吸血鬼の少女、旅に出る。(3)
「で、アナタ。今のリタどう思う?」
私ことリタの母親のシノンは部屋のかたずけをしながら夫のデュラに話しかけた。
デュラはとても体格がよく顔はとても男らしい。銀色の髪をしているので銀色の獅子と巷では呼ばれているそうだ。そして私の愛する旦那様。まぁ私より弱いけど・・・元々デュラは勇者パーティーの魔法剣士をしていて私も何度か戦ったことがある。その縁で付き合うことになり今に至るわけだ。
「ああ、なんだ。リタがどうかしたのか?」
「今、あの子どれくらいのレベルで強いのか気になったからかしら」
「そうだな」
デュラは一瞬悩むとそのままニカッと笑うと頭を掻いた。
「少なくとも俺よりは弱いが・・・追い抜かれるのは時間の問題だろうよ」
「アナタ基準じゃなくてね。この世界の総合的によ」
「ハハ。すまねぇ。そうだな冒険者ギルドのランク的に言えばもうSランクは行っていると思う」
冒険者ギルド・・・確か暴れた魔物の討伐とか雑用とか治安維持をしている団体よね。
「その冒険者ギルドのSランクってすごいことなのかしら」
「お前・・・魔法とか魔族関連のこと詳しいのにこっちのことはあんまり知らないんだな。かつて知将と呼ばれていたお前が」
デュラは呆れた目でこちらを見て両手を胸あたりで広げヒラヒラさせて彼はどうやら体全体で呆れを主張しているようだ。
「正直言って興味ないもの。そっちのことはあなたが全部やってくれるっていうからこっちに移り住んできたのよ?」
私もデュラに呆れた目で見返すと彼はあきらめたかのように両手を上にあげた。
「負けだ。負け。俺がお前に口げんかで勝てるわけないわな。で、突然そんなこと言ってきたということは何かあるんだな」
「ええ。明後日リタを旅に出すことに決めたわ」
デュラは目を大きく見開いた。まさかリタを旅に出すとは思ってもいなかった様子ねこれは。
「早くないか、まだ15歳だぞ。それにまだ甘えられたい」
「それは旅から帰ってきてからでもできるでしょ」
「だけどよ、もしかしたら旅から帰ってきたリタは別人みたいになっているかもしれないんだろ」
「それに関しては大丈夫よ」
私はデュラの近くに寄って下から彼を見上げるように近づいて、あざとく笑った。
「だってリタは私たちの子って言う事実は変わらないもの。あなたが心配することはないわよ」
「ああ、そうだな。だってリタは俺たちの娘だもんな。信じてあげるのが親ってもんだ」
デュラはそう言うと両手で私を抱えが上げると至近距離で二カッと笑った。シノンはデュラの満面の笑みを至近距離で受けたことにより顔が一気に赤くなった。
っっまぶしい。さすがにこれは攻撃力が高すぎるわ。
「それじゃあ私たちは遠くからリタのことを見守っておきましょうか」
「ああ、そうだな」
デュラは私を抱えたまま外に出ると空には満面の星空が広がっていた。月はほんの少しだけ欠けていて明日には満月になるだろうと予測できる。
「いい夜ね」
「ああ、そうだな」
「でも、どうして外に」
デュラは私をゆっくりと地面に降ろすと空を見上げた。
「お前、顔に出してないつもりだろうが少し不安そうな顔になってたぞ」
「え、嘘」
私は顔をぺたぺたと触って自分が今どういう表情をしているか確認しようとするがあんまりよくわからない。
「やっぱり面白いなお前。そう心配するな。空はいつでも俺たちをつなげてくれる」
「そうね。遠くからでもリタを見ることができる魔法を作ればいいものね。明日はいい満月になりそうね」
「ああそうだな」
そして二人は夜空を見上げた。後ろからテクテクとマンドラゴラ君3世は歩いてきてそのまま二人の隣に立ち。二人と一匹?は静かに月を眺めていたのだった。