幸せの黄色いキッチンカー4
「アレが“天意の拳”……」
クラウ嬢がいやもう頭ん中ではクラウでいいや。
クラウが俺の知らない設定をブチかましてる。
えっ? コイツ今、どうなってんの?
とヤガを見る。するとヤガはこっちに来て手を差し伸べる。
「自分の勝ちです姉御」と嬉しそうだ。
俺は微笑み手を取り
「勝った気になってんじゃねーぞゴラァ!?」
と飛びつき腕拉ぎ逆十字固めに決める。
「ちょっ!? 待っ…… 降参! 降参しますから」とヤガは俺が教えた用にタップをしてくる。
「勝った!!」俺は立ち上がり大歓びしてみせムンと両手を突き上げる。
「あいむ、ちゃんぴおん!?」
「さっきは負けたーとか言ってた癖に…… あーもーそれでいいですよ姉御の勝ちでッ!!」
やけくそ気味にイテテと腕を振るヤガ。
ふん! 嘘つきめ。
お前がその気になったら俺を持ち上げて石畳に叩き付ける位の事はやれただろうに。華を持たせやがって。
一応俺百七十センチ!六十五キロ目算であるんだけどな。多分楽勝で持ち上げるだろう。ヤガは…… 二メートルはないな。ギリ百八十以内? 百九十あるかな? 体重は百キロ…… 百十キロ越すかな?
女の癖に太り過ぎ? うるへー 俺は乳と尻が無駄にデカいんだよほっとけやー!!と脳内オーディエンスにアンサーする。
……しっかしマジもんのバケモンに育ったなーコイツ。何食って育ったんだホウシャノーか? もうゴジラかなんかだろコレ。ずるい俺にも寄越せ。いややっぱ要らない。
女でこれ以上デカくなってもなー。まぁ白人種で百七十はたいして背ぇ高くないんだけどさ。
「あーえっと散々引っ掻き回しといてアレだがどうしようかコレ?」
とヤガに問うたら何故か説教タイムが始まった。
「姉御!! その前に言っておきたい事があります!!」
「な、なんだよ藪から棒に」
「前から思ってましたが…… 丸見えです!!」
「ナニが?」
「パンツです!! バンッ!! 蹴りん時!!」
「ああ、ハイキックの時か。すけべ」
「違いますよ!! 同年代の娘を持つ親の身としていたたまれないって話ですよ!!」
「えっお前、子供いんの? パパなの? すけべ!」
「すけべは関係無ぇでしょう!?」
「いや、そっかーあのヤガに子供が…… アレお前結婚出来たの?」
「姉御さぁ…… そういうトコですよ? そろそろ自分もブチ切れますよ?」
「いや、すまんすまん。けどそっかー 俺のパンツこっそり見てたエロ坊主が結婚してガキいんのかー」
そうだよな三十年経ってるもんな。
「……マジすんませんでしたー!! お願いですから勘弁してやって下さい」ヤガが泣いて土下座したのでまぁ手加減しよう。
「それにな俺のは勝負ぱんつだから恥ずかしくないのだ!!」
「なんですか勝負パンツって!!」
「決闘用に決まっとろーが」
なお、俺がくたばった当時、勝負パンツという概念は無かった。つまり俺は後で恥ずかしい事になる。ちくせう。
「ワケがわかりません」ヤガは理解を放棄したようだ。
「ふふふ参ったか!?」
「だから降参です」
「うむうむ。あ、そうだよでお前誰と結婚したのやっぱミッチ?」
ミッチとはこいつの後ろをついて回った一つ下の女の子だ。なかなかにこまっしゃくれたお嬢ちゃんだった。
「ええ、まぁ……」何処かトオイメをするヤガ。
「あらあらまぁまぁそっかーやっぱ捕まったかー」と近所のおばさんおじさんムーブしてニヨニヨしてる気持ち悪い俺。
「懐かしいな。お前が俺を好きになったからスゲーエネミー認定されて困ったんだよなーだから……」
あ。そこで俺は自分の失言に気付いた。やべ。
「だから?」笑顔のヤガ。
俺は視線を顔ごと背けてゲロった。
「ミッチにお前を売りました」
「ちょっ! アンタ何してくれやがりますかっ!?」
「いいじゃねぇか!? ちょっと幼い恋心に翼を与えてやっただけだ!」
「虎に翼を与えんなよ!!」
「あーなんとなく解るわ。狩られて剥かれて頂かれるお前の姿が目に浮かぶわ」
ミッチは肉食系だからな!
「狩られてねえ! 剥かれてねぇ! 頂かれて…… 多分ねえ!? 変な妄想すんの止めろ姉御!」
「妄想じゃねーよ極めて確度の高い予想ですぅー」
「うわぁムカつくー!!」
「あの…… その、こちら様はどなた様で?」
おずおずチンピラAが聞いてきた。ヤガが答えてる。
「魔王討伐の英雄で神殿の聖女にあらせられる ギン様だ!! ついでに言うとウチの姐さんを助けてくれた恩人で拳においては俺の師だ。つまりお前ら一体全体何しちゃってくれてんだ馬鹿共!?」
ああん? とヤガは弟分をどやしつけるが、ちょっと俺の紹介の時に誇らしそうでなんかこっちも嬉しかった。あ、チンピラがしょげてる。の割に目に光が戻った。ふむ?
「あーそんな大したもんじゃねーよ。魔王討ったのは仲間だし奥様助けたんは務めだし、お前の面倒見てたのほんのちょっとだしそもそも三十年前とかコイツら生まれてねーだろ知らんわそんなん」
「いや、でも盃下ろしてくれたじゃないですか四分六で」
「いや、まぁ、そうだな」いやまさかあの時のチビ助がここまでの人物になってようとは。感慨深い……
……う゛っ。
「あ゛あ゛、急に気持ち、悪りい゛オェ……」
「うわぁぁぁ!!」
ノリで吐き戻す素振りをしたら全力で後ずさられた。気が緩んだのと食ったばかりなのとのダブルパンチで胃がでんぐり返る……。が吐き戻しは転生の女神の使徒としてNGなので短く加護を祈る。食べた命無駄駄目絶対。
「治った。せぇふ」また神様に借り作っちまった反省。人間が努力で出来る事の尻拭いさせたらイカンよなぁ。
「本当に勘弁して下さい。泣きますよ?」
「すまんすまん」
とまぁとても楽しい共食い…… お話合いを楽しんだ後。
「で話戻すが今回の件どうする? 俺がシメめられてオシマイでいいか」
「あーそうですね。とりあえず自分との件は自分が稽古つけて貰った。アイツラは酔っぱらって迷惑をかけたから自分がアイツラをシメてあっちに謝罪して基本なんも無かったでお願いします。ウチも神殿とは揉めたくないんで」
チンピラーズか「ヒィ!?」とか言ってるがスルーしとく。
「そっか面倒かけたな」
「いえ」
「あ、そうだもう一つ。子供売っぱらうってのは、ただの脅しだよな? みかじめ料欲しさの」
マジなら流石に見逃せねーぞと。んなわきゃねーが。
「なっ、テメェら!?」
案の定泡を食ってチンピラーズに顔を向け凄むヤガ。
『すいません!! ハッタリです!!』
チンピラーズは二人して土下座かましてる。
「ったく。すいやせん。自分の監督不行き届きで」
立礼でヤガは詫びを入れてくる。
「しかしなんでそんな真似を。子供に集るとかカッコ悪りぃ」
「それは……」とヤガが答える。
「金! 金が居るんです!! 大金が!!」
とチンピラの…… アレ名前何だっけ? が食い気味に。
「コイツラがそんな大金持ってるように……」
見えるな。
普通の庶民は車なんて持ってないぞ?
「何に使うつもりだ?」
「それは……」
「止せ!!」とヤガが言うが。
「いいえ! 此方の姉御、高位の神官様何でしょう? どうか御慈悲を、お助けて下さい!!」
「……言ってみ?」
「へい! ウチの…… 姐さんを助けて下さい!!」
そこまで言われて勘所が働く。
コイツらと絡んだ最初の理由。
「まさか奥さん、魔石病再発したのか!?」
一般に魔石病と呼ばれる病がある。
体内に魔石が出来て何れは全身に周り身体が石化
するという病だ。魔力の強い者がかかる魔法使いの職業病みたいなもんだ。一般人でも生来魔力が強かったり魔力を使い過ぎると体内の石が出来て魔力暴走した結果、発症する事がままある。
ヤガ含む一同が力無くハモッて 『……はい』と答えた。
「馬鹿野郎!! 最初にそれ言え!! 行くぞ!!」
「いいんですか? その神殿に喜捨する金ありませんよッ!」金が無い無力さに恥じ入る気持ちと神殿の銭ゲバに腹を立ててる風なヤガ。
「ナイショだ。今、俺反抗期だから」
「意味わかりません! けど、ありがとうございます。じゃあ行きましょう!」
「あっ、たんま二十秒待て残り食って来る」
結構有ったが一瞬で頬ぱり咀嚼飲み込む。つっかえそうになったが酒で一気に流し込む。ああっ勿体ない雑に食っていいメシじゃねぇのに。
「ぎょっくんっ。ごっそさん勘定!」
「ああ、それですけどいいですよお勘定とか」
「は? いいのか? なんで」
「そのかわり一緒に付いて行っちゃ駄目ですかね? その件の女性? 貴女ならすぐに治せるんですよね?」
「前と同じならな。年齢の分症状が重いかもしれんから見てみにゃ解らんが」
「なら完治のお祝いしますよね? それウチの仕切りでやらせて貰えませんか?」
「俺に口聞けと?」
「ええまぁ、勉強しときますよ」
「まぁ身内が迷惑かけた形だから詫び込みで頼まなくもないが……」
どーなの? とヤガに目配せする。
「気が早いと思いますが治れば皆飲むでしょうね朝まで。ちょっと店でやると迷惑でしょうしならちょうどいいかも?」
「よし決まった今度こそ行くぞ!」
『応!』
となり来た診た勝った。
めっちゃ組をあげて感謝された。宴会になる。
書き溜め無くなったので明日(5日)の更新間に合うといいな。(現在3日の22時)
とりあえず次の宴会パートで今回は一旦区切り。
そして二章先の原稿が何故か先に上がってる不思議。
暫くは聖女さんが主役(風味)。