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始章

 

〔世界は無縫の産衣のようである。

 燃え盛る大地と凍える川、震える台地の頂に不動の城。その地下、熔岩に侵されそうな牢獄の奥深く、無情なまでに無音がひしめく封印の空間に少女は正座している。〕

 

 

 幾星霜を超えて訪れたように、朝日を宿して煌めく結晶を写真に収める。無限に撮れるが、そうは思わないのがコツだ。有限の時を惜しむと切実になり誠実にもなる。

 ……うん。今日もきらきらのいい表情。

 村を囲んだ森に降る星、早朝の霜だ。その観察を纏めた竹神(たけみ)納雪(なゆき)は家に戻ると観察発表のため今日も父を訪ねる。

 竹神家の二人の母は、家事に炊事にといつも忙しそうである。二人の母とは、生みの母と、最近になって現れた母である。生みの母に説明は要らないだろう、納雪を生んだ母だ。二人目の母を育ての母とか義理の母とか称しないのは納雪がじつの母のように接している。父を同じくする竹神家の子は一〇人で、末妹が二人目の母から生まれた子であるから二人目の母を母と称しても名実ともに間違いではない、と、納雪は思っている。

「おとぉさん……あれ」

 自他ともに認める怠け者の父が希しく寝室にいない。ここに来るまでに通った居間にいることもあるが、

 ……いない、かな。

 神出鬼没の父は少し待てば現れてくれるだろう。庭で洗濯物を干す二人の母を眺めた納雪は、スケッチブックを膝に置いて何気なく寝室の景色を見る。ここは父と二人の母の寝室で置かれたものの多くは三者の私物。服を作るのが父の趣味でハンガーラックに大量の服が掛けられているのは馴染の景色である。

 ……あれは。

 複数のハンガーラック、その奥がちらと光った。霜雪を探すときもその光を見ることがあって納雪は目を引かれる。母曰く、精霊が放った光。見えないひとも多いというが、

 ……家の中だと希しい。何かいるのかな。

 ハンガーラックの奥を覗き込んだ納雪は初めて気づいた。モカ村の前に住んでいた安アパート、サンプルテの一室にも同じ本棚があった。

 ……きっとおかぁさんのだ。

 家庭教師をしていた母なら本をたくさん持っていても不思議ではなく、移住後も部屋に置いて読み返していることが想像できた。古代からやってきたも同然の二人目の母が現代を知るため借りていることもあるだろうか。ちなみに父が本を読んでいたことはなく、テーブルや布団や座布団にくっついてもっぱらテレビ番組を観ているイメージで、テレビがないモカ村でイメージはより消極性を濃くしたようだった。

 ……借りられそうな本はあるかな。

 ここモカ村には本屋もない。村外の土地勘がないので本を買うなら生まれ故郷の惑星アースはダゼダダ大陸に行くほうが早い。

 ……磋欄(さらん)さんと霊欄(れいらん)さんに読み聞かせてあげられるのは、そう、絵本だ。

 長女音羅(おとら)が子時代によく読み、納雪も母に読み聞かせてもらった絵本。概要なら伝えられるが、挿絵が綺麗で愉しいので妹にも絵本そのものに触れてほしい。

「う〜んと……」

 掛かった服が勝手に移動させられたり汚されたりしたら父が嫌な気持になるだろう。ハンガーラックの前に座って、そこから本棚の下段を覗き込む。

「……あ、懐かしい、『おひめさまの おほしさま』だ」

 お姫様とみんなの唄う優しい世界が全てを叶えてくれる。読み聞かせるには打ってつけの夢溢れる物語だ。

「おかぁさん、やっぱり持ってきていたんだ」

 同段の棚には見憶えのあるタイトルが並んでいる。

 『こころのまほう』

 『おひめさまの おほしさま』

 『かけるはつき』

 『きょうあいにいきます』

 『はなにならうことのは』

 『つちのりゅうせい』

 上段に目を移すと、裾の短い服から三つのタイトルが覗いた。

 『冥姫の冒険』

 『十の色は』

 『怦擲姫』

 ……う〜ん、姫の冒険。とおのいろは。へい、て、そん、姫……難しい。

 どう読めばいいのか判らないタイトルは、装丁が明らかに異なり絵本より薄い。

 次ぐ四つ目のタイトルは服の陰でほとんど見えない。

「クー(なな)……ううん、『──ワーフ』かな……」

 納雪が知っている絵本とはやはり装丁が違う。タイトルの一部にも見憶えがない。

「覗き見ゲンキンじゃぞ」

「わあっ!」

 服の陰から突然毛玉が現れた。「糸主さん。驚きました……」

「ほっ、ほっ、ほっ、納雪は今日も可愛らしいのう」

 糸主もぱちくりとした二つのお目目が可愛らしい毛玉である。床をもふもふと這う姿も見慣れると可愛いもので。

「お掃除中でしたか」

「うむ。服も置きっ放しでは埃を被ってしまうからのう、毛玉取りをかねて整頓もしておったのじゃ」

「おとぉさん達のために、ありがとうございます」

「どういたしましてじゃよ」

 精霊の光は意識的に放たれているものばかりではなく、納雪の目には形がはっきり見える糸主でも他者からは光に見えることがある。先程の光はまさに一精霊である糸主がそこにいたことで見えたものだろう。

「お邪魔してごめんなさい」

「よい、よい、ワシも驚かせてすまなんだ。パイプの上に戻してほしいんじゃがよいかのう」

「わたしを注意するために落ちちゃったんですね」

「脚を滑らせた老いぼれを助けてくれるかの」

「勿論。糸主さんの脚って」

「ほれ、この辺りじゃこの辺り」

 ふわふわの毛の一部が微風に靡くように動いている。全て脚なのか。謎多き毛玉である。

「手の届かないところのお掃除、いつもありがとうございます」

 糸主をハンガーラックに戻すと、納雪は少し気になった。「覗き見ゲンキン、って、どういうことですか。読んではいけませんでしたか、ここにある本」

「一部はララナのもんじゃから構わんじゃろうが、それ以外はオトの大事なもんじゃ。勝手にさわるなとワシらもいわれておる」

「糸主さん達も……」

 父は所有権をあまり主張しないひとである。大好きな蜜柑は家族に配るほどで、娘である納雪達にあげた服に関しても自由にしていい、と。それでいてひとの私物には触れないひとなので、大事なものには触れてほしくないとも思っているのかも知れない。

「おとぉさんに取って、すごく大事なものなんですね。……」

「気になるようじゃな」

「はい。おとぉさん、あまり自分のこと話さないから、何を考えているか知りたくて……」

 家族のためになることを考えてくれているとは納雪は思っている。姉もそう思っているから先の家族会議で二人目の母を受け入れられた。

 父はときどき背中を向けるようなことをする。普段の姿勢と比べ物にならないほど刺刺しく寛容さの欠片もなくなる。そんなとき家族全体が反発してしまうのは父の態度が原因かといえばそうではない。家族の意識が後ろ向きのときこそ父が態度を荒立てる。父の機微と望みを解ってあげられたなら衝突するようなことはなく家族間でぎすぎすするようなこともなくなるはず。求めてもいない家族間の反目を父が仕掛けるようなこともなくなるはずだ。

 床に座った納雪は本棚を見つめた。そこにある本が父を知るために必要と思えて。

「気になるなら、」

「んぅっ!」

「読んでみる」

「お、とぉさん……」

 隣に父。

 腰を抜かしそうになった納雪をそっと引き起こすと、父がハンガーラックを動かし、本棚から一冊を手に取る。それは、

「ノート……」

「よくある罫線ノートやな」

「おとぉさんが使っているんですか」

「ん」

 市販のノートだから絵本と装丁が違うのは当り前。よく観ると薄いのと厚いのがあって、父が持っているのは前者。

「あ、それ──」

「さっき見つめとったやろ」

「どうして判ったんですか」

「さあね」

「教えてください」

「なんとなくってことやよ。で、読む」

「……」

 出版物であれば独自に買って読める。父が使っている、つまり、父が書いたノートはそこにしかない。父を知るにはこの上ないものだが、誰にも触れてほしくないほど大事なものを読ませてくれ、と、催促していいものだろうか。

「おとぉさん、傷つきませんか、わたし達がそれを読んでも」

「達とは」

「磋欄さんと霊欄さんに読み聞かせられる絵本を探していたんです、最初は」

「絵本と掛け離れたもんでいいならこれでいいかもね。絵本がいいなら取ったるよ」

「えっと……」

 どうしよう。いつになく積極的な父を感ずる。断るほうがおかしいか。ノートを読ませてもらうか、絵本を借りるか、大きな分れ道だ。

 ……おとぉさんが、もし、自分のことを話してくれようとしているなら……。

 断るのは損。だが、父を知りたいと思い、父を傷つけまいともしているのに、断らなければ逆のことをしてしまうおそれも。

 ……どうしたら……。

「選択に迷ったら、自分の学びを活かそうね」

「おとぉさん……、うん。(学び。わたしの学び。……わたしは、どうしたいか)」

 父を知りたい。……そう。それなら、どうすればいい。

 そのために行動する。そのための選択をする。ならば、父の問への(こたえ)は。

「……磋欄さんと霊欄さん、呼んできてもいいですか」

「いいよ。ただし、あの二人を起こせたらね」

「っ、頑張りますっ」

 磋欄と霊欄は眠りが深い子で、普通に起こしても起きないらしい。

「あ、おとぉさん、これ、観ててください」

 と、父にスケッチブックを渡して納雪は二階南西にある妹の部屋へ急いだ。

 シンプルな布団と可愛らしいベッド、それぞれに眠る磋欄と霊欄を認めると、初めてとなる妹の呼起し(よびおこ  )に挑む。

「おはようございます、朝ですよ」

「『……』」

「おはようございますっ、朝ですよっ」

「『……』」

「おはようございまぁすっ、あ〜さ〜で〜す〜よ〜〜っけほっけほ……」

 生来大きな声が出ないので、頑張りすぎると喉が痛い。それにしても、

「お、起きないです……、手強いですっ」

 囁く程度に呼びかけられれば起きられる自分と比べて妹の寝入り方が尋常ではなかった。頑張ったところで小さな声なので起こすのはむちゃだったと納雪は実感した。

 ……こういうときは、道具を使おう。

 眠る妹を起こすには、どうするか。

 ……音を鳴らすなら、え〜っと……。

 ベッドシーツやカバーとお揃いのフリルやレースがあしらわれたスリッパが、霊欄のベッド脇にある。

「霊欄さん、ちょっと借りますね」

 スリッパを両手につけて、軽く打ち合わせる。

 パンパンッ。

「いい音。これなら起きられます」

 今度は加減せずに叩く。

 パンパンパンっパンパンポンっ!

「あっ、飛んじゃっ……!」

 勢い余ってスリッパが手から外れて、「磋欄さんっ」

 飛んでゆくスリッパをダイビングキャッチしたはいいが、

 ……あ。

 納雪自身が磋欄の上に落ちた。

「むぎゅうぅぅっ」

「うわぁっ、ご、ごごめんなさいっ」

 すぐさま横に転がって退いた納雪は、恐る恐る磋欄の顔を覗き込む。

「ぅ……くぅ……くぅ……」

「(……よかった、起こしていないみたいだ。って、)手強いです……!」

 スリッパの物音に気づかない上、不意のダイブを無視できるとは。

 ……これじゃあ、いつまで経っても起こせない。

 父のノートを読む条件は二人の妹を起こすこと。磋欄だけでも大変そうなのに霊欄まで起こさなければならないという超難題。

 ……なんとか作戦を考えないと……!

 昨日、二人を起こしたのは父だという。条件を出した張本人であるから、起こし方を教えてくれるわけがない。

 ……こういうときは音羅おねぇさんにお願いしないと。

 朝食を摂ったら仕事に出るであろう姉の力添えを求めて、納雪は隣室へ向かった。

 

 

 悪戦苦闘している娘を聞きながら、オトはノートの頁を捲った。これを知る相手が納雪以下の娘なら、求めに()う内容でなくても学びにはなるだろう。

 ──トリビアルドワーフ──。

 

 

〔数百キロメートル離れた土地も不動の城を望める。聳え立つ威圧感は耳に挟んだ神界宮殿に優って厳か。より正しく表すと、おどろおどろしげ、で、あろうか。両親の住むそこを二メートルを超える大男は睨んで足下の大岩を促す。

「早く動け。やる気が足りねェなァ」

「やる気はありますがね、アニキ、オイラは見ての通りの岩なんで動きは鈍いんでさぁ。担いで歩いてもらえっと助かりまさあ」

「それが兄貴に頼む態度か、おォい。ま、オレサマはいくらでも待つが」

「さすがアニキは大量でさあ、惚れますぜ」

「笑う暇があるなら動け。これは警邏だぜェ」

「解ってまさあ。任せてくだせえ」

 一向に進まない大岩に何夜()っていることか。不動の城もとい我が家が見えているのは距離が離れていないからではないかと大男は思わないでもない。それを問題視しないのは、言うほど警邏業務に気を注いでいなかった。

「ん、バルァゴアサマ」

 大男が先日配下にした大岩〈マスブラック〉が名を呼ぶのは希しい。

「降りてくだせえ、なんか来やす」

「おォ、おォ、警邏業務にちょっかい出す輩か、面白ェじゃねェか。オレサマが相手してやってもいいぜェ」

「急にやる気にならんで降りてくだせえ。どうせ低能でさあ」

「そうか、じゃあ任せるぜェ」

 大男改めバルァゴアやマスブラックは、人間ではない。多くの種族から嫌厭され、討伐対象とされている魔物の一種であり、始祖に近い高位の存在である。始祖に近ければ近いほど有能とは一概に言えないだろうが、言葉をある程度解し、発することができるという点では無能でもない。一方、魔物の多くは言葉を解しても発することができず、低能といわれる。言葉という力を与えられたことが存在価値を高めるのは、互いの情報を共有し蓄積することができることにある。多くの魔物には情報の価値が理解できず、言葉の価値も解らない。

 ……言葉を持たずとも無能でもねェかも知れねェが。

 能力には個体差がある。魔物の世界においては、言葉を発せずとも、言葉を解せずとも、屈服させた相手を食うための暴力こそが最終的かつ決定的な力であるというのが標準的通念(コモン・センス)である。言葉を重視するのはバルァゴアの主張であって、それが全てを制するとまでは考えていない。暴力が言葉を持つ者を屈服させることを、暴力を振るうことに躊躇いのないバルァゴアこそがよく理解している。その上で、言葉の持つ力も大事であると考えている。対立存在をより効率よく屈服させるには、情報統制と支配が必要であり、そのためには言葉という蓄積能力が不可欠。すなわち、言葉は支配のための道具の一つであるという考え方だ。

 探知した魔物の気配が近づき、バルァゴアを降ろしたマスブラックが迎え討つ。跳び込んできた影をその巨体で受け止めただけだが、影は薄黄色の光の粒子を放って消え去った。

「こんなもんか。やっぱ雑魚でさあ、アニキ」

「お愉しみにもならねェか。けど、まだいるぜェ」

「お」

 影が次次に現れてはマスブラックの巨体にぶつかり続ける。大きさに相応しく重量もあるマスブラックだが次第に接地面が少なくなって、

「あ、アニキい、後ろにいられちゃ潰れやすぜえ!」

「油断してんじゃねェよ、雑魚は雑魚でもそれなりの戦術があるもんだぜェ」

 爆弾を持っていたならさらなる効力を発揮しよう、小さな影が無限のような数を利用して波状攻撃を仕掛けている。一つ一つはマスブラックを微震させるほどの力もないが、のべつ幕なしに突撃すれば岩盤を削る水滴のように穿つ力にもなるだろう。

「残念だったな、貴様にはオレサマがいるァ」

「それ、オイラをとっちめる流れなセリフじゃありやせんか」

「助けられることが貴様の矜持かよォ」

「キョウジってうまいんですかい」

「自分らしさを支えてる部分だアホォ」

「なるほど、それなら確かに『残念』でさあ」

 邪悪に身を窶して称賛されるべし。魔物たる者、助けを借りた生存は存在価値を下げる。

 マスブラックの一部が無数の影に突き破られるようにして砕けた。が、倒されたのではなく数を増やすための対応策である。

「『無数には複数で相手だ』」

 無数に対するには少なすぎる三体のマスブラックであるが、等分された体は一塊のときと比べて身軽である。無数回の突撃の威力を受け流し、身を回転させて二本の竜巻を発生させ、突撃し続けてくる影を吞み込んだ。降り注いだ影は、大地に叩きつけられて消えてゆく。

「数を力にした連中は力が弱い。体も軽く、重力と落下に耐性もあるがァ」

 三体のマスブラックのうち一体はさらに分裂して、尖った砂利のようにして大地を覆っている。小柄で軽い影が丈夫な皮革で覆われていても、影の落下を感じ取ったマスブラックがその身をより鋭くして致命的なダメージを与えて生存を許さない。

 中には逃げた者もいるだろう、星がわずか傾いたときには突撃する影がなくなり、マスブラックが元通りの巨体に戻った。

「今日の警邏もつまんねェなァ」

「アニキ、無事ですかい」

「ちったァ番を回してくれよ、暇だぜェ」

「そりゃすんません。アニキが出るまでもなかったってことですぜ」

 それはそうなのだが暴れ足りない。マスブラックに跳び載って、バルァゴアは指を鳴らす。

「一発ぶん殴らせろ」

「今度はどんだけ飛ばすんで。ばらばらになっちゃ載せてやれませんぜえ」

「そんときは自分で歩く」

「後生ですから殴らんでくだせえ。オイラは、ぐ……」

「どうしたァ」

「あ、いや……なんか、腹ん中、むずむずしやして……」

「なんだァ……」

 無数の突撃で打創か。岩に打創、は、考えづらい。バルァゴアは腕組のまま足下のマスブラックを見下ろしていた。外見通り大岩なマスブラックは微動することも稀なのであるが、そんな彼が体調不良をかすかな震えで示している。

死骸類型(コープス)でも食ったか」

「食っても大して影響ねえですけど、いや、そもそもずっと一緒にいたんですから食ってねえことも察してましょうや」

「まあな、けどよォ」

「うぐ……」

「どう見ても腹痛だろ、それェ」

「いや、いや、岩のオイラに腹なんて器官がねえと思うんですけど……ぬっ!」

「っと」

 マスブラックが急にばらばらに分裂した。数夜を彼の上で暮らしていてこんなことは初めてである。

 ……へェ、雑魚は雑魚なりに考えてやがる。

 分裂したマスブラックの至るところに、彼の体とは別の砂礫が詰まっている。

「異物混入だぜェ」

「ぐう。道理で密着感が悪いと思いやしたあ。こりゃ時間が要りやす……」

 精密機械でもないのにメンテナンスが必要らしい。

「どんくらい必要だァ」

「今夜込みで、一夜か二夜もしくは三夜でさあ」

「城が建ちそうだぜェ」

「面目ねえです」

「時間なんざいくらでもあるァ」

 無数の小型マスブラックが我が身からせっせと砂礫を取り除くあいだも、バルァゴアは不動の城を睨んだ。

 ……けっ、じっと見てきやがって。

 誰に視られている、とは、言えないが、その気分にはなる。どこにいても城は不動。バルァゴアはマスブラックの上から城を睨んで後ろ向きに進んでいた。襲撃を恐れたのではなく、背中を見つめられているのだとしたら気分がよくなかった。

 城のような不動の二夜を過ごして、メンテナンスの終りが近づく。

「アニキ、もうちっと待ってくだせえ」

「朝には出発できそうか」

「へい。とりあえずくっつくくらいには戻れますんで」

「デカイ貴様も悪くねェが、そのナリの貴様も悪くねェぜ。ゆっくり戻れェ」

「さすがアニキ、惚れ直しやす」

「早くしやがれェ」

「へい」

 仲間、と、いうものに重きを置いているのでもない。だが、その手で触れれば消える者ばかりであったバルァゴアに取って、マスブラックのような魔物とは肩を並べることができる、とは、言えた。

 ……もうじき日の出か。

 植物型(プレント)有翼型(ウィング)などの型を問わず一緒くたにするなら、この世に蔓延る魔物は無数だ。バルァゴアのような人型(ヒュマノイド)も、マスブラックのような岩石型(ロック)も、先の影のような四足型(ビースト)も、皆、魔物という一種族であり、同じ星明りと陽光を浴びて過ごしている。弱肉強食の共食いが常の世界であっても、一夜の終りを告げる日の出を望めばほんのひとときは非日常の息を合わせられるだろう。

 けれども、やはりこの世は共食いの世界なのである。

「『アニキ……!』」

 ……来やがった。

 メンテナンス未了で一塊に戻ったマスブラック、その巨体に優る巨影が迫る。

「あいつが近隣の情報にあった奴か」

「なるほど、あれがお目当の」

「たぶんな」

 巨人型(ジャイアント)と呼ぶに相応しい影である。唐突に聳え立ったように見えたのは、今まで座っていたか、寝ていたか、稜線がその巨影であったのだ。

「アニキ、メンテ終わってねえんでオイラちと分裂しそうでさあ」

「それはビビりか。すっこんでろ、邪魔だぜェ」

「けどアニキ、いくらなんでもあれはデカすぎじゃねえですかい、オイラの何倍でえ」

「測ったら解るのかァ」

「全然でさあ」

 そうだろうとも。マスブラック比一〇倍超、バルァゴア比で一〇〇倍超といったところである。確かに大きい。どこから攻めたらいいものか。

 ……近隣のザコの情報によればそこらを荒らし回ってるって話だったがァ。

 わざと荒らさせていい気分になったところを衝く、と、いうのが最も簡単な討伐作戦だろうがどこを攻撃すれば致命傷になるのか見極めてからでなければ話にならない。

 巨影が腕を振りかぶる。時速三六〇〇キロメートルと思いのほか速い。発火した空気を纏いながら放電し、さらには横倒しの竜巻を起こして迫った拳である。振り下ろされた地点から全てを融解させるような爆発が起き、融解しなかった大地が波打つように隆起して──、

「面白ェなァ」

「どおぉおぁおぉっ!」

 バルァゴアとマスブラックは空高く打ち上げられていた。気づけば、

「むゥ」

「『げむうううぅっ!』」

 もう片方の腕がバルァゴアとマスブラックを打ち据え、流れ星のように大地に突き落としていた。そうしてまたも爆発が起きれば、メンテナンス不足のマスブラックは分裂するほかなかった。

「『す、砂が詰まりやしたあ!』」

「便利なくせに不便な体してるぜェ」

「『ありがたい言葉、すいやせん!』」

「問題ないぜェ」

 追加のメンテナンスが必要となったマスブラックでは荷が重そうだ。

 クレータを作った我が身を立たせ、バルァゴアは筋肉を引き締めた。

「やってやるかァ」

 鞭のようにしなやかな腕が再び振り上げられている。距離は開いているが、バルァゴアとマスブラック達を正確に狙っている。

 ……こっちを恐れてはいないようだな。

 愉しみ甲斐がある。未知の暴力を知ると、対抗する暴力が培われる。

 ……屈服させてやるァ。

 クレータの中心部はバルァゴアが跳んだ反作用で巨影の起こした大地の波を超える波を起こした。振るわれた腕を撥ね退けたバルァゴアは浮き立った大地の波を足蹴にして巨影の前へ跳躍し、掌底を見舞った。

 ……デカブツは隙がデカイが可動域じゃ敵わないかァ。

 宙に浮くほどの威力を受けながらカミツキガメのように大口を開けた巨影。瞬時に動いた顎がバルァゴアの左腕を引きちぎり、後退した。

 ……意外にやるじゃねェかァ。

 恐怖はない。痛みもない。この程度なら再生可能で立て直せる。が、

 ……膝──。

 顔面が後退したのは巨影が仰け反っていた。加えて膝を持ち上げていた。膝で蹴ったバルァゴアを、大口で受け止めるつもりだろう。

「食われちゃ、やべェな」

 左腕が既に再生しているが空中で大きな動きは取れない。優れた再生能力を活かして永遠に胃液に浸って暮らす、と、いうのは避けたい。

 ……!

 蹴られてあわや口の中。バルァゴアは、巨影の唇にぶつかって事なきを得た。蹴りの狙いが外れたのではなく、巨影が口を閉じたからである。落下したバルァゴアを両手で受け止めもしたから、攻撃姿勢を一転させた不可思議な巨影をバルァゴアは見遣った。

 巨影の身から白い光の粒子が漂っている。

 ……消えるかァ。

 と、思ったが、巨影が消える気配はない。

 ……オレサマに触れられて生きてるのはマスブラックと同じとしても。

 おかしい。光の粒子を放って生きているのは、魔物としては不自然だ。

 ……どういうことだ。

 得体の知れない力が働いていることを不自然さから推することができる。未知の力に触れるとき、自らを高める機会が訪れる。

 ……期待できそうだぜ。

 巨影にではない。巨影をここに踏みとどまらせた、何かだ。

「……あれは、なんだ──」

 マスブラックが埋め尽くした一角を巨影の掌から見下ろすと、見憶えのない人型がいた。

「デカブツ、言葉が解るかァ」

「……うん」

 唸るようなうなづきが暴風のような鼻息となった。塀のような巨大な親指をそっと足蹴にしてバルァゴアは堪えた。天変地異のような空気摩擦による現象は治ってきているが、しばらくは()()そうである。

「便利で不便だな巨体ってのはァ。まあいい、貴様は今日からオレサマの配下だ」

「ボクを、取り立てるのか」

「貴様は何を恐れてる。そんなもん棄てちまえァ」

「……」

 巨影が躊躇っている理由はとうに理解している。

「こっちは警邏業務中だ、始祖に楯突く輩の征伐って名目のなァ」

「……ボクを、殺しに」

「オレサマに触れられて生きてる奴なんざ、あそこに転がりまくってるマスブラックと貴様だけだ、今のところだがなァ。その点で惜しい逸材だぜ、貴様はよォ」

「配下にして、従わせて……何をさせるの」

 バルァゴアは見憶えのない人型を指差す。

「あそこに降ろせ」

「……」

「オレサマにぶん殴られてあっけなく、って、よりはマシな人生を送れるだろうよ、次元最強のオレサマに逆らう奴なんざいねェ。配下にも下手に手出しできねェからなァ」

「最強は始祖でしょう」

「玉座でのらりくらりのジジババは蹴落とす。さっきのが攻撃だとでも思ったかァ」

「あれが、触れた程度だったっていうの」

「本気なら微小マスブラックの歩ける地面がなくなっちまうぜェ」

「それは、困るね」

 巨影がしばし黙る。

「いいぜ、ゆっくり考えてろ。そのあいだにオレサマは話したい奴がいるァ」

「あそこへ降ろせばいいんだね。それでもって配下になることを認めた、って、既成事実を作ったりする」

「小賢しいなァ」

「しないんだ」

「──オレサマは貴様がほしいぜェ、するかもな、既成事実化」

「そうしたら地中奥深くにうづめてあげるよ」

「判ってたぜ、貴様も本気じゃねェってなァ」

 腕の重さからして巨影の総重量は大地のように重く、彼が死力を尽くした一撃にこの大地が耐えられるとは限らない。バルァゴアはそれでも死ぬ気がしないがクレータを作ってなお地面に埋まる以上の目には遭うだろう。

「そうだ貴様ァ、名前は」

「……ナマエって」

「自分のラベルだ。オレサマにはバルァゴアと貼られてるァ」

「バルァゴア……。始祖を、ジジババっていうってことは、孫」

「あれは嘲りだァ」

「じゃあ……子ども」

「どうでもいいがなァ」

「アナタが王子とは……」

「ビビるなよォ。──貴様がビビる必要なんかねェ」

 反り返ったバルァゴアは、巨大な瞳を見上げる。「貴様は強ェ。貴様がビビらなくて済むくらいにはなァ」

「……バルァゴアさん、アナタを、あそこに降ろす条件がある」

「条件交渉は最初にするもんだぜェ」

「小石のように頭を吹っ飛ばしてもいいんだよ」

「降ろす前に鼻息で吹っ飛んじまいそうだぞォ」

 巨影がうまい具合に親指で支えてくれているが油断すると宙を舞いそうだ。

「ごめん……。で、聞いてくれるの」

「しようがねェな、なんだァ」

「ラベル、ボクに貼ってくれない」

「そんなことでいいのかァ、もっと吹っかけりゃいいのによ」

「配下になるなら必要なんじゃないの。ラベルがないとアナタの威光も働かないかも」

「へェ」

 言葉を発し、解するのみならず、名前というラベルの持つ影響力を理解する知能が巨影にはあるようだ。

「いいだろう、名前をやるァ」

 配下に求めた時点で決めていた名だ。「貴様はヒュージ。ヒュージウィップだ」

「大きい鞭、って、ことかな」

「貴様の攻撃はまさしくそれだっただろう。名は体を表すって奴だ」

「威力が働きやすいかも知れない。無駄に戦いたくないから抑止力があると助かるよ」

「そのナリで戦いが苦手だってのか。暴れ回ってたくせになァ」

「身を守っていただけなんだけどな……」

「そうか。まあいい、こっちも助かったぜ、名前については理解が早くてェ」

 時間があり余っているのでバルァゴアは気にしないがマスブラックへの説明は徒労だった。

「ヒュージ、きびきび働けェ」

「うん、戦闘でなければ。降ろすよ、落ちないように気をつけて」

「ああ」

 落ちても死なないが、巨影改めヒュージの初仕事を完遂させてバルァゴアは大地に立った。

 荒野たる一帯に希しい草花のような白い服。それを着た人型がマスブラックからせっせと砂を取り除いている。

 ……こいつにはさわれねェなァ。

 マスブラックのように分裂する特殊な体質もなさそうで、ヒュージのように頑丈な体ということもなさそうな、バルァゴアと比べても小さな、儚げな人型だ。

 ……オレサマが触れたら一瞬で消し飛ぶだろう。

 バルァゴアはマスブラックの手前で脚を止めて声を掛ける。「おい花女(はなおんな)、こっちを向けェ」

「よもや第一声で口説かれようとは」

「誰が口説いたァ、早くこっちを向け」

「暇があるなら手伝わぬか。此奴が困っておるのが見えぬのであるか」

 仮名〈花女〉は休まず砂を取り除いている。

 バルァゴアが手伝っては砂を取る前にマスブラックを細かく砕いてしまう。

「自分で取らせればいいだろう、自己責任だぜェ」

「言訳せずに動かぬか愚か者。求めねば望みを叶える身を得られぬのである」

「……、オレサマの手じゃ却ってメンテナンスを遅らせるァ」

「最初から素直にものをいえ愚か者。ひとの上に立つなら責任と覚悟を示すのである」

「……」

 バルァゴアが言えた立場ではないが、花女はいやに尊大である。両親とは異なり圧倒的な力を感じないというのに、

 ……鼻につく奴だァ。

 花っぽいからか。なるほど花粉症か、と、冗談はいい。「首ィ圧し折るぞ、こっち向けェ」

「煩いのである。口を閉じておれ小童」

「何」

「此奴は配下であろう。手伝わぬなら齧った爪を銜えてぼけっと突っ立っておれ愚か者」

「……触れて消える弱小(ザコ)の分際で」

「っふ、砂鉄を見つけた童子のように興味津津で張りついて、前へ回ることも思いつかぬほどご立派な頭を持っておれば、な」

「(このォ、いちいち鼻につく言い方を。)前へ回ったら貴様の作業も増えるぜェ」

 花女の前には無数のマスブラック。踏みつければ簡単に砕ける。するとまた砂がつく。メンテナンスはより長くなる。

「マスブラックとやら、ちょっと道を開けてやれ」

「『はっ、アニキの命令じゃねえのに聞くかってんだ』」

「生意気である。砂を取ってやらぬぞ」

「『へっ、誰が頼んだってだ。アニキ、口でふう〜って砂を吹き飛ばしてくだせえ』」

「誰に命令してやがる。自分のケツくらい自分で拭けェ」

「『岩のオイラにケツってあるんですかい』」

「(どうだろうな、)あるだろ、普通ゥ」

「『さすがアニキ!一つ賢くなりやした』」

「よかったなァ」

「『へい!』」

 無数のマスブラックが妙に元気になってメンテナンス作業が進む。

 不意に花女がバルァゴアを向いた。

「阿呆の沼に嵌まっておる」

「正面から教えてやれ」

「兄貴分の仕事であろう。我は暇ではないのである」

「貴様も素直に話しやがれェ」

「おぬしの内心を被せるでないわ愚か者」

 ……ふん。減らず口だがァ、……。

 花女の指摘は正しかった。バルァゴアのように回り諄いことを言っていない。思ったことを腹を隠すつもりがなく、言葉通りマスブラックのメンテナンスに戻って忙しげだ。

「一つ訊くぜェ」

「先に応えよう。『我だ』」

「何も聞いてねェだろうがよォ」

「『そこの巨影の暴走を止めたのは貴様か』であろう」

「読心魔法かァ」

「おぬしが我に興味津津な理由は暴走抑止の力が未知ゆえである。その身の暴力に落とし込むべく未知の本質を知りたいのである」

「話が早い。さっきの光──」

 ヒュージから漂った光の粒子は、死ぬ魔物が放つ光と同じようでいて違っていた。「あれはなんだ。ヒュージを殺さずに止められたのはなんでだ。教えやがれぇ」

「知りたいか。なれば、我の言の葉に従うのである」

 唐突な花女に従うものか。

 朝日が、昇ってきた。

「命令してんのはこっちだぜ。マスブラックゥ」

「『へい!』」

 無数のマスブラックが集合して、一体に戻る。「なんとか行けやす!」

「ヒュージ、貴様も行けるなァ」

「その子を、殺すの……」

「殺すな。捕まえて力の本質を吐かせる──。やれぇッ!」

 バルァゴアが触れれば一瞬で消えてしまう。ならば手脚たる配下にやらせるだけだ。

「大人しく捕まりなあ!」

「悪いけど、捕まって!」

 マスブラックとヒュージに挟まれている花女である。小柄ゆえ抜け穴を見つけられても小柄ゆえに逃げ遂せられない。

 だというのに、

「っふふ、」

 ……こいつ、恐れてねぇし油断がねぇ。

「我は戯れるつもりがないのである。知りたいなら見せてやろうぞ」

 花女とはもとから距離がなかった。バルァゴアが退けば、マスブラックもヒュージも遠慮なく詰められる距離だった。

「『な……』」

 マスブラックも、ヒュージも、その場で磔にされたように動けなくなっていた。

 ……これだ。この、力──。

 動きを止めた二者の体から、白い光の粒子が溢れる。それにとどまらず、マスブラックの体は少しずつ小さくなっているようである。

「や、やめてくれ、なんか、変な感じだ……あ、アニキい!」

「……マスブラック、ヒュージ、もういいから引っ込め」

「賢明である」

 何かの力を治めた花女。怯えることもなく一歩も動かずバルァゴアを見つめていた。

「改めて問おうぞ。我の言の葉に従うか否か」

「従いやしねぇよ。二回も観たんだ、力の正体はともかく、理屈には推測が立った」

「ほお、見所がある。申してみるがよいぞ」

「貴様の力は、魔物特有の魔力穢れ(けが  )を浄化してるんじゃねェかァ」

「優れた洞察である」

 やはり隠さないようだ。隠すほどのことではない、と、いうわけではない。

 ……こいつの力は、オレサマ達にはあまりに──。

「危険だ」

「……」

「おぬしも程度の低き魔物であるか。がっかりである」

「ッッッ、魔物なんてのは生まれがどうであれ低俗なゴミクズだぜェ」

 あらゆる次元のあらゆる種族に討伐対象とされているのがいい証拠である。きちんとその理由もある。反社会的で反倫理的で不道徳で制御が利かない害悪、罪が形を成して動いているかのようだとまで言われる。他種族を食らうことを覚えて同族である魔物をも食らい、食らうことを覚えぬ者も衝動的に他者を襲い続ける。低俗以外のナニモノでもないではないか。

「おぬしには期待したのであるが始祖直系一親等では左様なものであるか、地層が浅いと理解しようぞ」

「待て」

「時の浪費である」

「待てェ!」

 立ち去ろうとする花女の前に回り、バルァゴアは問う。

「ジジババを……オレサマの親を知ってるのかァ」

「知っておる。よおくな」

「どんな関係だ。奴らの弱点を教えろ」

「弱点なら気づいておろう」

 ……だから、貴様は危険だ。

 魔物がなぜ魔物たり得るかといえば害悪だからではない。それは要素に過ぎない。核心は、穢れを持っていることだ。花女の力は、穢れを浄化する。いくら砕けても死なないマスブラックを収縮するにとどまらず果ては消し去る、すなわち魔物の存在に死を与える力である。魔物であれば始祖であろうとも消し去られる危険性がある。

 ……これで終りだ。切札が、こっちに舞い込んだぜぇ。

 目の上の瘤を消滅させる力がバルァゴアの目の前にあった。自分に取っても危険という考えには、目が向かなかった。〕

 

 

 

──始章 終──

 

 

 

 

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