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花束が供えられた交差点

作者: ひとは
掲載日:2026/08/16

 これは僕が実際に体験した話を元に多少脚色をして書いている話です。

 もしどこか分かる方がいるかもしれませんが、思い出しながら書いているので細部が違うこともあるかと思います。ご了承ください。


 ◻︎


 これは20年前くらいに体験した話です。

 僕はある大学生や若い学生を中心にしたゲームサークルに入っていました。

 現在はeスポーツのようなゲームを競技としたものが認知されていたり、カードゲームショップやボードゲームカフェも一般にも広く認知されていますが、当時はそうではありませんでした。

 日本はオンラインゲームも発達しているわけではなく、アナログゲームを遊ぶにも同好の者たちが集まって遊ぶ場所が今ほど多くない時代で誰かの家に集まって遊ぶのかゲームセンターに行くのが主流だったのかと覚えています。


 ある夏のことでした。

 サークルのメンバーでゲーム合宿をすることになりました。合宿といっても競技性を高めるとかではなくて、サークルのリーダーの親戚が持っている別荘に集まって一日中ゲームで遊ぼうというような、いつの時代もある遊びのイベントのようなものです。


 正確な参加人数は今では覚えていませんが、恐らく七人か八人だったはずです。

 車二台に分かれて目的地である別荘に向かうことになりました。

 僕は車に酔いやすいのとその日体調が少し悪かったのもあって、リーダーの運転する車の助手席に座らせてもらいました。

 普段は地元のリーダーの家に集まることが多かったです。合宿へは普段ようにリーダーの家に集まってから出発することになりました。そこから行くのが一番近くて早かったためです。

 今、改めてうろ覚えの目的地をマップアプリで検索すると一時間半もかからずに到着できるようですが、当時は開通していなかった高速道路やバイパスができているから時間が短縮されているようです。当時は二時間くらいかかった記憶があります。


 半分くらい越えて目的の別荘がある市に入った頃のことでしょうか。

 助手席に座っていた僕は初めて行くところが珍しくて子供のようにずっと外を見ていました。

 今もある大きな道路で赤信号で停止した時のことです。交差点の角に花束が供えられているのが目に入りました。よく交通死亡事故が起きた時に亡くなった方を追悼するために供えられている一般的な花束です。花束に変わったところは特にありませんでした。耳鳴りがしたこと以外、その時は気になったことはありません。


 その後、目的地に向かって交差点だったり押しボタン信号がある横断歩道、押しボタン信号もない横断歩道、とにかくありとあらゆる車が停止しないといけない場所に花束が供えられていました。

 二つくらいなら交通事故が多いところなのかと思うくらいですが、さすがに三つ以上になると異変を感じます。

 そして目的地に近づくにつれて耳鳴りも大きくなってきます。

 そもそも外に目をやると花束が目に付くなら目を閉じていればいいのですが、その時は何故か目を閉じることができませんでした。


 全く話すこともなく、元々の体調の悪さもあって僕の顔は白くなっていたようです。


「大丈夫か? もうすぐ着くから。酔って吐くならビニール袋の中にしろよ」

 僕を見たリーダーは車酔いをしてるかと思って心配の声をかけてくれました。車酔いはしていなかったのですが気分が悪くなっていたのは確かです。


 いよいよ目的地まであと少しのところでまた赤信号に捕まり車は停止しました。


「今日はやけに赤信号にひっかかるな……」

 運転していたリーダーは独り言のようにつぶやきます。


 その時、私の目にはまた花束が目に入ってました。


 そして、

 ドン、ガシャーン。

 車と車がぶつかったような大きな音が聞こえてきました。


「うっ……」

 僕は悲鳴ではなく嗚咽をもらしました。

 僕は昔から恐い場面に遭遇しても悲鳴を上げられないのです。というか悲鳴あげるのは案外難しいよな、と今の場面に相応しくないいつも考えることをぼんやり考えていたことは覚えてます。


「本当に大丈夫か? あと少しだから頑張れよ」

 リーダーには音が聞こえていなかったようで、また心配の声をかけてくれました。後部座席にいるメンバーも音は聞こえていなかったようで談笑が続いています。

 僕は途中から気が気でなくて車内の会話にはほとんど入っていけてなかったので、この時も後ろで何を話していたか全く分かっていませんでした。


「ここで大きな事故があったんだな」

 リーダーは僕の方を見た時に外の景色が見えたようです。

「ほら、警察による目撃者を求める看板が立ててある。あ、それに花束も供えられてるな。死亡事故だったのか」

 リーダーにも花束は見えていたようで、それには少し安心しました。


 その後は特に何事もなく別荘に到着しました。

 別荘に着いてからも不思議な出来事はなくみんなで楽しく遊びました。

 いや、行きの出来事が衝撃的で楽しかったかどうかは覚えてません。

 強いて言えば朝早く腹痛で目が覚めてしまったことは変わったことだったかもしれません。しかし、夏だったこともあり太陽が昇りはじめていたので外は明るくトイレに行くのも全く怖くありませんでした。

 二日目も遊びきって帰る時間になった時は少し恐怖がまたやってきましたが、特に問題なくリーダーの家まで帰りました。


 そしてリーダーの家からの帰り道、僕は交通事故に遭いました。


 ◻︎


 スクーターで自宅へ向かっていたのですが信号のない交差点から出てきた車に衝突されてしまいました。

 幸いにもスピードが出ていなかったこともありスクーターはダメになりましたが怪我はありませんでした。

 相手の一時停止無視なのもあって過失は全て相手側になったのも幸いでした。


 この事故に花束を見かけた不思議な体験が関係あるかは分かりません。

 そのことを気にして僕の注意力が散漫していた可能性もあります。


 あとから聞いた話ですが、一つ大きな交通事故があった時に近くの別の交差点にイタズラで花束を供えるような人間もいるそうです。

 ただ単に怖がらせるためにやるのか、日常との境界を曖昧にして心霊現象や心霊スポットを意図的に作り出そうとしているかは分かりません。


 いずれにしても、そういうことはやめて欲しいものです。

 そういうイタズラはいずれ自分に呪いとして跳ね返ってきますよ。

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