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続、小説・人狼ゲーム  作者: iris Gabe
出題編
7/10

7.五日目の出来事――前編

 五日目の朝


 結局、昨晩の私は同居人を襲わなかった。すなわち、私のパスは消費されてしまった。したがって今日以降、私は否が応にも同居人を噛まなければならなくなったのだ。朝の広場にチイの姿はなかった。そして、そこにはチイと同居したエリカの姿があった。

M「それでは、昨晩の犠牲者のお名前を申します。リョウタさんとチイさんのお二人です」

 実にあっという間であった。あれだけ有利だった人狼チームはもはや風前のともし火で、私一人を残すのみとなってしまった。しかも、私のパスはもう残っていない。

 広場にいるほかの生き残りのメンバーに私は目を移した。おしゃれで活発な女性のエリカ、スマートな青年のアメンボ、一見穏やかな老女シノ、見かけは地味だが行動は大胆な青年ピイスケ……。果たして彼らの正体は?

 エリカだけは断言できる。彼女は能力を使い果たした祈祷師だ。襲えば即座に殺すことができる。でも、他の三人の正体は? 全くわからない……。私は途方に暮れていた。

 とにかく、これまでの参加者の行動からなにか手がかりを探ることができるはずだ。私はもう一度ノートに目をとおすことにした。


M「生き残りの皆さん? お昼の会議の時間に入っていますよ。なにか議論をしてください」

 私たち全員が考えこんでいるので、心配したミスズがうながした。

E「仕方ないわね。じゃあ、弁明は……、私からいくわね。

 チイさんは狂人よ。彼女は自殺したわ。以上」

 エリカはぶっきらぼうにいった。

A「では、僕の番ですね。僕の部屋でもリョウタさんが亡くなりました」

E「そうよね、一体死因はなんだったのかしら?」

 エリカが質問した。

A「霊視で殺しました。リョウタ君の正体は妖狐です!

 そして、僕は霊能者です!」

 アメンボの驚くべき発言には、さすがにどよめきが起こった。もし、本当にリョウタが妖狐であれば、第三勢力はここで途切れたことになる。あとは人狼と村人の間の決着を残すのみだ。

 しかしアメンボの発言はどこまで信用することができるのだろうか?

E「ちょっと待ってよ。アメンボさん――あなた、自分が霊能者だっていったけど、じゃあ、初日の夏の間における事件の真相を知っているってことよね」

A「もちろんです。もう妖狐は死に絶えました。だから、僕は村人側として人狼たちと戦うだけです」

E「そう……、なら教えてもらおうじゃないの。さあ、夏の間で起こった事件の真相をいいなさいよ」

 エリカが問いつめた。アメンボは落ち着き払っていった。

A「では、申し上げます。ドロシーさんは……、牧師でした!」

 やられたと、私は思った。アメンボはどこまで真相を知っているのだろうか?

P「ふむふむ、ドロシーさんが牧師ということは、グレイさんは狼で、クイーンさんが狂人なのですね」

A「そのとおりです。そして、フォックスさんは……、狂人でした」

P「はははっ、こりゃ傑作だ。クイーンさんは狂人の目の前で自殺をしてしまったんだ」

 ピイスケが大声をはりあげた。

A「クイーンさんは結果として失敗していますが、作戦としてはすばらしかったと思いますよ」

 アメンボがフォローした。

S「じゃあ、狂人が二人も亡くなっているということは、私たち五人の職業構成は一体?」

 珍しくシノが動揺していた。

A「妖狐は消えました。僕たち五人のうちで職業がはっきりしているのは、僕が霊能者であることのみです。

 そして、残った四人の方々のうち、どなたかは恐ろしい人狼です!」

P「人狼が二人生き残っている可能性は?」

E「それはないわ!」

 即座にエリカが断言した。

A「ふふふ、とすれば、僕たち五人の構成ですが、村人側が三人で人狼側が二人ということになりますね」

P「なぜ、断言できるのですか?」

A「今回のゲームの参加者は十三名。その中に三名の人狼がいました。

 人狼側の人間が最初から過半数の七名以上いることはまず考えられないので、必然的に狂人は三人までしかいないはずです。

 すでに狂人は二人が死に絶えていますから、残りはたったの一人。その人も生き残っているのかはっきりしません。

 いずれにせよ、人狼側の生き残りは多くても二名だということです」

 アメンボは鋭い推理を展開した。

E「そうね。だったら、私たち村人側が勝利を収めるためには今後どう行動したらいいのかしら?」

A「エリカさん、僕はまだあなたが村人側であると認めてはいませんよ。

 まあ、それはさておき、村人側が勝利を収めるためには、人狼かまたは狂人を集団暴力リンチで殺すことが確実だと思います」

 アメンボが冷たく笑った。

E「なるほどね。よくわかったわ。それじゃあ、次の質問よ……。

 私たちの中にたった一人だけ生き残っている人狼は……、一体誰なのさ」

A「さあてね、それを推理するのは皆さんのお仕事じゃないんですか?」

 アメンボはあっさりとかわした。

 混乱と恐怖のために、私はなにもしゃべることができなかった。

M「皆さん、五日目の会議は終了です。では、夕刻の投票に移りましょう」

 ミスズの透き通った声が、名も無き村の集会場に響き渡った。


M「投票の順番を申し上げます。シノさん、ピイスケさん、エリカさん、アメンボさん、アイリスさんの順番で投票をお願いします」


 私の心臓はバクバクと音をたてていた。大丈夫よ、アイリス、あなたが吊るされることはあり得ないわ。なぜなら、昨晩同居人が死んだ人物は、アメンボとエリカの二人もいるのだから。

 自分にこういい聞かせてみたものの、不安な気持ちを解消することはできなかった。

 シノが一歩前に進み出た。

S「エリカさんに投票します」

 シノははっきりと発言した。

 続いてピイスケがいった。

P「アイリスさんです!」

 ええっ、なんで、私が……? 私は事実を受け入れることができなかった。

 エリカが前に出た。

E「アイリスさんよ」

 エリカは勝ち誇ったようにいい切った。

 そして、アメンボが出てきた。彼が私の名前を宣言すれば、その時点で人狼側の敗北が確定する! 絶体絶命……。

 私は目を閉じてアメンボの発言を待った。

M「アメンボさん? どうぞ、投票をしてください」

 アメンボは長い間考えていた。やがて、大きく一呼吸すると彼はいった。

A「僕は……、エリカさんに投票します!」

 場内がどよめいた。とにかく、私は一命を取り止めたのだ。私は一歩前に進み出た。

I「エリカさんに投票します」

M「はい、以上で投票は終了です。本日の集団暴力リンチの犠牲者はエリカさんです」

 エリカは呆然と立ち尽くしていた。彼女は硬直してしゃべることができなかった。生き残った四人の影が可哀相なエリカの周りをゆっくりと取り囲んだ。やがてミスズが合図の一声をあげると、四人の輪が中央のエリカに向かって縮まった。おぞましき集団暴力リンチが執行されたのだ。



 五日目の夕刻、そして――読者への挑戦


 安心したのか私の思考は少しだけ冷静になってきた。

 すると……、そうか! なんで今まで気づかなかったのだろう。

 ここに来て私は、ノートの中に潜んでいた重大な事実を発見した。もちろん、それだけで全ての真相が解明できたわけではないが、少なくとも真相の究明のための極めて重要な手がかりを私は得ることができたのだ。

 しかし、これで……果たして間に合うのだろうか?


M「さあさあ、生き残りは遂に四名になりました。では、部屋割りの順番を決めますね。ええと、最初がアイリスさん、そして、シノさん、アメンボさんの順番です。――ああっ、そうか。残りは四名ですから、アイリスさんが指名しちゃえば部屋割りは確定ですね。それでは、アイリスさん、ご指名お願いします……」


 やった! 私は4分の1の確率を征して、部屋割りの指名権を得た。これは恐らく最後のチャンスであろう。私は三人の人物から今晩の同居人を一人だけ指名することができる。

 三人は、アメンボ、ピイスケ、そしてシノである。私は昨晩ピイスケ、シノと同居しているが、その時は三人部屋であり、今晩は二人部屋となるため、ピイスケ、シノを今晩の同居人として指名することは許されている。すなわち、私はアメンボ、ピイスケ、シノの三人の誰を指名してもかまわないということだ。

 そして、この三人はいずれも高い推理力を持った人物であろうことが、これまでの彼らの発言からも感じとれる。

 私にはもうパスが残されていない! 私は盲目的に同居人に襲いかかるしか選択肢はない。果たして、私が選ぶべき同居人は誰であろう?


 さて、ここで読者の皆さまへの出題です。

 この五日目夕刻の部屋割り指名で、私が選ぶべき最善の人物は誰でしょう?

 (1)アメンボ

 (2)ピイスケ

 (3)シノ


 私は人狼側の勝利を目指しています。ゲーム終了時刻は八日目の夕刻、つまり八日目の集団暴力リンチが行われるまでとなります。

 この章までで、出題編は終了です。このつづきからは、解決編となります。

 まだ、推理がまとまっていない読者のみな様は、『読者への挑戦』の章から前に、もう一度立ち戻って、考えていただけると、本編がもっと楽しめると思います。ぜひ、3人の人物の中から正解を見つけ出してくださいね。

 iris Gabe

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