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逆行したら強化選手に選ばれました。  作者: じらお
第一章 やりなおし
2/9

02

 幼児期はそれはもう暇の一言に尽きた。


 寝て、ミルク飲んで、あやされて、ミルク飲んで、あやされて、寝て、ミルク飲んで、あやされて。


 まぁ、ぶっちゃけると自分の機嫌は流石に取れる年齢なので、泣くことは少なかったように思う。


 そりゃあ、生理的な反応で泣くこともあったけれど、他に比べれば全然泣かない赤ん坊だったろう。


 まぁそんなことよりとにかく暇で暇で。


 暇すぎて、天井の皺の数を覚えてしまったくらいだ。アレちょっと怖い。顔に見える。


 まぁそんなこんなで赤ん坊の時代はすぎて……俺は、幼稚園児になった。


 幼稚園児になって変わったことといえば、もちろんめいっぱい遊んで、お菓子食って、遊んで、ご飯食べて、寝て、遊んで。


 とにかく動けること。


 俺にとって動けるってことは、ものすごーくありがたいことになっていた。


 彼は友達の智己(ともき)くん。


 小学校までは一緒だったが、なんの理由だったか、小5くらいの時に転校して行ってしまった男の子だ。


 別に前世で特別仲良かったわけじゃないが、あっちの生意気なハナタレ小僧と遊ぶよりは、彼のような大人しい子と遊ぶ方が精神衛生上良いので、友達となった。


「かずとくん、積み木しよー」


「智己くん。いいよ」


「かずとくん、ぼくね、赤色の積み木がいいなあ」


「いいよ。はい、どうぞ」


 うんうん、あっちのお友達を転ばせて喜んでるハナタレ小僧よりも、こっちの方が断然いい。


 智己くんは鬼ごっこも好きだが、それよりも絵を描いたり積み木をしたりする方が好きだ。


 俺は精神年齢分、アドバンテージがあるので、智己くんよりも当然積み木もお絵描きも上手い。


 それを妬むことなく、智己くんは俺を褒めてくれるのだ。


 38歳の上司に怒られてばかりの万年平社員に効く……。


「ともきくん、わたしとも遊ぼっ」


 おっと来たな。


 彼女は亜里沙(ありさ)ちゃん。


 どうやら智己くんのことが好きらしい。


 だが智己くんは俺のことが大好きなので、俺を目の敵にしている。


 ま、俺は大人なので、隣は譲ってやる。


 まあ、その反対方向に座るだけだけど。俺は優しいからな。


 しかし亜里沙、亜里沙。どこかで聞いたことあると思ったら、この子は中学の時に俺の友達と付き合ってた女の子だ。


 俺の友達は野球部のエースだった。1年生ながらに4番を取るくらい優秀な選手で、それはもうモテていた。性格も良かったし。足と脇は臭かったけど。


 女の子の審美眼は素晴らしいものがある。智己くんはこのままいけばとても好青年に育つだろう。


 まあ、小5で引っ越しちゃうんだが。


 そんな毎日で幼稚園生活は過ぎていき、年長さんのころ。


 俺はここで、前世では小学生の時にやっていたバスケと出会う。


 出会うって言っても、某エゴサッカー漫画とか、某ダンクバスケ漫画とかみたいな出会いじゃなくて、ただ父親が懸章で当たったバスケットボールの試合に行っただけの話。


 そりゃーもうかっこよかった。


 シュートはスパスパ入るし、ダンクもたまに見れたし、何より敵をドリブルで抜く瞬間。あの瞬間、たまんないだよなーって、思い出した。


 ふふっと見ていると、視線。……父親から。


「……おもしろいか」


「え、うん。かっこいいよね」


「……ボールを買ってやる。ゴールも」


「ちょっとあなた」


「へそくりから出すから大丈夫だ。庭をコンクリにして、ネットを張ろう」


「え……」


「どうだ。やる気があるなら、続けてみなさい。誕生日プレゼントだ」


「う、うん……」


 ……これは前世にはなかった変化だ。


 そんなに楽しげにみていたのか? 俺。


 ていうか、俺の父親そんなに一気に喋るんだ。初めて聞いたわ。


 ……ていうかうちの父親、へそくりとかあるんだ。

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