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治安維持課の聴取

偽札紳士を引き渡した後、それでははい解散通常業務に戻りましょう、とはならず、メリッサ、団長、僕はそれぞれ商業都市ギルド別棟の治安維持課の個室に呼ばれ、起きた事を詳細に説明させられた。


犯罪を取り締まる庁舎なだけあって、治安維持課棟は床も壁も灰色の御影石をふんだんに使った堅牢な造りのオフィスだ。明かり取りのガラスブロックから燦々と陽光が差し込む、明るい雰囲気のギルド窓口と全然違う。窓も小さく、威圧的な重々しい空気が立ち込めているように感じられる。


僕が臆する理由はないのに、雰囲気に呑まれて緊張でガチガチになっていた。

「見たこと聞いたことをそのまま話せばいいんだよ、君を疑ってるわけじゃないからね」

通常のギルド職員とデザインの違う、濃紺に白銀のモールの付いた制服を着た、ボサボサ七三分けの治安維持課のおじさんは優しい声音でそう言ってくれた。

そう言われてもどこから話せばいいものなのか。僕はこの手の情況説明が本当に下手で心底苦手なのだ。

生まれて初めて聴取という状況に面してよっぽど困り果てた顔をしてたように見えたのか、

「じゃあ、王都から戻って来た辺りから聞いていこうか」

と促してくれた。

気を遣わせてしまったと若干申し訳ない気持ちが湧いた反面、筋立てて説明しなくて済むことで気持ちも楽になった。

「こちらの質問に答えるだけでいいからね。今朝、君たちはどこに居たのかな」

「王都から戻って来たばかりです、天気はすごい濃霧でした」

なるほど、確かに早朝ひどい霧だったね、と相づちを打ち、おじさんは確認するようにメモを取る。

「着いたらすぐ解散しなかったのはどうしてかな?」

「お腹が空いていたから、朝飯を摂ろうという話になって、それで市場食堂に」

「ふむ…店は誰が決めたのかな」

「メリッサ…、一緒に同行したギルド職員の子が海鮮サンドが食べたいと」

おじさんのメモを取る手が止まった。うん?と変なうめきをあげた。

「海鮮サンド?」

「ごめんなさい。ああ、えっと、カーなんとかっていう、ちゃんとした名称がある、あの女将さんの店舗でしか扱ってない特別なサンドイッチで、メリッサはそれが食べたいと」

支離滅裂な補足なのに、おじさんはそれで察したのか、ああ、アレか、と返して寄越した。

今の説明で理解できた?

「女将さん特製カルパッチョサンドの事だね」

通じてる。奇跡がおきたとしか思えない。

びっくりした僕が思い切り首を縦に振ると、おじさんも納得したように頷いた。

「維持課の女子にも人気があるようでね、ギルド職員食堂でも取り扱ってほしい、とよくこぼしているよ」

そんなに人気なのか、海鮮サンド。変なところで感心してしまった。

「それで、時間も遅くなってたので、急いで店に駆け込んだんです。そしたら女将さんが食い紳士を羽交い締めにしてて」

それからの顛末を説明した後、調書をまとめるおじさんに、

「何か進展があったら、また話を聞かせてもらう事になるかも知れないから、許可が出るまで治安維持課から出ないでね」

そう念押しされて、僕は聴取室を退出した。



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