地走り番外地5
料理ネタでやりたいですがね。どうしてこうなった。
どうしたもんかなー。
いや、本当にどうしたもんだろう。
宛もなく街を歩く。
色々解った事、うっかり動かしてしまった事態。
色々有ったが“前世は棒”に全て持っていかれた感が強い。あれを前世と呼ぶべきかは微妙だが。
前職? いや報酬貰ったわけじゃねぇしな……。
さてと気を取り直して捜査続行。と言ってもツテが有るわけじゃなしやっぱりどうしたもんかね。
取り敢えず方針を吟味してみる。
最優先は“商品”の開放。次いで組織の撃滅。
うん。差し当たってそこは変わらない。
じゃあそこに向かってどう進んで行くかだ。
やっぱり人質…… じゃねぇや“商品”の隠し場所を見つけて強襲が一番楽で被害少そうなんだがそれが解らんと話にならない。
人間は結構大きい隠すのは結構ホネだ。生きてるなら食事や排泄も必要だ。摘発された“商品”には水は与えられて居たという話だった。やっぱり倉庫街のどっかだよなぁ。
“商品”の輸送に使わてたアンデットはかなり出来がいい。言われた簡単な命令を機械的にこなし後付の幻術で正体を隠し受け答えがあたかも出来るように誤魔化していた。
が、さてコイツら街の中に潜んでいるだろうか?
死んでても隠すのはまぁ生きてるよりはラクかもしれないがそう簡単なもんでもないだろう。臭いは、するだろうし見える場所に置いてれば事件だ。
いや、幻術が敵の手札にはあるんだっけか。やっかいな。
幸い俺が見たらワカル。というブッちぎりのアドバンテージを得たのはデカい。
しかし市民からの通報に期待出来ないのはイタい。
街を見回ってみるか? いや門に行って“商品”の出入りの為のアンデッドを待ち伏せするのはどうだろうか? 良い手な気がする。
しかし既に受け渡しか終了していれば一日の仕事がパーになる。しかし当たればデカい。相手をそこから尾行すりゃアジトも発見できる。けどそこまで甘い相手かな。アンデッドをとっ捕まえた以上此方に事が露見した事、向こうにもバレた筈だ。
俺ならその時点で撤収を図る。
……アンデッドを使ってる理由が解れば相手の出方を推理出来るかもしれない。ちょっと考えてみるか。
まずアンデッドは喋らない。機密の保持が楽で賃金がかからない。食事や休憩がいらない。
から考えられる組織の能力、人を雇う金がない。もしくは雇う必要が無いか……。
怖い考えになってしまった。やっぱ大物がいるのかね。いや、そこまでじゃないと思うんだよな。食事を与える役は必要だろうし。……いや与えてたのか? しまったなノリでなんとなくスルーして出てきちゃったが被害者の話、あまり聞けてないじゃないか。
戻るか? 気不味いんだがなァ……。
よし戻ろう。情報はどんね断片でもありがたい。
っのわけで聞いて来たが“商品”の子は馬車の床側に隠しスペースか作られててそこに仕舞われてた。
逃げ出した契機は馬車の横転事故で事故のせいで戸板か外れてそこから逃げ出せたようだ。食事は移動中は与えれておらす水袋の水だけだったらしい。
まぁ虜囚の待遇ならそんなもんかもな。元気いっぱいに逆らわれても困るよなぁ。
一応、生かしとく気はあるらしい。安心した。
死体でもいいと言われたらエライ事になるトコロだが。
なんとなく輪郭は見えて来たが、しかしあんまり先入観を持ちすぎるのも良くないかなー。
さて俺はどう行動したもんかね。
決めきれずに足の赴くままブラブラしてみる。
犬も歩けばなんとやら。見えたら解るんだから可能性位あるだろう。無いか。
無かった。チクショウ。ちょっとだけ期待してたんだけどな。そうは問屋が卸さんか。不慣れな道なぞ歩いてチンピラに絡まれて酒なんぞ奢らせたりしたが。酒はそこまで悪く無かったが肴がいけねぇ。つか黄色いの(スパルタソ)の方が良すぎてイマイチ満足感が足りない。
うわ、こりゃイカン。あっちに慣れたら普段が地獄だぞ。でも食いたい。うむむむ。
街を歩く道すがらふと、それが気になった。
なにが気になったのかこの時は解らなかったが。
それは子供だった。銀髪の子供。だから最初、店主か? と思い足を止めた。違う。男の子だ。女児と見紛う程の美しい顔立ちで中性的だが男性と解る一種のシャープさも兼ね備えている。異様なのは左眼なの眼帯をしている事だ。
……眼帯、流行ってんのかな。
その子が道端に座り込み何かをしている。
……なんだ、ありゃ? 具合が悪いとかか?
それなら出番だと勇んで声をかけようと近づいたら子供が何をしているか解った。
蟻だ。蟻を見ている。いや、時に踏み躙り蹂躙し蟻には大きな石を上に置いてもがき苦しむ様を薄笑いで見ている。
………。
いや、子供ならではの残虐性で人間なら一度は稚気を起こしてやるもんかもしれない。とやかく言うのもどうんなんだ。だがそれを諭す人間も周りにはいるもんだろう。しかし周りには誰もいない。
……面倒くさいお鉢か廻ってきたぞ?
「あー うー ごほん、えっとぉ、これ少年よ、蟻を虐めてはイケマセン」
……浦島太郎かよ!?
我ながらもうちょいマシな声掛け無いのかよ。一歩間違えたら事案じゃねぇかッ!?
激しく鬱に入りながらしかしそれを出さないように頑張る。頑張った!?
少年がこちらを座ったまま見上げ「……どうして?」と聞いてきた。
挫けた。
いや待てまだ早い。俺、女神の使徒。俺、聖女サマ。イノチトウトイ、イノチダイジニ覚悟完了オーケー?
オーケーだ。
「可哀想じゃねーか」
「可哀想?」少年は問い返しながらぷちっとまた潰した。
「おい!!」
流石にあんまりなので語気を荒らげてしまった。
「別にこんなの何匹死んでもお姉さんには関係無いでしょ? それともこのアリお姉さんのなの?」
「いや、違うけどよ」あーもー厄ネタ!! こういう理屈っぽいガキは俺には厄ネタ!! 殴って躾たら駄目か? 駄目か。
くっそ聖女説法舐めるんじゃねーぞ。まだだ。まだ、終わらん、諦めんぞ。
「君は蟻を虐めて可哀想って思わないの?」
「思わない」
ソウデスカーですヨネー じゃなきゃ虐めないわなー そりゃそうだ。ぎゃふん。
「どうして思わないの?」
「どうして思わなきゃいけないの?」
……キライ。こいつキライ。ムキー。感情的な普遍的道徳的正論に子供のなぁぜ? なぁぜ? 攻撃嫌い。
ンンッンンン。打つ手がない。何処だ何処で攻めてを間違った?
いやそもそも間違ったか? 路線合ってるか? アプローチ変えるか? 変えるならどう変える? どうする?
……。
いや、違うな。コイツを知る事から始めよう。
「名前聞いていいか? 俺はギンってんだ」
座って目線合わせてみた。
「ふぅん? 僕はヘイだよ。本当はもう少しあるけど忘れちゃった」
「ヘイ、か。いい名前だな」取り敢えず褒めとく。
ヘイ、屏、丙、いや、まさか黒か?
黒、要素どこだよ。いや、俺も銀要素ないけど。
「そうなの? 僕には解らない」
「親が付けた名だろ? ならいいもんさ」
黒なら志那語だ。ま、支那と言ってもあそこも広いからなぁ。通じないとこもあるだろうが。
何時もなら気にならない所が志那の道士が敵にいるならちぃと見過ごせない兆しだ。
いや、まぁこんなガキンチョになんか出来るとも思えんし気にし過ぎだとは思うんだが。うーん。
「親じゃない」
と意外な返し。いや別にこれもよくある話か。
「そうか……」
孤児らしい。困ったなどうやら同胞らしい。これで俺としては見捨てるという選択肢が無くなった。
面倒差が膨れ上がってる気がするが本題に戻す
「あーっと、蟻を潰すの止めようぜ。別になんの恨みもないだろ?」
「無いけど面白いよ。一番面白いのはアリ地獄に落とす事だけどこの辺にはいないよね。お姉さん、ギンさんだっけ? 何処かで見なかった?」
「いや見なかったけどよ。あ、じゃあさぁ、蟻虐めるより楽しい事、俺としようぜ。ってこっち見ろや」
「楽しい事? 人間虐めるの? それは今しちゃ駄目って言われてるからアリを……」
そこで初めてコイツは俺を見た。顔を少し上げた。
「ああ、困ったな。お姉さんとても綺麗な瞳をしてるんだね。困ったな。だから下を見ていたのに困ったな。顔を上げて綺麗な瞳を見つけたら困るのに。見つけちゃった」
「そうかぁ? 褒められると照れるぜ」
いや、待てコイツなんつった? 人間を虐める?
もしかしてこの蟻のように? 人間を!?
項の辺りにチリチリとしたものが走る。聖女の勘ではない武人の方の勘が最大級に警報を上げてやがる。
あっコイツ、なんかヤバい!?
立ち上がって少し距離を取る。
「ねぇお姉ちゃんその瞳綺麗だね。大事にするから僕に頂戴? かたっぽだけでいいから」
そう言って頂戴と両手を拡げ伸ばす。
ゆっくりと眼帯に手をかけ外す。そこにあるの死者の持つ蒼い唇だ。顔に2箇所口がありやがる。その唇に腐った他者の眼球が咥えられていて眼底から伸びた舌が一度別れを惜しむように舐め上げ噛み砕いた。
歯もあんのか。
そして揺蕩う猛烈な死の臭い。
ああ、これか。気になったのは。今、やっと気が付いた。気を付けていた筈の幻術。
してやられた。
ヤバいな。棒も歩けば犬に当たれ!! と思ったがどうやら藪を突付いて鬼を出したらしい。




