8.五日目の出来事――後編
五日目の夕刻
ようやく私は心を決めた。この部屋割り指名で、アメンボ、ピイスケ、シノの三人から誰を選ぶべきかを……。
M「アイリスさん? 今晩のお相手をご指名ください」なかなか私が発言をしないので、痺れを切らしたミスズがうながした。
I「はい、では……、ピイスケさん――でお願いします」
はっきりとした声で、私は告げた。
P「えっ、俺ですか? ……わかりました」
俯きながらピイスケが返事した。
M「では、残ったシノさんとアメンボさんが同居となります」
五日目の部屋割りは以下のとおりである。
(春の間)アイリスがピイスケを指名した。
(夏の間)シノとアメンボが同居した。
本日の死者は、リョウタ(夜間死)、チイ(夜間死)、エリカ(集団暴力死)の三人だ。人狼でただ一人の生き残りであるアイリスは、もうパスができない。
狩人たちの到着まであと残り三日である。
五日目の夜
春の間に入ると、まず先にピイスケがソファにどっかと腰をおろした。
P「上手くやりましたねぇ。畜生! もう少しだったのになあ……」
いかにも残念そうな口調でピイスケがぼやいた。
I「運が良かっただけです。最後の部屋割りの指名権が、たまたま私に転がりこんできただけ。
そうでなければ、皆さんにもチャンスはあったと思います」
私は本音を漏らした。
P「なぜ、昨晩に俺を襲わなかったの?」
I「昨日は確信がなかったから……」
P「そうですね。チイさんが亡くなったために、あやふやだったいくつかの疑問が今日になって明らかになりましたからね。生き残った四人はみんな気づいているでしょう」
I「じゃあ、四人ともお互いの職業がわかっていると?」
私は訊き返した。
P「ですね。シノばあさんの職業がちょっとあいまいだけど、多分狂人でしょう。だから、みんな確定!」
I「だとしたら、最後の部屋割りの指名権を獲得していれば、四人全てに勝利があったと?」
P「そのように思いますよ。
あなたが指名権を得た時には、俺を指名するのが正解です。すなわち、あなたはきちんと正解を出しました。
もし俺が指名権を得ていれば、シノばあさんを指名すれば勝ちですし……」
悔しげなピイスケの声が、狭い春の間に朗々と響いた。
P「シノばあさんが指名権を得れば、アメンボさんを指名すれば、人狼チームの勝利ですよね。
そして、アメンボさんが指名権を得た時には、ええと、これが一番ややこしいよな……。彼はまず俺を指名します。そうすれば、あなたとシノばあさんは同士討ちとなり、六日目の生き残りはアメンボさんとアイリスさんと俺の三人になります。お互いの職業はバレバレですから会議での議論は無意味です。あとは集団暴力投票で勝負が決まります。俺が吊るされればアメンボさんの勝ちだし、それ以外の人が吊るされれば俺の勝ちになりますね」
ピイスケは淡々と語った。
I「じゃあ、そろそろ夜も明けてしまうから……」
P「どうぞ、おかまいなく」
私はピイスケに襲いかかった!