プロローグ2
俺はとあるブラック企業に勤めていた。勤めてきて五年。俺はとうとうやめる決心をし、上司に辞表を叩きつけた。
この会社を辞めて子供のころから憧れていた特撮に関わる仕事をしよう。何年かかってもいい。ブラック会社にいるより何倍もマシだ。
そしていざ会社を出ようと階段を降りようとした瞬間、誰かが捨てた缶で足を滑らせ転落した。
「俺は……死んだのか……」
あっけないもんだ。やっと地獄から抜け出して明るい未来ご待っていると思ってたのに、まさか死んでしまうとわ。
瞬間、一筋の涙が流れた。
「あれ……?」
止まらなかった。目の前に人がいるというのにかっこ悪く泣きまくった。
銀髪の女性は何も言わず俺が泣き止むのを待ってくれ……。
「あれ、私のせいなんです」
なかった。
「…………え?」
「いや、あの缶私が置いたんですよ。あなたを死なせるために」
「………………え?」
「しかも私の手違いで、あなたは本来死ぬべきでないのに殺してしまいました」
………………。
「お前ふざけんなよ! 何しでかしてくれてんだ! もう一回土下座しろやごらぁぁぁぁ!!」
俺が掴みかかると女は負けじと言い返す。
「嘘つき! さっき何言われても怒らないって言ったのに! 私謝ったじゃない! 女神にむかって失礼よ!」
「……女神?」
「そ、そう女神よ! 私の名はイザナ。すべての生命の源、誕生の女神イザナよ!」
「あっそ」
「それだけ⁉」
死後の世界って時点である程度予想はできるし、出会った瞬間土下座からの失態の暴露、子供っぽい言い訳。俺の中で目の前の女神の威厳は早くもなくなっている。
「ま、まあいいわ。東幸太郎さん、あなたはもう死んじゃったけど、特別に二つの選択肢があります。天国に行くかあなたがいたところとは別の世界……異世界に行き人生を続けるか。好きな方を選んでください」
「……俺知ってる。その世界には魔王がいてその魔王を倒してこいっていうんだろ?」
「いえいえ、そんなこと言いませんよ。なにもかも自由です」
「……ほ~ん」
それなら悪くないか。だが一つ気になることがある。
「で、あんたはどうなんの?」
「え?」
「人殺しといて何のお咎めもなし? それはありえないだろ」
「え、え~とそれは……」
「イザナ先輩には東幸太郎さんのサポートを行ってもらいます」
突然凛とした声が響いた。声のした方を見てみるとそこには紫髪の幼女が立っていた。
「先輩は今回の件の他に過去もう一件同じようなことをやらかしてますし、何かしらの罰を設けないと」
「話の分かるロリっ子だな。あんたが責任者か?」
「人間にこんなため口を言われたのは初めてですが……。まあそんなところです。私は心の女神カイナ、以後お見知りおき」
「さっきの会話のせいで俺の中の女神の威厳ってのは地に落ちてるからな。ま、あんたはまともそうだけど。知ってると思うけど俺は東幸太郎だ。よろしく」
「それはどうも。……無駄話はこれくらいにして本題に戻りましょうか。見たところ異世界行きを希望のようですね」
「ね、ねぇカイナ? 今サポートとか言ってたけどそれってどういう意味? ね、ねぇなんで無言で近づいてくるの? ねぇ怖いんですけど」
カイナは突然俺とイザナの腕をつかむと。
「仕事は早く終わらせたいので。それでは、行ってらっしゃいませ」
まるで書類を提出するかのように俺たちを転送した。