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ライフル暴走  作者: 河田 げんずい
15/21

3章 筑波の作戦①

数日後の事。人気ニュース番組「ニュースマスター」は今日も放送している。人気アナウンサーの芝哲夫はテーブルの中央に位置取り、原稿を読みあがる。

「3週間前に起きた射殺ミス事件は射殺担当者 海道氏のヒューマンエラーではなく、使用した狙撃銃EPS―3が原因でした。これには雨・強風・気圧の変化による弾道ズレを防ぐ為に弾道補正システムが組み込まれていました。しかし何者かによって、弾道補正システムが改変されていたのです。プログラムにウイルスが仕組まれていたのです。犯人などについては警察が全力をあげて捜査中です」

芝は淡々と事実を述べる。

もちろん、警察は以前からこの事を知っていたが、今までこの事実を伏せていた。

詳しい情報がわかるまでに、中途半端に情報を一般市民に流してしまうといたずらに市民を混乱させるだけと考えたからだ。

その後も芝の説明は続く

「このような事を再び起こしてはいけません。そこで、警察は新システムを導入しました。

毎日夜に警視庁の本部サーバーと各警察署の狙撃銃とをネットワークでつなげます。その際、狙撃銃の弾道補正システムに異常がないか調べます。もし、異常があれば、すぐさま、本部サーバーから新しくシステムを再インストールします。これにより、今後問題はおこらなくなります」

「なるほど。でも、本部サーバーのデータを書き換えられたら、おしまいなのではないですか?」

と近くにいる男性が発言した。この男性はプロ野球選手の五十嵐信吾。今回のゲストとして呼ばれている。

「大丈夫です。本部サーバーの方は各警察署のパソコン以上の最新鋭のセキュリテイシステムを導入しています。そのシステムの製作は鴨井システムソフト社です。たとえ、一流のハッカーでもこれを打ち破る事はできません」

鴨井システムソフト社はセキュリテイーシステム開発が得意な会社だ。日本の企業だが、日本だけではなく世界の企業および国を相手に商売をしており、絶大な信頼を勝ち得ている。

「なるほど、それはすごい。これなら、安心ですね」

「はい。では、次のニュースです」

芝は次のニュース原稿を読み始めた。

これは全国放送。日本中に放送されている。


警察署で海道と筑波は「ニュースマスター」を見ている。

「これで食いついてくれれば、いいのだが・・」

筑波は腕組みをしながらつぶやいた。

罠ははったものの、見ようによっては露骨な罠な気がする。

警察がわざわざ新セキュリティシステムの詳しい説明を一般市民にするわけなのないのだ。注意深い犯人なら、これに気づいてハッキングをしない可能性がある。

「なあ、筑波。この番組って、日本限定で海外には放送されていないのだよな」

と海道が聞く。

「ああ、そうだ。ただ、ネットのニュースにも掲載されているので海外の人間が知る事もできる。海外の人間が日本のニュースをそれほど見ているとは思わないが」

「もし、犯人が日本人じゃなかったらどうするのだ。犯人はこの番組を見ていないから、罠にかからないのではないか」

「犯人が日本人かどうかわからん。だが、犯人の今までの行動から見て、射殺ショーそのものに対して、すごく反対している人間だろう。射殺自体は、他の国でも実施されているが、射殺ショーというテレビでの生中継をやっているのは日本だけだ。だから、犯人が日本在住というのは間違いないと思う」

「わかった。とすると、後は待つだけか?」

「ああ」

冷静な口調で答える筑波だったが、内心はいらいらしている。

罠を張るまではいいが、それにかかってくるまでは、ひたすら待つしかない。やる事が何にもないというのは意外と苦痛なのだ。

「海道。状況が気になって仕方がないから、ITチームのいる所にいこう。ここにいるよりは気分が落ち着く」

「おう。いや、先に行ってくれ。俺は行く所がある。すぐにそっちに行くけどな」

海道はドアを開けて、出て行った。

筑波は海道がどこに行くのかわからなかったが、とりあえず、先にITチームのいる部屋に向かった。


海道が向かったのは、射撃場。と言っても、海道が鈴木と宮垣に対して指導を行っていた所とは違う射撃場だ。

ライフル射撃というスポーツ専用の射撃場だ。警察にも民間企業の実業団のようなのがあり、射撃部というのが存在している。射撃でオリンピックでメダルもしくはそれに匹敵する成績を出して、日本警察の能力の高さを国内外にアピールすることを目的としている。

当然、そのメンバーは皆優秀な人物。通常の仕事をやりつつ、日々訓練に励んでいる。

メンバー数人が狙撃銃で練習している。

さすがに、その能力は高いものがある。弾がほぼど真ん中に的中している。鈴木や宮垣のような悪い癖も見当たらない。

海道はその中の一人に声をかけた。それは一番ベテランの人物。年も38歳だ。それにもかかわらず、海道は「よっ!」とまるで友達か同僚のような挨拶の仕方をした。

「海道じゃねえか。あいかわらず、上司に嫌われているようだな。はっはっはっつ」

その男・・・船場は大きい声で笑った。スポーツをやっているからなのか。さわやかな笑顔が特徴だ。

「まっ、それは言うなって。さっそくだが、頼みがある」

「頼みとは?」

「実は・・・」

海道は本題を切り出した。

海道はあるものを借りる為にこの場にきた。内心、反対されるかもしれないと思っていたが、あっさりOKが出た。

海道は態度の悪さから上司には受けが悪いが、一部では人気があるのだ。船場も海道の事を好意的に思っている人間の一人だ。

目的を果たしたので、ITチームの所に向かった。


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