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【書籍化決定・タイトル改定】無能令嬢と追放しても構いませんが、後悔しても知りませんよ? ~義家族の皆様、どうぞ最高の終焉を~  作者: お伝


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プロローグ

短編 「死んだことにして逃げませんか?私ちょっとした魔法が使えるんです」

の大幅改変・長編化です。

短編版とは大きく内容が変わっています。

※短編を読んでミハエルを評価して下さっていた方、今回は登場していません<m(__)m>

彼は、また違う作品で活躍してもらおうと思っています。

ベッドに横たわるお母様が、ラベンダー色の石を嵌め込んだペンダントを首に掛けてくれた。

光にかざすと金色に輝く不思議な石だ。

お母様の瞳と同じだと嬉しくて、くるくる回ってお母様に微笑みかけた。

その様子を見ていたお母様は微笑んで、私の頭を撫でながら静かな声で言った。


「このペンダントはね、お母様のお母様から頂いた物なの。これからは貴方のお守りだから、首から外さず服の下に隠して大切にしてね。もしも困った事があったら、このペンダントを両手でぎゅっと握ってね。ペンダントが必ず守ってくれるわ。そしてジラード王国へ行きなさい。このペンダントを見せれば、必ず助けが来るわ。私の可愛いミリィ、お父様と仲良く幸せにね。愛しているわ」


ガタンと揺れた馬車の振動でハッと目を開き、眠ってしまっていたことに気が付いた。

周りを見回して状況を思い出した。

領地へ着いたと思った途端、領民から依頼された護衛だと名乗って一緒に領地へ入った二人に縛られてしまったのだ。

縛られて馬車の座席に転がされているにもかかわらず、慌てる事もなく状況を整理することが出来るのは、私を縛った護衛たちの言葉があったから。縄と布と大量のクッションを持って申し訳なさそうに馬車に入ってきて、縛っている間もずっと『痛くないですか?』とか『どこか苦しい所はありませんか?』と小声で聞いてくれた。だから彼らの言葉を信じる事にした。


口ぶりから、縛るように指示した馬車の外に居た男たちから逃がしてくれるつもりらしいが、どこへ向かっているかは分からない。

さっき見たお母様の夢を思い出し、令嬢らしくは無いがクッションに顔を押し付けて泣いてしまった。縛られているので仕方ない。


馬車の音で泣き声は聞こえないだろうと思っていたのだが、馬車が止まっても泣き止むことが出来ず、入って来た護衛の二人があたふたと縛っている縄を解き、どこが苦しいですかと優しく聞かれ、水を飲ませてくれたり、顔を拭く柔らかい布を渡してくれた。

苦しくて泣いているわけではないのだけれど、こうやっていつも心配して優しくしてくれていた頼りになる人を思い出して涙が止まらない。


そう言えば、こんなに気遣って優しくして貰えたのはどのくらいぶりだろう。

そう思うと、今度はその優しさが嬉しくて涙が溢れて来て、余計に二人を慌てさせてしまった。

夢の中で見たお母様の言葉を思い出し、服の上からペンダントをぎゅっと握りしめた。すると、足元でぴしりと小さな音がした瞬間、ミリアムの体の周りを小さな金の粒がきらきらと取り囲んだ。


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