汚馴染二号・三号との遭遇。
少し長め、会話多めです。
美羽から逃げ切った俺は一人、裏通りを歩いていた。
「美羽の固有魔法は強力だけど、一度変身を解除したら最低五分は間を置かないといけないから、暫くは追ってこれない筈。今の内に近所のスーパーに寄って、食材やらなんやらの買い足しを……のわあああッッ!?」
財布の中身を確認しながら買い足す物を頭で整理していると、俺の足元…正確には裏通りの全ての道が氷で凍結されていた。
それで危うく滑って、小銭等をぶち撒けそうになる俺。
しかし、なんとかそれを間一髪で回避する。
それからこの状況を作りだしたであろう傍迷惑な人物に、溜息を吐いて苦言を呈す。
「いつも言っているだろう…。 無闇矢鱈に、深く考えずに固有魔法を使うなってな! 特にお前の固有魔法は周囲への影響も半端ないんだからよ! ……ちゃんと聞いてるか? 【綺羅雪】!」
俺にそう呼ばれ、頬をほんのりと赤く染めた小柄な美少女が、俺の目の前に優雅に現れる。
雪のような真っ白な素肌。
サラサラした綺麗な銀髪。
宝石みたいに美しい、瑠璃色の大きな瞳。
艶かしくて魅力的な、ピンク色の唇。
一瞬、高級な西洋人形を思わせる美貌。
上品に切り揃えられた髪を風に靡かせている姿は、なんとも神秘的で芸術的だった。
「愛徒…逢いたかった…。それに久しぶりに名前で呼んでもらえた。嬉しい…。いまボク…とっても幸せ…♡」
美少女は微笑みながら瞳をキラキラさせて、鼻歌混じりに俺の方へと歩み寄ってこようとする。
だけど俺はそれを手で制止する。
「待った。その前にこの固有魔法の発動をやめろ。たまたま人が居なかったから良かったものの、下手したら大惨事が起きてたぞっ!」
「どうして? このまま目眩く、二人だけの愛の園へ逝こう♡ 大丈夫。ボク…愛徒が一緒なら怖くないよ♡」
「そういった場所へはお独りでどうぞ! 兎に角、コレの発動をやめねぇーんなら、俺も固有魔法を発動して今すぐこの場から居なくなるぞっ! それでも良いのか?」
俺の脅しに恍惚だったヤバい表情が一瞬で、普段の無表情で感情の無い、お人形さんの様な目に変わる。
でも付き合いの長い俺には分かる。あれは無表情に見えて、不満な事や面白くない事があった時の表情だ。
「それは困る。漸く愛徒とちゃんとお話し出来る機会が巡ってきたのに…。仕方ない、愛徒がそう言うなら…」
そう言って銀髪美少女──【綺羅雪】は目を瞑る。
その瞬間、凍結していた道や建物が元に戻っていた。
再び目を開けた綺羅雪は、先程の無表情からは想像出来ない程の優しくて柔らかい笑みを浮かべ、今度こそ俺に近付いてくる。
「愛徒ぉ…。逢いたかったよぉ…。あいとぉ〜♡」
「俺は別に会いたくなかったけどな…。んで? 俺に何の用だ? ──『白鶴』さん?」
俺のその呼び方にピクッ! と反応したかと思うと、またさっきの無表情……いや、さっき以上のどこまでも冷たい、狂気の孕んだ表情になるボクッ娘美少女。
「違う…。さっきの呼び方に戻して。名前で呼んで…!」
「無理だな。さっきのは流れっつーか、ここにくるまでに美羽と…魅輪さんと会っていて、アイツがどうしてもって言うから、ついその名残りで呼んだだけだし…」
俺がそう言うと【白鶴 綺羅雪】さんは顔を伏せて、身体を微妙に振るわせながら怒気の含んだ声で呟く。
「また美羽…。いっつもそう。美羽みうミウ美うミ羽み羽美ウ…。あの子だけズルい! ボク達よりほんのちょっと愛徒と知り合うのが…出逢うのが早かっただけなのに、愛徒から“特別”扱いを受けるなんて!」
「別に特別扱いしている訳じゃあ…」
「だったらボクも名前で呼んでぇ!!」
癇癪を起こした子供みたいに瞳を潤まして、縋り付いて喚く“汚馴染二号”さん…。
ヤバい…。このままじゃあまた、綺羅雪は固有魔法を『暴走』させて───。
俺が冷や汗を掻きながら焦っていると、
「こらぁあああっ!! 綺羅雪ぃいいいッ!! アンタまた、私を騙したわねぇええええッッ!!!!」
大声を発しながら黒紫髪の美少女が、俺たち目掛けて猪突猛進に突っ込んで来た。
美少女は可愛らしい長めのサイドポニーを揺らして、俺達まであと数歩ってところで盛大にズッコケる。
───ズザザザザザッッ!!!!
「ぐぎべきゃッ!!」
可憐な淑女が絶対に出してはイケナイ、意味不明な悲鳴?の様なものをあげて凄い音と共に、前のめりに転倒する。
その時スカートが捲れて、履いていた下着が露わになっていた。(おっ! 紫のショーツ…。欲求不満か?)
俺がそんな阿呆な事を考えている間に、ドジっ娘はその整った綺麗な顔を抑えて、呻き声を上げながら立ち上がる。
「あいたたた…。ハッ! 愛徒!? どうしてアンタが此処に!? ──今の見た?」
今度はスカートを抑えて、顔を赤く染めながら睨んでくる“汚馴染三号”さん。
俺はそっぽを向いて答える。
「何の事だよ…。てゆーか、お前はいつまで経っても粗忽なところは変わらないなっ!」
「なっ!? 誰がそそっかしい女よ!」
「愛徒…。パンツが見たいの? それならボクのを見せてあげる。いつ愛徒に求められても良いように、常に勝負下着を履いている…♡」
「いやいらねぇー。チラリズムや、たまたま見えた時にこそ価値があるんだよ! だから堂々と見せられても…。それに、いつも同じようなもん履いていたら勝負下着の意味がないぞ?」
「やっぱり見てたんじゃない!! このスケベ! 変態! 色情魔ッ!!」
「誰が色情魔だ! お前には言われたくねぇーよ!」
ギャーギャー、ワーワーと馬鹿みたいに一頻り騒いだ後、俺は話を戻して二人に訪ねる。
「んで? マジで俺に何の用だよ? 幼馴染二号さん・三号さん」
「その呼び方やめなさいって言ってるでしょう! 全く…。あのね、私は──ってその前に綺羅雪! アンタまた私を騙したわねぇ!!」
「ん…。何の事?」
俺の腕にしがみ付いて離れない幼馴染二号…綺羅雪に食って掛かる、幼馴染三号さん。
それを首を傾げて、あざと可愛く受け流す綺羅雪。
(コイツの小聡明さも、美羽とはまた違う感じの小聡明さがあって、とても魅力的だったんだけどなぁ〜。残念だ…)
俺がそんな事を思っている間も黒紫髪のドジっ娘は、尚も綺羅雪に食って掛かる。
「惚けるんじゃないわよ! アンタが『あっちから愛徒の気配を感じる…』って意味深な言い方するから、それを信じて向かってみれば葬儀場だったのよ! 私がどれだけビックリしたと思ってんのっ! ──私…本気で愛徒に何かあったんじゃないかって…心配して…」
潤んだ瞳で今度は俺を見詰めるサイドポニー美少女。
艶のある長くて綺麗な髪を束ねている、猫柄のシュシュがなんとも愛らしい。(確か…義妹から貰ったんだっけか?)
コイツの…幼馴染達の泣き顔は何故か昔から苦手だ。
だから仕方ないので、何か言おうと俺は言葉を探す。
けれどその前に綺羅雪が返答する。
「ん? 何か間違ってる…?」
「あれじゃあ『愛徒』じゃなくて『哀悼』よっ! アンタ、私を馬鹿にしてんのッ!?」
「ププ。今頃気づくなんて。タマはおマヌケさん…w」
「うがあああ!! ふざけんなぁあああッ!!」
そんな風なやり取りを、俺の前でずっと繰り広げる二人。
幼馴染二号の綺羅雪と幼馴染三号の──【斑芽 珠子】。
この二人の談笑を見るのも、大分久しぶりな気がする。
(まあ実際は、そんなに月日は経ってないんだけどな…)
あまりにも懐かしい光景だったのでずっと見ていたかったが、このままじゃあ日が暮れると思ったので、二人には悪いが会話に割り込む。
「なあ。漫才なら余所でやってもらって良いか? 大した用が無ぇーなら、俺はここで失礼させてもらうけど?」
俺は腕にしがみついてる綺羅雪を無理矢理剥がして、その場を去ろうとする。
しかし珠子が俺の前に立って通せん坊し、然り気なく綺羅雪が背後から俺の袖を掴む。
「ちょっと待ちなさいよっ! 私、まだアンタに言いたい事があるんだから!」
「うん。行かないで愛徒…。逃げちゃ……やだぁ…」
二人を交互に見やった後、本日何度目かの溜息を吐く俺。
二人に目線を配れる様に頭を掻いて半身になる。
「んじゃあ何だよ? もしかして……お前らも俺の【賞金】が狙いなのか?」
「そんなのいらない。ボク達が欲しいのは愛徒自身…!」
「……………」
「おい! 片方、目を逸らして黙り込んでるんだがっ!?」
俺に指摘され、綺羅雪からは白い目で見られて冷や汗を滝の様に出す珠子。
暫く目を激しく泳がせたあと、申し訳なさそうに呟く。
「だってあたしん家はアンタ達と違って一般家庭…ううん。貧乏なのよっ! そりゃあ〘三百億〙って信じられない大金、欲しくないって言ったら嘘になるじゃない…。──それに、借金だってまだまだ沢山あるし…」
最後の方は声を窄めさせ、身体の方も縮こませてまた黙り込む珠子。
幼馴染の中では一番の身長がある筈なのに、今は一番小柄な綺羅雪より小さく見える。
珠子のそんな様子を見て俺はまたもや溜息を吐き、しっかりと見詰めて言葉を投げ掛ける。
「だからってお前……『姉活擬き』みたいな事をしちゃあイカンでしょ…」
俺のその投げ掛けに、両目を見開いて驚く汚馴染三号。
顔を茹で蛸みたいに真っ赤にさせらながら、口を魚みたいにパクパクさせて震えているが、俺は構わず続ける。
「良いか。たとえそういった行為がなかったとしてもだ。血縁者でもない歳上の男性から『お姉ちゃん』と呼ばれながら飯を奢って貰い、尚且つ金銭まで頂戴するのは世間一般的に『パパ活』と言われる行為と何も変わらないんだぞっ!」
「ア、ア、ア、アンタッ! み、み、み、見ててっ…!?」
真っ赤だった顔から、今度は真っ青な顔になる珠子。
こいつのコロコロと変わる表情豊かなところは可愛くて好きだったが、今は何となく残念な気持ちになる…。
この前たまたま入ったファミレスで、珠子と見知らぬ男性(明らかに歳上な感じで、二十代前半)が食事をしているのを見掛けた。
盗み聞きは良くないと思ったが、どうしても気になって珠子達の会話に意識を集中していた。
そしたら────。
『ここの料理意外と美味しいねっ! お姉ちゃん♪』
『そうね…。ホラ、さっさと食べなさいタケ坊。時間ないんだから…。 ──あ~もうっ! ほっぺにケチャップ付けてるわよ…』
『うへへへ♪ ありがとうお姉ちゃん!』
・・・・・・・『タケ坊』って誰だよッ!?
お前の本当の弟達は『清一郎』と『優一郎』と『真一郎』だろうがッ!!
今のお前の姿を見たらあの子たち、多分泣くぞッ!!
なんだかんだであの四人、珠子が大好きだからなぁ〜。
その後『今月の分〜』みたいな会話が聞こえてきて確認してみれば、素っ気ない態度をしながらも、どこか嬉しそうに男性から茶色い封筒を受け取っている、残念な幼馴染の様子が視界に入った。
「──あの時ほど、切なくなった気持ちはなかったぞ…。お前の家庭の事情を知っているから、あんま無責任な事は言えないけどさ…。出来ればああゆうのはもう、やめてくれないか…? 幼馴染としてのお願いだ! ──そしたら俺も中学ん時の『“あの事”』も忘れるからさ!」
「違うからぁ…。あれも……それも…違う……からぁ…」
力なく懺悔にも似た否定的な言葉を、譫言のように繰り返す汚馴染…。
いつも元気な娘が弱々しく萎れている姿は、見ていて何か辛い。居た堪れなくなる…。
【中学ん時のあの事】とは、簡潔に言えば親友に珠子が空き教室で『パックんちょ!』されていたのである。
それでその現場に偶然通りかかった俺が、阿呆みたいなタイミングで、鉢合わせしたって感じだ。
──その後の事は察してくれ。詳しくは言いたくない…。
未だに顔を伏せながら、懺悔と謝罪と否定の言葉を永遠と繰り返す珠子。
そんな珠子を尻目にチラッと綺羅雪の方を見てみれば、『お前…そんな事してたんかっ!? 見損なったぞ!!』ってでも言いたそうな驚愕の表情と、軽蔑の眼差しで珠子を見詰めていた。(やべっ。コイツらの友情にヒビ入ったか?)
幼馴染三人は昔から仲良しで、特に珠子と綺羅雪はとても仲が良い。気が付けば二人でずっと一緒に居る。
この二人の友情が壊れるのは俺は嫌なので、話を変えるつもりで頭を掻きながら、今度は綺羅雪に言葉を投げ掛ける。
「あのな、綺羅雪…。お前は人の事、兎や角言う資格無いからな?」
「どうして? ボク…疾しい事、何一つ無いけど…?」
「ほう…。それは嘘偽り無い真実か?」
「うん。ボクは清廉潔白。愛徒に隠し事なんて無いよ!」
平均的なサイズより小ぶりな胸を張り、自身満々に答える綺羅雪。
その姿は容姿も相まってとても愛くるしいが、俺は怪訝な表情で見詰めた後、半ば呆れ気味に懐からスマホを取り出して再度、綺羅雪に問い掛ける。
「そうかそうか。あくまで自分は珠子とは違う…後ろめたい事や、俺に黙ってる事なんて何一つ無いっていうんだな?」
「勿論。信じて!」
「分かった。それじゃあ……一体これは何だ?」
そう言って俺はスマホを操作し、とある動画を再生する。
するとスマホから───。
『んぎぃいいいッ!! これ凄くいぃいいいっ!! 気持ち良いよぉおおおッッ!! もっとしてぇえええっ!!♡』
って綺羅雪の聞くに耐えない、喘ぎ声が流れてきた。
それを聞いた綺羅雪は、時が止まったみたいに目を見開いて固まり、そして段々と顔色を青くさせていく。
その動画に映っていたのは綺羅雪と親友だった…。
四つん這いになりながら恍惚の表情を浮かべて、嬌声を上げる汚馴染。
そんな汚馴染に『面白い玩具を見つけた子供』の様に、鼻歌混じりで覆い被さる親友…。
快楽を貪る獣の如く一心不乱に行為に耽る二人の姿は、俺からしたらちょっとした地獄絵図だった。
俺は動画を一定時間再生したあと停止して、少しだけ冷たく綺羅雪に言い放つ。
「お前、ヤってる時はこんな声を出すんだな…。ちょっと意外だったよ」
「何でっ…。どうして…? どうして愛徒が“そんなもの”を持ってるの…?」
「この前アイツが送ってきたんだよ…。『愛徒に面白いものを見せてあげるね♪ きっと愛徒も気にいると思うよ(笑)』ってクッソむかつく文章と共になっ!!」
俺の言葉にビクッと身体を震わせる綺羅雪。
顔を伏せて暫く黙り込む。
語尾を強めたが、俺は別にそこまで怒っていない。
ただ、『愛徒と結婚するのはボクだよ!』って口癖のように言っていた幼馴染が、結局はイケメン(超が付く程の。オマケに規格外の大金持ち)に抱かれている姿を見て、少し悲しい気持ちと残念な気持ちになっただけだ。
それに。別に彼氏でもないから、何も言う資格無いしな!
暫くその場に、不気味で嫌な静寂が流れる…。(その間も珠子は念仏のように、懺悔の言葉を呟いているけど…)
耐えきれなくなった俺が何か言おうとすると、突然綺羅雪が顔を上げて言葉を紡ぐ。
「フフフ。愛徒は純粋過ぎる。それは良く出来た作り物。映っているのは“私”の偽者! 騙されててカワイイ♪」
澄ました表情でそんな事を述べる綺羅雪。
一見平然を装っているが、俺には分かる…。
────コイツ……相当テンパっていやがるッ!!
咄嗟の出来事や予期せぬ緊急事態に出くわすと綺羅雪は、一人称が『ボク』から『私』に変わる。
突然出来た秘密事などを隠したり誤魔化したりする時も、どうにかして『自分』を取り繕う為に、無意識にやってしまう『癖』みたいなものだ。
本人は気付いてないが、幼馴染達は全員知っている。
なので今、綺羅雪が何かを秘密にしている…必死に嘘をつこうとしているのは十中八九、まず間違いない。
「へぇ〜。これは作り物で偽者かぁ〜。……この女の胸元と尻にある小さなほくろ。俺は見覚えがあるんだがこれは?」
「愛徒のエッチ…♡ それも加工されたもの。今の技術は本当に凄い!」
・・・・あくまでも白を切る気か。
なら仕方ない…。俺にも考えがある。
「そっかそっか。それじゃあ、これ以上にヤバい動画があるんだけど……それらも作り物なんだな? 試しに流すから確認して見てくれよ!」
そう言ってスマホをいじり、動画を再生するフリをする。
すると───。
「待って! ストップ! やめてぇッ!!」
綺羅雪が血相を変えて俺を制止してくる。
そのくりくりした大きな瞳から、涙を滲み出していた。
「認める! 認めるからっ! それはボクッ!! 映っているのはボクだからあッ!! ──だから…それ以上のは……流さないでぇ…。ひっぐ…えっぐ…」
とうとう泣き出してしまった綺羅雪。
泣かせるつもりはなかったんだけどな…。
カマを掛けるだけのつもりが、まさか本当にそれ以上の動画があるとは…。
勿論、俺はそんなもんは持っていない。
親友が送ってきた動画はこれ一本だけだ。
これの他に一体どんなヤバい動画が───。
いや、これ以上の詮索はやめよう…。
流石に綺羅雪が可哀想だし、何より俺が気分が悪くなる。
嗚咽を漏らして泣く幼馴染二号と、ずっと懺悔を繰り返す幼馴染三号…。
俺はこの惨状を見て溜息を吐きながら頭を掻き、二人には悪いけど話を終わらせる為に、言葉を投げ掛ける。
「お前達には悪いけど……俺そろそろ帰って良いか? 大方お前達の用件ってのも、魅輪さん…美羽と一緒で『俺の力になりたい』だの『昔の仲良しだった、あの頃の関係に戻りたい』だのだろう?」
「「!?!?!?」」
「やっぱりか…。あのな! 気持ちは有り難いけど、この件は俺と悪友の問題だからお前達には関係ない。後者については……悪い。今は正直ムリかな…。でもこれまで通り、幼馴染のままで…友達のままではいるからさ! ただ、絡みは必要最低限にして欲しい…」
俺の言葉に目を伏せて黙り込む綺羅雪と珠子。
俺は構わず続けて、然り気なく二人から距離を取る。
「話はこれだけか? なら俺は行くから…。じゃあなっ!」
そんな俺の行動に気付いた二人が、慌てて詰め寄る。
「待ちなさいよっ! なに勝手に話を終わらせて──」
「愛徒やだあっ!! 行かないでぇッ!! ボクまだ──」
「【固有魔法】発動ッ!!」
二人が言い切る前に俺は固有魔法を発動させて、その場を後にした。
最後に見た綺羅雪と珠子の表情は美羽と一緒で、とても辛そうで悲しい表情をしていた───。




