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単身赴任の夫がどうやら浮気しているらしい

作者: 猫の集会

 わたしの名前は、由奈子ゆなこ

 

 三十五歳。

 

 夫は、現在単身赴任中です。

 

 半年ほどの単身赴任なので、わざわざ子どもを転校させるのもかわいそうだよねって夫婦で話し合い、今回は夫だけ行ってもらうことになったんだけど…

 

 

 はじめの一週間は、毎日電話をくれていたのよ。 

 

 

 でも、日に日に電話の回数が減ってきてね…。

 

 

 わたしが電話をかけてもなかなか出ないわけよ。

 

 

 でさ、やっと出たと思えば、なぜか息切れしてるっぽい?

 

 

 何してたの?って聞いても、なんにもしてないよって言われちゃうの。

 

 

 なんにもしていないなら、すぐ電話にでれるだろうし、息切れもしないと思うんですけどねー?

 

 

 おかしい…

 

 明らかにおかしい…

 

 

 不審に思いつつも、夫の休日にまたも捜索電話をしてみました。

 

 

 すると、やっぱり息切れしている。

 

 

 何してたの?って聞いても…またも、なんにもしてないよ?の一点張り。

 

 

 しばらく夫と電話をしていると、夫の背後あたりから、ガッシャーンって大きな物音がしたの。

 

 

 すると夫は、

「もー…なんでこんなことするのー?」

 って、明らかに誰かと会話してるっぽい?

 

「え?部屋にだれかいるの?」

 

 この質問に夫は、

「えっ?ま、まさか…い、居るわけなくない?もー、やだなぁ。ものが落ちただけなんだよー。ハハっ」

 って、誤魔化された。

 

 

 まさか…

 

 まさかわたしと電話していたからって…嫉妬して女が暴れた…んじゃ…。

 

 

 夫は…夫は、確かに寂しがりやだけど…だからって、浮気することなくないですか?

 

 

 もう、これはハッキリさせないといけませんね‼︎

 

 なので、次の週わたしは夫の単身赴任先に突入いたしました。

 

 

 そして…玄関の前までくると、何やら話し声がしたんです。

 

 

「もーぅ、くすぐったいよ〜♡やめて〜♡」

 ってさ。

 

 ほうほう…。

 

 なんともお楽しみの最中じゃありませんか。

 

 きっと部屋のどこかの窓あいてますよね?

 

 こんな声ダダ漏れで…ほんとおバカさんじゃありませんか…。

 

 

 そんなおバカさんに、わたしは今から体裁を下します‼︎

 

 インターホンを鳴らすと、はーいとこたえる夫。

 

 

 さあ、どうなることでしょうね?

 

 

 画面でわたしを確認すると、夫は

「えっ?由奈ちゃん…な、な…どうして…え、待って、今あける…から…」

 というと、何やら部屋からバタバタと走る音がして、それから少ししてドアがあいた。

 

 

 …

 

「あ、えと…ひっ久しぶりだねー。今日は、いきなりどうして…」

「とりあえず、中に入ってもいいかしら?」

 中を覗いた限りは…だれもいないわね。

 

「あ、はい…ど、どうぞ」

 

 夫は、なぜか敬語でわたしに対応してきた。

 

 

 部屋は…とくに女性の物で侵食されては、いないわね。

 

 

 いったいどこに隠れているのかしら…?

 

 まぁいいわ、少しおよがしてみることに致しましょうかね。

 

「えと…そ、そうだ!お茶、お茶を出さないと…って…お茶ないや。あ、一緒に外で食事でもしよう!そうだよ!それだ!いこ!」

 

 夫は、ひらめいたと思ったんでしょうね。

 

 でも、そんなわけにはいきません。

 

「お茶なんていいよ。それより、ちゃんと掃除してる?今からわたし掃除しようか?」

 と、あたりを見渡した。

 

 

 すると、夫はすかさず一つの部屋に目を向けた。

 

 

 あー、なるほどねー。あの部屋に女隠しているんだぁ。

 

 

 靴とか持って隠れているのかしら?

 

 って…

 

 

 …

 

 

 わたしは、夫の部屋でとあるものを拾ったわ。

 

「なにこれ?」

「こ、これは…そのく、薬…だよ…」

「へー、なんの?」

「いや、それは…風邪ひいて…ね?」

「ふーん、こんな錠剤なんだ?いつも粉薬なのにねぇ?」

「あ、うん。売ってなくて…こ、これ飲んでて…」

 

 

 …

 

 

 薬…?

 

 

 なんで薬が落ちているのだろうと、しばし考えていると、例の部屋からカタンって音がなってね…。

 

「え?何?」

 って、わざとらしく聞いてみたの。

 

 

 そしたら、

「か、風かなぁ?」

 なんて意味のわからないことを言い出す夫。

 

 

 そして、何やらガリガリ音がしてね…。

 

 なんか…そんなにガリガリするって…尋常じゃありませんよね?

 

 この間は、なんか物を壊していたような感じだったし…。

 

 対面するのが、なんだか怖くなりつつあるのよね…。

 

 

 えと…

 

「なんか、あの部屋からガリガリ音がするわね。どういうこと?」

 

 わたしが問い詰めると、夫は観念したかのように、

「実は…ずっと隠していることがあって…単身赴任終わったらそのまま一緒に住みたい…っていうか、暮らしたいっていうような、運命的な出会いをしてしまって…」

 と、言うんですよ?

 

 物壊されたり、部屋ガリガリするのに一緒に住みたいですって?

 

「じゃあ、その女連れてきなさいよ。話し合いしましょう」

 

 …

 

「えと…女の子…いるにはいるけど…三人で話すのは…ちょっと言葉がうまく伝わらなくて…」

 

 

 え?

 

 それって日本語話せないってことかしら…?

 

 言葉が通じないのに、運命的な出会いして…そのまま一緒に暮らしたいんだ?

 

 

 …もう、そこまで好きになったなら仕方ないわね。

 

 こればっかりは、どうしようもありません。

 

 

「言葉通じなくてもいいわよ。あわせてよ」

 

 その言葉に夫は、渋々例の部屋をゆっくりあけた。

 

 

 すると…

 

 勢いよく猫ちゃんが飛び出してきたじゃありませんか‼︎

 

 

 

 えっ⁉︎

 

「なんで猫が…」

「出会いは、偶然だったんだ。」

「ん?もしかして、猫と運命的出会いしたの?」

「そうだけど?」

「じゃあ、あの落ちてた薬は?」

「それがさー、この子拾ったときちょっと軟弱で…病院から薬出てるんだけど飲まなくてさ…」

 なんていうのよ…。

 

「呆れた…そもそも砕いて餌と混ぜなさいよ。治るものも治らないじゃないの。」

「あー、そうなのか」

 

 …

 

 わたしは、少しホッとした。というか、夫らしいなってクスッと笑った。

 

「単身赴任終わったら、この子も含めて一緒に暮らそっか」

 

 その言葉に夫は、目を丸くしたかと思えば、今度は万年の笑みで

「え、いいの⁉︎ありがとう‼︎」

 と喜んでいた。

 

 

 そして数週間後

 

 

「ただいまー♡」

 と、猫ちゃんと夫が無事に帰宅いたしました。

 

 

「おかえりなさい♡」

 

 

 こうして、新しい家族が増えました♡

 

 

 

 おしまい。

 

 

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これは正しく泥棒猫!
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