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義姉と義妹がアポなし凸ッ!!

おそらく、次で最後です。


 恋淵さんの魔の手からどうにか逃げ切れた俺は、再び独りで帰路を歩いていた。


「さっきのは流石に危なかった。まさか恋淵さんまでこの催事(ゲーム)に参加しているなんて…。能力的にも色々と厄介だな。何よりあの人、妙に勘が冴えてるところがあるから、今後注意しないと…。それよりも………また無駄に金が減ったぁあああッッ!!」


 俺は先程の【固有派生魔法】の“代償(・・)”を思い出して頭を抱え、しゃがみ込んで(うめ)き声をあげる。


「あ~…クソッ! チクショウ!! いくら緊急事態だったとはいえ、まさかあんな場面で余計な失費が出るなんて…。貧乏学生にはホント痛い事なんだぞっ!」


 そんな逆ギレ(?)みたいな事を繰り返しては、落ち込む俺。ふと周囲を見回して、ある事に気付く。


「何気に夜になってるし…」


 どうやら()が完全に落ちたらしい。

 辺りはすっかり真っ暗になっていた。

 そのせいか、周辺には殆ど人がいない。

 普段の帰り道の筈なのに、ちょっと不気味だ。


「あっ! 買い出ししてねぇーや…。仕方ない、また今度で良いかな。それにしても……今日はいつも以上に疲れた…」


 俺はそうぼやいて歩き出す。

 不意に幼馴染や、さっきまで一緒だった恋淵さんの事が頭に浮かぶ。


(美羽達……ちゃんと帰ったかな…。恋淵さんも。あのまま放置してきたけど、大丈夫だっただろうか…。俺のこと、捜してなければ良いんだけど…)


 そんな事を考えながら歩いていた俺は、前方に(ただ)ならぬ気配を感じ、歩みを止める。

 暫くその場所を見詰め、本日最大級の溜息を漏らした。


「はぁぁ〜〜…。マジで勘弁してくれよ。こちとら本気で疲れているのに…。ここでラスボス登場は冗談キツイって!」


 そんな事を愚痴っても状況は変わらないし、何より目の前(・・・)の人物(・・・)はこの場合、俺が何を言っても絶対に引かないと俺は熟知しているので、仕方なく外していた視線を戻し、少し睨みを利かせながら言葉は投げる。

(まあ、この人には俺程度の威圧なんて、全くの無意味だろうけど…)


「最後の最後で貴女ですか…。──【斬覇(きりは)】姉さんッ!!」


 俺にそう呼ばれ、漆黒の暗闇からゆらりと人影が現れる。


 月明かりと街灯に照らされたその姿は、一言で表現するなら 『“純黒の女神(・・・・・)”』 とでも呼ぶのだろうか。


 闇夜に溶け込む黒のスーツを非の打ち所がない程、見事なまでに完璧に着こなし、どこか気品を感じさせる出で立ち。

 艶のある、とっても長い綺麗な黒髪をポニーテールしていて、なんとも魅力的だ。


 スーツ越しでも分かるその胸部の膨らみは、爆乳娘(みう)と比べても負けず劣らず魅惑的で、男女関係なく目を奪われる。


 全身を黒一色で統一された格好は圧巻の一言で、一つ一つの動作も洗練されていて美しく、その美貌と相まって綺羅雪とはまた違う方向性(ベクトル)の完成された芸術品の様だ。


 Sランクの珠子より更に上の『“特Sランク(・・・・・)”』の絶対的自信からくるものなのか、その立ち振る舞いはとても威風堂々としていて、素敵(クール)で憧れる。


 180cmを超える長身の女傑───。


      【神無月(かんなづき) 斬覇(きりは)


 俺の自慢だった(・・・)義姉(あね)が、仁王立ち気味に佇んでいた。



「おかえり愛徒。ずっと待っていたよ…」


 凛として澄み切った音色(こえ)が、俺の耳に入ってくる。


 切れ長の鋭い目で優しく微笑む姿は、厳しくも愛情に溢れる、華麗で聡明な女神そのものだった。


 そんな女神は俺に数歩近づくと、言葉を続ける。


「遅かったな。何をしていた? まさか……寄り道をしていたのか? それはあまり感心せんな…」


「別に良いでしょう。俺の勝手じゃないっすか。いつまでも保護者(ヅラ)するのはやめてくれませんかねぇ? 正直、ちょっとウザいっす…。つーか、何しにきたんですか? ──【“神無月隊長(・・・・・)”】殿?」


 俺の返答の仕方や態度。

 更に『呼び方』が癇に障ったのだろう。

 微かに眉を顰めて、無言で(こっち)を見詰めてくる斬覇姉さん。


「そんな他人行儀な話し方はよせ。私達は姉弟(きょうだい)だろう? だからどうしても、愛徒の事が放っておけないんだ…。それにその呼び方はなんだ? 昔みたいに『ねぇーちゃん』や『きり()ぇ』とはもう呼んでくれないのか…?」


 斬覇姉さんは眉尻を下げて、とても悲しそうに俺を見詰めてくる。

 俺はちょっと罪悪感に苛まれるが、どうにか平常心を装って言い返す。


「いやいやいや。幾ら身内だからって、天下の【守護の楯(ガーディアン)】の若き部隊長であり、この国に“十三人(・・・)”しかいない『特Sランク』でもある【二つ名持ち】の神無月隊長殿を愛称で呼ぶなんて、とてもとても……」


 俺の芝居がかった嫌味(いいまわし)に、流石にイラッときたのだろう。

 険しい顔をして、怒気の孕んだ低い声で威圧してくる。


「なら尚更だな。今は職務中でもないし、隊員や部下でもない者にそんな呼び方をされるのは、非常に不愉快だ…ッ!」


 その凄味に一瞬たじろいて、息を詰まらせる俺。


 ほんの一瞬…。ほんの一瞬この人が圧を放っただけで、俺の全身から汗が吹き出た。

 それだけでこの人の凄さやヤバさ。実力が分かる。


 その様子にハッっと気付いた斬覇姉さんは、直ぐにバツの悪そうな表情(かお)をしながら 「すまない…。私とした事が…」 と呟いて、再び優しさと慈愛の塊みたいな美しい微笑みを、俺に向けてきた。


 微笑み掛けながら、斬覇姉さんは俺に聞いてくる。


「愛徒…。──まだ“あの事(・・・)”を怒っているのか…?」


 その質問に、今度は俺が渋い顔をして頭を掻く。


「今のは俺も悪かったし、謝るよ…。ごめん、斬覇ねぇ(・・・・)…。でも、その問いには答えたくない…。──てゆーか、本気(マジ)で何しに来たんだよっ!?」


「それは───」


 斬覇姉さん……斬覇ねぇが何かを言い掛けたその時に、


「お兄ちゃんッ!!」


 可愛らしい…アニメ声とでも言うのだろうか?

 自信が身に付けている鈴の音と同じように、綺麗な声で俺を呼ぶ人影が、俺の背後に現れるのを感じた。


 俺は気怠そうに軽く溜息を吐いたあと、ゆっくりとその人物を見やる。


「斬覇ねぇが此処にいるって事は、やっぱりお前も一緒だよなぁ…。──【鈴破(すずは)】ッ!!」


 視線の先には俺と同じ学校の制服を着た、美羽達と並んでも見劣りしない超が付く程の美少女が、目尻に涙を溜めて俺を見詰めていた。


 三毛猫カラーの少し長目の髪を、鈴付きリボンで両サイドを結びツインテールにして、胸元にも違うタイプの鈴付きリボンをしている。

 クリクリとした大きな瞳は本人の人懐っこい性格も相まって、愛嬌たっぷりの猫を連想させる様で、とても愛らしい。


 背の低い綺羅雪よりは高く、美羽や恋淵さんよりはちょっと小柄である、そんな美少女…。


 俺の義妹(いもうと)──【神無月(かんなづき) 鈴破(すずは)】は声を震わせて、俺の表情を伺うように言葉を絞り出す。


「やっと逢えた…。ねぇお願いっ! そろそろ(すず)たちのところに帰ってきてよぉ…。(すず)、久しぶりにお兄ちゃんの手作り炒飯食べたいよぉ…。だからお願いッ!!」


 懇願するように、縋るように擦り寄って来る義妹(すずは)

 俺はそれを手と言葉で制止する。

 勿論。反対にいる斬覇ねぇにも注意を払いながら。


「ストップ。それ以上、近づくな…」


「そんなっ…!! 何でそんな酷い事言うのッ?! (すず)たちのこと……嫌いになっちゃったの…?」


「やはり…。まだ“あの事(・・・)”を赦しては…いないんだな…」


 俺の言動に双方好き勝手に言ったり捉えたり、解釈したりする我が義姉(あね)義妹(いもうと)…。

 俺は半身になって二人を交互に見やったあと、また軽く溜息を吐いて言葉を返す。


「いや、お二人さん。()()なく(すき)あらば、俺に抱き着く気満々でしょう?」


「「うっ…!!」」


『なぜバレたッ!?』 『どうして分かったのッ!?』


 みたいなとても残念な表情(かお)をして、たじろぐ姉妹(ふたり)


 嗚呼……悲しかな…。一応これまで姉兄妹(きょうだい)として、家族としてずっと一緒に過ごしてきたので、思惑や思考。

 感情や心情などが何となくだけど、分かってしまうのだ。


 幼馴染(みう)たちと同じで、この二人も俺の【固有魔法】については熟知している。

 なんなら美羽達と違って、俺の切り札である『奥の手シリーズ』も、この姉妹(ふたり)は幾つか把握してたりする。

(まあ恋淵さんに使ったアレ(・・)は多分、まだ知らないとは思うけど…)

 だから不用意に近付けさせてはいけないのだ。


   しかし────。


「ううっ…。おにいちゃ〜〜んっ!! そんなイジワルしないでぇええッ!! (すず)、もう我慢の限界なのぉおおっ!! 『お兄ちゃん成分』摂取させてよぉおおおおッ!!」


「そうだぞ愛徒! 鈴破の言う通りだッ!! 久しぶりに逢ったんだから、私にもハグ(ぎゅっと)させろッ!! あと、私が満足するまで頭をナデナデさせるんだッ!!」


 意味不明な事を言いながら、理不尽極まりない要求をしてくる、義姉(きりはねぇ)義妹(すずは)

 斬覇ねぇ…。ちょっとずつ、“()”が出てきているよ…。


 まあこの二人の反応は、仕方ないと言えば仕方ない反応ではある。

 一緒に暮らしていた頃は二人とも、俺に接するのが過剰と思える程、スキンシップが矢鱈と激しかった。


 休日なんてお互いに用事がなければ、殆ど四六時中一緒で、特に鈴破は“あの事件(・・・・)”が起きるまでは俺にべったりで、金魚のフンの様に俺の後を付いて回っていた。


 だから美羽や綺羅雪と揉める事が多々あった。


 ただ、なぜか珠子にだけは俺たち並みに懐いていて、『珠子お姉ちゃん!』 『すーず♪』 と呼び合っていて、珠子によく可愛がわれていた。

(尚、美羽や綺羅雪には『ちゃん』又は『さん』付け)


 それに斬覇ねぇも、珠子には甘かった気がする…。


 話が脱線しそうなので元に戻す。

 兎に角。俺が何を云いたいかと言うと、この姉妹は『シスコン』であり『ブラコン』でもあるのだ。

(まあ、俺も人の事は言えないけど…)


 だから今、俺の目の前で『依存症患者』みたいな状態で、虚ろな目をしながら、どうにかして俺に近付こうとしている二人を、俺は強く拒絶出来ないでいる。


(さて、どうしたものかな…。あんな事(・・・・)があったとはいえ、元々は仲の良い姉兄妹(きょうだい)だった訳だし、出来れば必要最小限、極力二人を傷付けたくない…)


 俺が色々と思案しながら手を(こまね)いていると、


「ねぇお兄ちゃん。またあの頃みたいな関係に戻ろう…? 三人仲良く身を寄せ合って、それぞれが欠点を補い、助け合っていたあの頃に…」


「そうだな。鈴破の言う通りだ…。また三人であの家で…我が家で共に暮らそうっ! 大丈夫、きっと上手くいく…。再びあの幸福だった日々に、必ず戻れる筈だ…ッ!!」


 そんな戯言を抜かす愚姉愚妹(おバカさんたち)

 俺は少々呆れながら、自然と出てくる溜息と言動に敢えて逆らわず、そのまま続ける。


「あのですね、お二人さん。その『幸福だった(・・・・・)日々(・・)』をブチ壊したのは他ならぬ、貴女達二人だって事を忘れてはいないでしょうねぇ?」


「「うぐッッ!!!!」」


 俺からの容赦ない一言に致命傷(クリティカルダメージ)を受けて、悶絶する二人。(マンガみたいに白目を剥いていて、ちょっと面白い)


 二人には悪いが、俺は更に追い討ちを掛ける。


「『幸福だった日々』って言いますけど、実際には家事全般の殆どを俺が一人で(こな)して、貴女たち二人はそれを()も当然のように、我が物顔で享受していただけじゃないですか!」


「そんな事は断じてないッ!!」

「そうだよっ! (すず)、いつも感謝してたよッ!!」


 声を大にして反論する、斬覇ねぇと鈴破。

 まったくこの姉妹(ふたり)は…。

 この二人はマジで家事全般が終わっている。


 鈴破は料理だけは一応そこそこ出来るが(味はイマイチ)それ以外の家事は全て苦手で、特に掃除や後片付け等がとてもお粗末だ。

 斬覇ねぇに至っては途轍もなく壊滅的で、将来お嫁に行けるのか、義弟(みうち)としてはかなり心配だ。


 時々この姉妹があの義母(かあ)さん(家事がプロ級)の()なのか、本気で疑いたくなる。(まあ、“美貌(・・)”だけはちゃんと受け継いでいるみたいだけど…。斬覇ねぇなんてソックリだ)


「大方。二人だけじゃあ何も出来なくて、あの家がゴミ屋敷寸前の状態になっているんじゃない? んで、いよいよどうしようもなくなって、俺の所に泣き付いてきた感じかな?」


「ちっ、違うもんっ! (すず)達は本当に…お兄ちゃんの事…」


「ああ…。愛徒の読みも一部当たっているが、決してそれだけじゃないっ! 情けない話だが、お前がいないと私も鈴破も色々と駄目なんだ…。──頼むっ! 私達のところに戻ってきてくれッ!!」


 綺麗な姿勢で、丁寧に頭を下げる斬覇ねぇ。

 慌てて鈴破も頭を下げる。


 俺は憧れだった義姉(あね)や、可愛がっていた義妹(いもうと)のそんな姿を見て心が痛くなるが、絆されず突き放す。


「別に俺じゃなくても良くないか? 斬覇ねぇその若さで高給取りなんだし、家政婦さんとかを雇ってみるとかさ!」


「それじゃあ意味が無いと言っているだろう!! 何度も同じ事を言わせないでくれぇッ!!」


「お姉ちゃんの言う通りだよっ!! それに(すず)、あんまり他所(よそ)の人を我が家に入れたくないッ!!」


 何故か逆ギレする二人。

 その理不尽な逆ギレに少々カチンときた俺は、今日一番の特大口撃(スーパークリティカル)を容赦なく、安本丹(あんぽんたん)姉妹にぶっ込む。


「よくもまあ、そんな戯言を…。──“親友(アイツ)”を俺のいない間に、俺の許可なく勝手に入れたのに? それも、元々は俺と親父が住んで居た、今は亡き実母(かあ)さんとの思い出が詰まったあの我が家で、『“あんな事(・・・・)”』をしておいて?」


    「がはっっっ!?!?!?」

    「ぎゃひんッッッ?!?!」


 北斗〇拳の敵キャラばりに、大袈裟反応(オーバーリアクション)を見せてくれる、愛しの我が姉と妹(きょうだいたち)

 俺はそんな二人を心の中で面白がりながらも、構わず続ける。(話す内容は全然面白くない)


「二人は俺の気持ち、少しは考えた事ある? 学業に疲れながらも、大切な『姉と妹(かぞく)』の為に親子丼(・・・)でも作ってあげようと意気揚々と帰ったら、まさかの“姉妹丼(・・・)”の現場を目撃する羽目になる憐れな男(オレ)の気持ちがっ!!」


    「ぐほぉおおおッッ!!!!」

    「あばばばばっっっ!?!?」


 追撃に追撃を重ねる俺。口撃はまだまだ続く。


「ほんとアレには参ったねっ! よもや家族団欒の憩いの場で全裸の姉と妹が、同じく全裸の親友の上に跨っている場面に出会(でくわ)すなんて、誰が想像出来ますかって!」


    「ばらバぼベ微ひディッッ!?!?」

    「あヌ゙ぞ我リ也ジだ羅っっ?!?!」


 意味の分からない言葉を叫んで、悶え苦しむ美人姉妹。

 綺麗に整った顔が大惨事で、折角の美貌が台無しだ。

 でも俺はお構いなしに、口撃の威力を上げる。


「全裸で仰向けの親友(おとこ)顔面(がんめん)に跨り『良い…すごく上手…。コワレそうっ! ──95点♡♡♡』ってほざく姉の痴態(すがた)や、同じ親友(おとこ)の下半身に跨り『どっ…どっ……ドッキリ〇ムゥウウウウッッ!!♡♡♡』って絶叫(・・)して絶頂(・・)する妹の珍態(すがた)を目の当たりにした頓馬(おれ)の心情を想像出来るッ!?」


「たっ、頼むっ…。もう…やめてっ…。赦して…くれっ…」

「くぁwせdrftgyふじこlp?!!? ──ピィーーー……」


 満身創痍気味に哀願してくる斬覇ねぇ。

 余程効いたのか、息も絶え絶えに涙目で苦しそうだ。

 鈴破なんて白目を向いて涙を流しながら、硬直(フリーズ)している。


 最後に俺は少々躊躇いながらも、二人にトドメを刺す。


「『あの事を(・・・・)赦して(・・・)くれない(・・・・)』…? 『まだ(・・)怒って(・・・)いる(・・)』? ──我が家(ひとんち)で勝手にダブル騎◯位なんてしている奴らを簡単に赦せる(やつ)がいたら、そいつはアホかバカかマヌケかお釈迦様か、そういった“性癖(・・)”のやつだけだクソッたれぇえ!!」


   「うわぁああああああああああッッ!!!!」

   「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ…」


 跪いて項垂れ、悲鳴にも似た声を出す斬覇ねぇ。

 鈴破は壊れたレコードみたいに、只管(ひたすら)に懺悔と謝罪の言葉を繰り返している。


 俺はそんな二人を何回か交互に見やった後、軽く溜息を吐いて、さっきからずっと思っていた事を吐露する。


「それに、さっきからずっと引っ掛かってたけど何なの? まるで『家族(・・)』が俺ら“三人(・・)”しかいないような言い方して。親父や義母(かあ)さん、お互いに血を分けた弟妹(きょうだい)──【勇斗(ゆうと)】や【薬葉(くすは)】の事、二人とも忘れてねぇーかっ!?」


 少々の呆れと怒りを含んだ声色で、二人を咎める俺。


 確かに、俺に黙って親友(アイツ)と我が家で『性◯為(おセッセ)していた』っていうのは赦せないし、看過できる事案(もの)でもない。

 けれど、もう過ぎてしまった出来事なのも事実なので、今は置いておく。

 俺が今それ以上に許せない事…怒っている事は、なんだかんだで子供達(オレら)の自由意志を尊重してくれる、心優しくて愛情深い両親。

 目に入れても痛くないくらい可愛い、幼い弟や妹の事を例え一時でも蔑ろにした感じを、この二人(しまい)がしたからだ。


 そんな俺の睨みながらの()いに、顔を上げて苦悶の表情で弁解してくる斬覇ねぇと、ほぼ気絶(フリーズ)状態から元に戻った鈴破が、言い訳をしてくる。


「そんな事は…ない…。義父(とう)さんや母さんの事を忘れる訳ないだろう…。あの両親(ふたり)を誰よりも尊敬し、恩を感じているのは他ならぬ、私達姉妹(ふたり)なのだからな…ッ!!」


「うん…。勿論、勇斗(ゆーくん)薬葉(くーちゃん)の事も忘れてないし、お兄ちゃんに言われなくても、そんな事分かってるよっ!!」


 またもや、何故か半逆ギレ状態の斬覇ねぇと鈴破。

 何なのこの姉妹…。ホント『困ったちゃん』達である。


 頼むっ!親父に義母(かあ)さん…。

 早く、超長期出張(・・・・・)から帰ってきてくれっ!!

 もう俺だけじゃあ、この姉妹(ふたり)を扱いきれねぇーよっ!

 それに勇斗と薬葉にも、久しぶりに会いたいしなっ!


 俺は頭を掻きながら、極めてゆっくりと動き出す。


「……それなら良い。──んじゃあ俺は帰るからっ! 二人とも、気をつけて帰るんだぞっ!!」


「待て愛徒! 話はまだ終わっていないぞっ!!」

「そうだよっ! どさくさ紛れに帰ろうとしないでぇ!!」


 ・・・・チッッ!! 意外と鋭いなぁ。

 この隙に、流れる様に逃げる(かえる)つもりだったんだげど…。

 やはりこの二人には効かないか。

 俺が二人(あっち)の考えが分かるように、姉妹(あっち)も俺の行動が何となく分かってしまうようだ。


 てゆーか! 立ち直り早いな、おい…。

 俺が二人を警戒しながら見ていると、


「ええいっ! このままじゃあ埒が明かない…。仕方ない、斯くなる上は強行手段だっ!! 行くぞ、鈴破ッ!!」


「うん! こっちは任せて、お姉ちゃんっ!!」


 そう言って、二人が俺に(にじ)()ってくる。

 ホントこの姉妹は…。

 こんな時だけ、息がピッタリになるんだから…。


 挟み撃ち状態になった俺は、目線を瞬時に双方に配った後、軽く溜息を吐いて覚悟を決める。


 二人(そっち)がその気なら、(こっち)ももう容赦しない…。

 ───狙うは一点突破…ッ!!


「──今だっ! 掛かれ、鈴破ッ!!」

「でりゃああああああッッ!!」


 二人が標的(オレ)目掛けて、一斉に襲い掛かってきた。

 俺は後方の義妹(すずは)を完全に無視して、前方の義姉(きりはねぇ)に意識を全集中させる。


 鈴破には悪いが、ぶっちゃけ相手にならない。

 俺ら姉兄妹(きょうだい)の中で鈴破が一番、瞬発力や咄嗟の判断力。

 突発的な場面の瞬時の対応能力に欠ける。

 だから気にしなくても、どうにでも対処が出来てしまう。


 問題は目の前の、【特Sランク】で【二つ名持ち】の斬覇ねぇただ一人だ。この人は、


     【“国家迷宮(・・・・)災害対策(・・・・)特務機関(・・・・)”】


 通称──【守護の楯(ガーディアン)】の四番隊の隊長を務めているので、俺みたいなド素人が逆立ちしたって敵うわけがない。



      【“黒刃(ブラックブレイド)”】の斬覇───。 



 その名をこの街で…この国で知らない人はいないって位、超が付く程の有名人だ。


 数々の伝説を残し、一般市民からは愛されて慕われる。

 犯罪者や反社会的勢力など、悪い奴らからは恐れられて、警戒される人物…。

 そんな豪傑(プロ)が隙なんて見せるわけないが、俺には取っておきの『秘策(・・)』があるので、そのまま突っ込む。


(こっち)に来るか。それは悪手だと思うが…。──私も舐められたものだなっ!!」


 そう言って、俺に掴み掛かろうとする斬覇ねぇ。

 俺は踏み込んで肉薄し、斬覇ねぇ専用(・・)特効(・・)の『必殺の一撃(ひとこと)』を放つ…。(ちょっと恥ずかしいが、致し方ない…)









    「ねぇーちゃん、だぁ〜〜いすきっ!!」











「ふぇぇええええええええッッッ!??!♡♡♡♡♡」

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