地走り番外地8
援軍の衛士が来た! 先頭を走るのは、あの娘だ。半グレか筋者にしか見えない昔の弟分だったヤガの娘!!
そういや名前知らねぇな!!
総勢六人ほどが手に手に武器を持っている。持ってる武器は槍かと思ったら大体、刺股だった。
西遊記の豚、猪八戒が持つ罪人を取り押さえる為の長物だ。先端は尖ってるし返しがついて殺傷力もあるシロモノだ。捕り方にはうってつけの武器だな。ヤガの娘は前に見たままトンファーを提げてる。持。
あれ使うの難しいんだよなぁ…… あの娘が十全にアレを使いこなせるなら戦力として期待出来そうだが。
姿が見えた時点で声を張り上げる。
「気をつけろ!! このガキ、強力なアンデッドだ!! 包囲しろ逃がすな!!」
「聖女サマ!?」
「構えろ!! 来るぞ!!」
子供の姿で油断したのかあっさり一人やられる。
おいぃぃ!? 息が合わず一人突出して黒を取り押さえようと繰り出した若いのの刺股を黒が掴み力任せに捕り方を投げ飛ばされる。
障壁の加護すら間に合わねぇ早業だ。
ああっクソ、このガキやっぱ強えぇ!!
「回復いるか!?」
「オレが診ます!」
と意外な元気な反応。
店主か? えっ怪我人診れんの? 助かる!!
前衛やりながら怪我人診るの辛えからな!
「トリアージ取ります。イエロー!! 強い打撲! 命に別状ありませんが戦線復帰はちょっとかかります!」
鳥味。チキンって事かな? ヨクワカランが大丈夫そうだ。回復飛ばして復帰させるか? 残存魔力との相談になるな。
しかし今はそれより数が揃った。先に王国の秘儀にかかった方がいいな。
「おい衛士の嬢ちゃん! ちょっと前衛頼めるか」
「はい!」
と彼女は勇んで前にでると両のトンファーを引き抜いた。。多分この面子で一番頼れる筈。
「この!!」黒が暴れる様に前に出るが見事にトンファーでブロックしてる。ありゃ鉄壁だな。
攻め手も見たくなるがそんな場合じゃねぇな。
とか思ったらほぼ同時に強力な蹴りが黒の腹に突き刺さった。攻防一体の見事な技だ。どっか既視感を感じる人間が喰らえば悶絶間違い無しの蹴り。
けど…… 打撃で倒せるならもう十回はK.O.してんだよなぁ。
「無理に攻めんな! 抑えるだけでいい!!」
背中越しに指示をだし彼女が頷いた所で自分も自分の仕事に入る。
さて見せてやる。初代の聖女サマから伝えられし王国建国の秘儀を。俺は集団戦のが得意なんだよ!
合掌して祝詞らしきものを唱える。
いや、だって正式なのは知らんしな。(駄目聖女)
教わったような気もしないではないが三十年石になってたから忘れた。
何、だいたいあってりゃ通してもらえる。ごめんな神様ありがとう!!
精神集中の為に一度目を瞑り結印し祈り始める。
祈りというモノは歌、舞踊に並ぶ原始の魔法の一つだ。誰でも何時でも何処でも出来るのがまた素晴らしい。
「全員祈れ!! 奏上!! ここに勇者が集い不浄のモノと闘わん!! 僅かの間だけでも我らにどうか加護あれ! 弱者を家族を守る為の力を与え給え!! 南無地蔵菩薩!
けてる、こくまー、びなー
オンカカカビサンマエイソワカ!!」
術の文句を唱えると力が来た。
……心なしか何時もより術の力が強い気がする。前夜の術のように…… チローリと店主を見ると甲斐甲斐しく怪我人を治療してる。
ぜってーアイツだ。昨晩と同じ要因はアイツだけだ。なんだ? やっぱ神さまのお気にか? ひょっとして今代の聖女とかか?
ぎわくはふかまった。
店主と目が合う。目を見開かれ驚いている。
「嘘…… ただの人間が“王国”を展開した?」
ふふん。こちとら聖女様やぞ。ヨユー。
まぁ普通の人間には出来ないもんな。王国を展開する事が出来るのは本来は原罪に覚醒した魔王種のみ。
それはある種の魂の重さ、魂の質量が必要だからだ。その質量が世界を歪め使用者の世界を構築する。勿論無限には無理だ。できるならそいつが新しい世界の神だ。だからそれなりの枠があり、その世界の枠の中でだけで通用するルールが強制される。大体は元になった原罪に個人のばーそなりてぃ? が足されたモノだ。そう個性! 個性!
魔王種が個人の魂の重みで異界を開くなら、それに至らぬただの人間はどうするか?
当然、数を集めるのである。数を集めて運命を捻じ曲げるのだ。集めた祈りは意志は力に運命になる。
ある程度の力を持つナニカが事を成す時、それは運命として阻止出来ない。それを人為的織りなすのがこの術式。みんなで力を合わせてそのナニカに成るのだ。
しかし長時間は無理だ。人の目的意識は拡散しやすい。出来るだけ簡単で短時間の目的設定が望ましい。
本来なら。国ごとの祈祷でそのチカラを勇者に送るモノだ。
初代聖女様から連綿と受け継がれた聖女の決戦術式“王国”
さぁ、第二ラウンドいってみようか。
足で落ちてる刺股拾って構え格好をつけた。




