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ライフル暴走  作者: 河田 げんずい
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2章 捜査中⑤

 ここは住宅街。何の変哲もない住宅街。大都市の近くにあるベットタウンだ。朝になると、通勤・通学の為の学生及び社会人の姿を見かける。夕方になると、学生が学校から帰ってくる。夜になると、会社員が会社から帰ってくる。

 そんな所に大勢の警察官が集まってきていた。一つの一軒家を中心として。

「全員、準備完了です」

 若い警察官が年配の警察官に報告する。この人がこの件のリーダーだ。

「よい、行くぞ」

 と言って、その年配の警察官は家のインターホンを押した。

「はい、電信ですが」

「警察のものです。今から、服部五郎さん殺人の件であなたを逮捕そして、室内の家宅捜索を開始します」

「えっ?ちょっと待って」

 インターホンが切られた。しばらくすると、ドアが開き、男が出てきた。

 電信慶介。この家の人間だ。眼鏡をかけている。

「何の事だい?その事件の事はニュースでやっていたので知っているが、俺には何の関係もないだろう」

 電信はなるべく冷静を装いながら言ったつもりだが、汗びっしょりだ。心拍数も上昇しているのが心臓の音から本人も自覚した。

「うそを言うな!お前が犯人だとの証拠は出ているのだ。犯行現場に残っていた防犯カメラに犯行の瞬間が写っていたのだ。それがこれだ」

 1台のタブレット型コンピューターを見せる。その画面では電信が服部をナイフで刺し殺す瞬間がしっかり映し出されていた。一部始終全てだ。

「防犯カメラだと?カメラは家の外にしかなかったはずだ。全て使えないように電波を送ったはず。それなのに、なぜだ?」

「被害者 服部はお前の殺される可能性を予想しており、万が一の為に室内にも防犯カメラを設置しておいたのだ。それもわかりづらい超小型カメラを」

「ちっ」

 思わず、舌打ちする電信。

 そこまで確認しておけば・・・などと考えたが既にどうしようもないのだ。

「これが家宅捜索の令状と逮捕状だ」

 筑波は電信に二つを見せる。

「ま、待ってくれ」

 筑波は電信の言葉を無視して両腕に手錠をかける。

「午後3時15分。電信慶介を逮捕。続けて今から家宅捜索を開始する」

 この一言を元に一切に家宅捜索が開始された。

 部下の警察官が家の中に遠慮なく入っていく。電信は彼らを家に入れたくなかったが、どうしようもない。彼らには礼状があるのだ。証拠があるので、言い逃れもできない。

 基本的に家宅捜索は昼間に実施される。今回のもそうだ。

 夜には基本的に実施されない。これは近隣住民に迷惑をかけない為だ。

 部下たちはいくつかある部屋全てに入っていき、置いてある物をしらみつぶしに調べていく。

「凶器のナイフを探せ。柄の部分が独特の絵柄だからすぐに分かる。」

 殺人自体は防犯カメラの映像で証明できるが、凶器が合ったほうがより裁判の時に検察側が犯人を攻めやすい。凶器は見つけたい。

 ただ、凶器は真っ先に処分される傾向が強い。犯行の証拠となる凶器をいつまでも持っている犯人はそうそういない。凶器が自宅という・・わかりやすい場所にまだ残っているとも思っていなかったが、念の為である。駄目でもともとで調べているのだ。

 リビング・寝室・ダイニング。それらにある全ての物が部下たちによって確認されていく。やがて、パソコンを調べていると、ある1枚のディスクが見つかった。

 そのディスクケースに書かれた文字を見て、驚いた。すぐさま、警部を呼ぶ。

「警部。これを見てください。これは・・・」


 海道の指導は続いていた。今日も射撃場で二人の射撃を椅子に座りながら見ている。

 二人が持つ銃から弾丸が発射されて、標的に向かっていく。

 パンパンと音がするが、それほどうるさくもない。ドラマの銃と違って、実際の銃というのはそんなにうるさくない。ドラマの銃は作品を面白くする為にあえて、大きい効果音を使っているのだ。

指導を始めて1週間。二人とも驚くべき速さで成長していた。最初に指摘した欠点を克服しつつある。二人とも素質があったのだろう。加えて、海道の指導力の高さもある。海道は始め、他人に教えたことがなかったので、指導に不安だった。しかし指導はうまくいった。意外にも海道には指導者の適正があったのだ。

 扉が開いた。中に入ってきたのは筑波だった。

「海道。ちょっといいか?」

「あー、いいけど」

 二人とも問題なく射撃練習をしていたので、少々席をはずしても問題ない。海道は筑波と共に別室に移動した。


 射撃練習場にも休憩場はある。海道と筑波はそれぞれ飲み物を買い、席に着いた。

「で、話というのは?」

「それなのだが、練馬区で起きた殺人事件の事は知っているか。ほら、ニュースにもなっていた件だ」

「あー、知っているよ。服部五郎だったけ?ガイシャは」

 ここでいうガイシャというのは被害者の事だ。

「それだ。犯人がわかってな。先日、犯人の家の家宅捜索が行われた。凶器を探すのが主な目的だったなんだが、その時、あるものが見つかった。それが、これだ」

 筑波は一枚のディスクを取り出す。見た目はCD・DVDと同じだが、中身は全然違うものだ。現代では考えられない容量の情報を入れることができる。

 そのディスクの表面に文字が書いてある。

「ログ削除ディスク?」

 海道はその文字を読みあげる。

 コンピューターに今ひとつ詳しくない海道だが、ログという言葉は知っていた。しかし、ログ削除ディスクという名のディスクは聞いた事がない。

「ログとは履歴のことだ。例えば、海道。君が自分のパソコンから好きな野球球団のHPを見たとしよう。その場合、ログという履歴が残される。特別なソフトを使えば、どのパソコンから何時にそのHPを見たかがわかるというわけだ」

 海道は野球が嫌いだ。その点を言おうと思ったが、あえて黙った。余計な発言をしても話が進まない。

「それがログというのは知っている。感染力が高いコンピューターウイルスがでてきても、いずれはウイルスが開発されて、最後にはそのログをたどっていくと、発信源のパソコンが特定される。それで犯人も特定されるわけだよな」

「そういう事だ。ログというのは犯罪捜査の上ではそれほど重要なものだ。これがあるからこそ、犯人を捕まえられるし、動かぬ証拠になるのだ」

「まさか、ログ削除ディスクとは・・・」

「その名のとおり、ログを削除してしまうことだ。ログがなくては発信源のパソコンが特定できないので、犯人が特定できない。事件は迷宮入りというわけだ」

「そんなものが実在しているのか?聞いたことがないぞ」

 驚く海道。当然の反応だ。それがあれば犯罪し放題だ。

「正確に言うと、ログ削除ディスクの未完成品だ。試作品とでも言うべきだろう。このソフトを使えば、ログを見るのが難しくなる」

「難しくなる?」

「ログを見に行こうとすると、別の場所のファイルの所に行ってしまうのだ。だから、へたな技術者相手だと、ログそのものがなくなったように見えるのだ。もちろん、ちゃんとした技術者なら、そんなちゃちな小細工はすぐに見破ってしまうようだな。練馬区で起きた殺人事件の犯人・・・名前を電信というのだが、そいつがひそかに開発中だったらしい」

「ナイフで殺人・・・しかも家の中にひそかにしかけられた防犯カメラが証拠になって逮捕という馬鹿な犯人がログ削除ソフトなんていうすごいものを開発できるものか?」

「頭に血が上ると周りが見えなくなるのだろう。この犯人の動機は恋愛関係のいざこざだ。憎い相手を直接ナイフで刺し殺したかったようだ。これほど頭がいい犯人ならもっと賢く復讐できただろう。得意のコンピューター技術を使っていくらでもやり方があったはず。

 この犯人は前科が全くないどころか、今まで全く問題を起こしていなかった。善良な市民であっても、ちょっとしたきっかけで犯罪者に転落してしまうというわけだ」

「まさか、あの事件の犯人もこれを使っていたというわけか?」

「私も最初にそれを思ったが、うちの署のITチームに調べてもらうと、このソフトではないらしい。しかし、私は思うのだ。これの完成品を誰かが作り、ライフル暴走事件をおかしたのではないのかと。使っていたという証拠はないが、これ以外考えらない」

 筑波は自信を持って言う。他に方法はないかということも考えたが、思いつかなかった。実は警察内に裏切り者がいるのではと思った事もある。その裏切り者が捜査情報を特殊な方法でぐちゃぐちゃにしたのではないかと。しかし、それは考えられない。

 近未来の警察に入るには徹底的に身元を調べられる。特に情報関係の部署に行く人間にはそれがより徹底される。本人はもちろんのこと、友人・家族までだ。その中に疑わしい人物がいれば、本人問題はなくても、その人物は情報関係以外の部署に配属されることになる。だからといって裏切り者が絶対にいないとは断言できないが、可能性は低いと考えられるし、警察の人間である筑波はその可能性をそもそも考えたくはなかった。

「おまえがそこまで言うのだから、そうなのだろう。しかし、その場合、どうやって、犯人を捕まえるのだ?ログ削除ソフトを使えば、証拠は残らないのだろう。これではパソコンを特定できない。しかも、怪しい人物を調べてみても、疑わしい人物が出てきていないのではないか?それとも新たにそれらしい人物でも出てきたのかな」

「いや、出てきていない」

 筑波もそれ以外の人間も聞き込み範囲を広げたが、いまだに有益な情報は得られていない。

「なら、どうするのだ?」

「俺に考えがある。実はこのログ削除ソフトの未完成品がログを見えにくくするのには時間がかかる。このソフトの場合で20分ほどだ。その20分が過ぎるまではログは残ったままだ。その時にログを調べてしまえばいい」

「なるほど。しかし、それはいつ犯人がどのデータベースに侵入しているかがあらかじめわかっている時しか使えないのではないか。しかも、完成品とやらが同じように20分とは限らないのでは?」

「そのとおり。20分かどうかわからない。これより長い時間かかるかもしれないし、短いかもしれない。でも、ログ削除という常識外れの事をやるのだ。ある程度の時間がかかるはずだ」

「その時間の間に何かするのだろう。お前の事だ。何か既に作戦を考えているな」

「もちろんだ。罠を張ることにした。その具体的な方法とは・・・」

筑波はその方法を語り始めた。それは見事な作戦なので、海道はその作戦でいこうと筑波に言った。


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