお願いいたします」

 わたしはきっぱりと言った。

カレシは、ちょっとどころではなく肩透かしを喰らったような顔をした。

「え、と…。それは……」

 カレシは何かを言いかけた。が、わたしがそれを制する。

「えっ、引っ越し作業……? デートじゃなくて?」

「1分133円の労働力よ。恋人ごっこで浪費する余裕はないわ」

戸惑うレンに軍手を投げつける。彼は一瞬だけ美しい顔を歪めたが、プロの意地なのか素早く軍手を装着した。

「……わかりました。ご指名いただいた以上、全力でご期待に応えます」

そこからのレンは凄まじかった。

「この本棚、僕が持ち上げます。きみは怪我をしないよう下がっていて」

「よし、この段ボールは僕が運ぶ! きみのために……!」

無駄に甘いイケメンボイスと眩しい笑顔を振りまきながら、超人的なスピードで家具を搬出していく。胸キュン台詞と重労働のギャップが激しすぎて、わたしの情緒はおかしくなりそうだった。

開始から2時間55分。部屋は見事に空っぽになった。息一つ切らしていないレンが、爽やかに額の汗を拭う仕草をする。

「ふう……素晴らしいチームワークでしたね。きみと最高の思い出ができました」

「ありがとうレン……本当に助かったわ。そろそろ時間ね」

わたしが封筒を渡すと、彼は満足そうに微笑み、最後に甘い声で囁いた。

「またいつでも呼んでくださいね。……ちなみに次回の作業内容は?」

「次回?」

「はい。実は僕、実家が工務店なんです。来週ならインパクトドライバー持ってきますよ」

彼はプロのレンタル彼氏というより、ただの重機好きのドMだったらしい。


     【了


最後までお読みいただきありがとうございました!

今作は「1分133円というリアルな数字への焦り」と「重労働×イケメンボイスのギャップ」を楽しんでいただくために書きました。オチのインパクトドライバーのくだりは、レンのプロ意識とプライベートの境界線が崩れる瞬間を描きたくて足した要素です。

切実な日常の悩み(金欠・引越し)に、少しだけ非日常(レンタル彼氏)を混ぜ込むことで、クスッと笑えるテンポ感を意識しました。またどこかで、レンがDIY工具を構えて再登場するかもしれません(笑)。

次回作もお楽しみに!


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