08
「次はクロスオーバー。ボールはつかずに、大きく腕を左右に振るのがポイント」
「これもむずい……」
くっそー、俺の手がもうちょっと大きければ……こんなのチョチョイのチョイなのに。
次のリバウンドも難しかった。頭よりも上にボールを上げて、目の前でバチン!
ボールを上にあげるときも慌てるし、バチン! とする時も慌てる。うーん、これは練習に組み込むか、ハンドリング。
次は頭回し。最も有名な腰の周りでボールを回すアレを、頭でやる奴だ。これがまた難しい。
やっぱり手がちっちゃいこともあって、ボールが馴染んでないんだな、俺の手。
普通のドリブル練習だけだと気づけなかった。
次は頭、お腹、足の順番にボールを回していくハンドリング。
足は簡単だな。やっぱりお腹は、どうしても途中で引っかかる。ゆっくりならできそうだが、難しい。
それからも腰を落として股の間を8の字にボールを回す8の字。
お腹の周りを回し、左右の足の周りを回すボール回しレッグ。
次は両足回しと片足回しを繰り返すランジ回し。
最後はバックパス。これは……もうまったくできない。
もうほんとにできなすぎてびっくりした。
ハンドリング、まだ苦手かもな……前は軽々できたけど。
いやまぁ、今できないことによって、ハンドリング力を底上げする機会に恵まれたんだと思えば、まだいいか。
「よくできたな。上手いじゃん!」
「ありがとうございます!」
「これ続けてれば、ドリブルも上手くなるよ。俺、このクラブ入ってから部活でキャプテンになれたんだ。だからお前もきっと上手くなる。もうすでに同年代の子よりも上手そうだし」
「あはは……」
それは前世の記憶があるからである。
それからは中高生たちのガチの試合を見て、見学は終了。
コーチから監督の方に話を通してくれるらしく、また来てほしいと言われた。
コーチのお眼鏡にはかなったってことでいい……のか? まぁハンドリングしかしてないから、アレだけど。
休憩時間とかに、1人でドリブルついてたりしてみたし、お兄さんたちに絡みまくってコツとか積極的に教えてもらいに行ったから、そこら辺が評価されると嬉しい。
そして翌週の土曜日……。
俺と父さんは、また宿利原の練習に来ていた。
今日は監督もいるらしく……安原コーチの隣には、優しげな顔のおじいさんが立っていた。
「初めまして!」
「初めまして、私は宿利原の監督をしている西崎肇です」
「東堂一斗です。7歳です!」
「元気でよろしい。お父さんも、こんにちは」
「こんにちは。今日は息子をよろしくお願いします」
今日はこのまま置いていかれる予定だ。
まぁ、普通の7歳なら駄々こねる場面かもしれないが、俺はそうじゃない。
今日ここでバスケをすることが、何よりも楽しみだったのだから。
父さんを見送り、バッシュを履いて監督とコーチについて行く。
体育館に入ると、どうやら今日は男女合同で練習をしているようだった。
この間までは一面が男子、もう一面が女子だったのが、一面に男女がいて、もう一面はぽっかりと空いている。
「一斗くん。今日はつらい練習になるけど、大丈夫かな?」
監督が優しげな顔のまま、俺に笑いかける。
「――はい。大丈夫です!」
つらい練習――ばっちこいだ!
そして俺は、この時の勢いをすぐに失速させることとなる。