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ライフル暴走  作者: 河田 げんずい
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5章 真犯人の正体は?①

次の日、二人とも署に出勤した。

9時が警察署の出勤時間だ。筑波はいつも8時という早い時間から出勤しており、反対に海道は8時55分に出勤してくる。遅刻しなければいつ出勤しても問題なしというのが彼の持論だ。しかし、今日は筑波と同じ8時には署に出勤していた。事件の事が気になっていたからだ。

入り口の所でばったり筑波と出会う海道

「この時間に会うのは初めてだな。海道」

「ああ、確かに。この時間に来る為に早起きしてしまった。目覚まし時計をいつもより1時間も早くセットしたんだぞ」

と海道は胸を張った。。

「いや、そんなの自慢にならないって、だいたい君は来るのが遅すぎるだよ。8時55分って、学生じゃないんだから。もっと早く来れないのか」

筑波にとってみれば、早く来るのは当然と思っていた。だから、いつもは8時出勤だ。この時間に来ているのは、署でも数人しかいない。

「朝起きるのがしんどい。実は俺は低血圧なのだ」

「うそを言うな。この間の健康診断。血圧120だったと私は知っている」

警察でも一般の企業と同じく健康診断が毎年ある。警察は特に危険が伴う仕事なので、健康診断は特に重要視されている。

「い、いつの間に。人の健康診断の結果、いつ見たんだ。盗み見るとは趣味が悪いぞ」

「何を言っている。今年も問題なしだと言って、自慢しにきたのは君ではないか」

海道は少しの間、考えた。すると、確かにそんな事をした事を思い出した。

「た、確かに。しかし、だな・・・えっと・。とにかく、今は事件のことが先だ。とにかく、田中の所に急ごう」

すぐさま、話題転換をして逃げる海道。

筑波としては、この話題を続けて、彼の生活態度を変えたかった。しかし、海道の言うとおり事件の方が今は気になる。二人はすぐさま、田中の所に向かった。


地下1階についた。もちろん、行く先はITチームの部屋だ。

部屋を空けると、田中だけだった。他には誰もいない。

「おはようさん。」

海道が声をかける。

顔を見ると、目の下にクマが出来ていた。あきらかに疲れているのがすぐにわかった。

田中は返事をするどころか、体をびくっとさせた。

「え、いつの間にいたのですか。二人とも。いつこの部屋に入ってきたのですか」

「ついさっき入ってきたのだが、気づかなかったのか」

「全然。さすがに疲れがたまっているのかも。昨日は結局、1時間仮眠をとっただけで、あとはずっとパソコンとにらめっこでしたから」

「その成果は出たか」

「もちろんです。やっと真犯人のIPアドレスがわかりました。それだけでなく、名前とか簡単な経歴も調べていますよ」

加藤は自信たっぷり答える。心なしか胸を張っている様に見えた。

「それで、真犯人は誰なんだ?」

とこれは、筑波。身を乗り出して聞いてくる

待ちに待った真犯人の名前だ。当然、筑波にとって、今、一番聞きたい情報だ。

「犯人の名前は加藤武。一人暮らしなので、おそらくパソコンは本人しか使っていません。過去に犯罪歴はありません」

「やはり、こいつはコンピューターのスペシャリストか?」

ここが一番気になるところだ。今回の犯人なら必然的にコンピューターに詳しくないといけない。もし、そうでなければ、犯人ではないのだ。

「ええ、めちゃくちゃ優秀な人物です」

「なら、なぜ今まで捜査で容疑者リストに一度も名前が載らなかった。加藤武なんて名前は、容疑者リストには載っていない。

念のために、手元にある容疑者リストをもう一度見てみた。やはり、加藤武の名前は載っていない。

「それはですね。彼は日本人ではありますが、日本には住んでいないからですよ」

「ということはあれか?海外で働いているということだ」

「そうです。彼が働いているのはアメリカの企業です」

「なるほど、だからか。どうしても日本で起きた犯罪だと日本在住の日本人の中に容疑者がいないか調べてしまうからな。海外に住んでいる場合、まず調べない。前科でもあれば別だがね。たぶん、加藤には前科がないのだろう」

「そのとおりです。前科はありませんでした。ちなみに働いているのはフローランス社です」

知っているのがまるで当たり前の言うに田中は言ったが、二人ともその名前に聞き覚えがなかった。

「知らない会社だな。海道。知っているか」

「いや、俺に聞くなって。どうせ、コンピューター関連の会社なんだろ。俺が知るわけないだろ」

「皆さんが知らないのも無理はありません。パソコンセキュリテイ会社ですからね。だいたいこういう会社は規模の割に世間には名前を知られていませんから。広告とかもあまり出していませんしね」

 広告を出すのは主に消費者を相手に商売している会社が多い。企業相手に商売している会社が広告を出してもあまり意味がない。

「ウイルス対策のセキュリテイソフトを作っている会社か?」

「違いますね。海道さん。この会社は依頼した会社のセキュリテイーが万全でないか調査する会社なのです。調査の結果、問題がなければ、よし。問題があれば、問題点を指摘して、改善を促すのです。

 例えば、調査を依頼した会社は、自社の顧客情報やら新商品の情報をセキュリテイーで保護しているとします。具体的に言えばログインパスワードがなければ、データベースに入れないようにしているのです。しかも、ログインパスワードは社員しか知らないですし、ログインに2回連続で失敗すると、完全にログイン不可能になるわけですよ。これなら、やみくもにパスワードを入力し続ける方法で、セキュリテイーを突破する方法は使えませんよね」

「そうだな」

海道はうなずく。しかし、海道はコンピューターに疎いので、完全には理解していなかった。

「しかし、あるんですね。これが。この場合でも、内部の人間になりすまして電話をかけて聞くのですよ。パスワードを忘れたとか言って。パスワードは基本的に、紙に書いたりしないように教えている会社がほとんどなので、実際、間抜けな社員が忘れる事もあるわけですよ。

 用心深い、情報部門の人間なら、ここで、電話をかけてきた人間が本当に自社の人間か確認しますが、セキュリテイー意識の低い人間やら会社の場合、ここであっさり教えてしまうのですよ。大切なパスワードを。会社のパソコンはネットにつながっているから、これで、情報は見放題。盗み放題です」

「だったら、ネットにつながなければいいんじゃねえか?これならセキュリテイー万全だろ」

「確かにそうですが、ある程度の規模の会社って、いくつかの拠点に分かれています。たとえ、東京に本社があっても、大阪やら名古屋とか福岡に支店があったりしますね。顧客サービスのために、個人情報を利用する機会は必然的に存在します。例えば、顧客にダイレクトメールなどのEメールを送る場合、顧客の住所やらメールアドレスが絶対必要になります。

 さらに言えば、新商品を作るには材料やデータがいります。それらを提供してくれる会社とのデータのやり取りも存在しているのでネット上につないでいた方が便利です。もちろん、しっかりした会社だとネットから侵入されないように二重三重に対策をしています」

「どうしてもよそとのやり取りは発生するなあ。確かに」

「パソコンのセキュリテイー会社とはこんなものです。会社の規模はいろいろですが、フローランス社はその中でもトップクラスです」

「あまり、話が飲み込めなかったけど、パソコンのセキュリテイー会社ってのは、防犯訓練の犯人役をやってくれるような役割なんだな。加藤はいつも依頼された会社のパソコンにハッキングをしているから、その手の技術に長けていた。だから、今回の犯行も手際よくやれたわけだ」

「そういうことですね。ただ、断っておきますが、その手の会社の人間が皆、犯罪を犯しているわけではないですね。入社時に、徹底した身元調査が行われます。前科のある人間はもちろん駄目ですし、それに近い事をしていた人間も入社できません」

「俺ら、警察でも警察学校に入る時に、似たような事しているらしいから、同じ事か」

と海道は言う。

海道の場合でも当然身元調査は行われた。海道はキャリア組なので身元調査は行われた。一見すると、学生時代、暴力事件などをおこしていそうな海道だったが、犯罪は起こしていない。ただ、反抗的な態度ゆえに先生からは大変評判の悪い生徒で通っていた。

警察学校に入る時の調査で、この点が問題視された。しかし本人の射撃資質が異常に高かった為に警察学校に入れた。その頃の日本では射殺は既に法的にOKになっており、当然射殺ショーも実施されていた。優秀な狙撃主は必要だったのだ。

海道自身はどうして、自分がなぜ警察学校に入れたのかを知らない。

「そういうことですね。でも、そういう身元調査をしても、犯罪者は出てしまったというわけか」

「ただ、この加藤が本当に真犯人かどうかだな。問題は」

と海道は言った。

「確かにな。今回も真犯人の罠で、捕まえてみれば、実はまたまた誤認逮捕でした。では、しゃれにならん。正直、また幹部の方々からのお説教はしんどいものがある」

と、これは筑波。

「いや、それはお前が怒られ慣れていないからだ。俺のようにしょっちゅう怒られていると、慣れるとは言わないまでも、そこまで精神的ダメージをくらわなくてすむ」

「君のような毎日を私が過ごせば、ストレスで胃がなくなるよ。あと一つ疑問だが田中は海外在住なのだろ。捕まえるには、海外の警察にやってもらうしかなくなる」

海外在住だと手続きがややこしくなる。梨川はアメリカ在住なので、当然、逮捕にはアメリカの警察の協力が必要だ。アメリカは同盟国なので身柄を引き渡さないとは言わないだろうが、仮に引き渡さないと言われ場合は粘り強く交渉しないといけない。。

「それは問題ありません。ここ3週間ほど、加藤は日本に戻ってきているのです。加藤はアメリカの自宅以外に日本にも家を所有しているのです。先ほど、言ったIPアドレスもその家のパソコンのものです。ちなみに、加藤の写真がこれです。

田中は自分のパソコンのマウスを操作した。画面には、一人の写真が出来た。ごく普通の男性の顔で、これといった特徴のない平凡な顔だった。室内での仕事のせいか、肌は色白だ。

「こいつは・・・まさか!?」

驚きの声を海道は上げる。


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