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地走り番外地2

「ちょっと待てジジイ! どういうこった!?」


「だから説明したじゃろう。見習いの者が昨日から行方不明じゃ。今、若いものが探しておる」


「居なくなったのは誰だ!?」


「お前に見習い三人付けとったろう? そのうちの一人じゃよ。名前はクラレント…… だったかな」


「大変じゃねぇか!! 探しに行かないと!!」

 入口に走りかけたら首根っこ掴まれ制止が来た。首が閉まる。ぐぇ!


「待て! 許さんぞ!!」


「がっ、はぁ!? ついにボケたかッ!! ああ前からだな畜生がっ!!」


「口を慎めそれでも神官の範となる聖女か! もう一度言うお前の捜索は許さぬ! 出ていくなら破門と心得よ!」


「ばっ…… なんでそうなる?」


「言わなきゃ解らんのか馬鹿聖女。発端はお前の門限破りであろうが! 反省房に籠もり神に祈りを捧げておれ」


「いやそうかもしれんがクラ公の安否より大事かそれ! 後でなんぼでも罰なら受けてやるから邪魔すんな!」


「ギンよ。そなた何を慌てておる。確かに心配だが街中じゃ。事故でないなら何処かの軒下で一夜を過ごしたのだろう。子供など呑気なものだ。直ぐに見つかるわい」


「見つかるわけねぇだろ! ……あれ爺さんもしかして知らないのか?」


「なんじゃい藪から棒に」


「この街、今営利誘拐の輩がおるんだと」


「……なんじゃそりゃあ! 儂聞いとらんぞ!!」


「爺さんも知らんかったのか。あ、いや俺もまだ裏は取ってないんだけど……」


 そういや裏は取ってないな。言って気が付いた。

 あいつらにこちらを騙す動機があるとは思わんが。


「確かでは無いのだな?」


「あー まだ噂。仮眠して起きたら裏取りしようかと……」


「駄目じゃ。禁ずる。それはやってはイカン」


「なんでだよ!!」


「それは官憲の仕事じゃ! 我ら神職の務めではないわ!」


「かもしれんが市民の義務とかあんだろう! 目の前の被害者を被害者貪る悪を見逃せって言うのか!」


「そうは言っとらんわ! 目の前なら止むを得んがお前は探そうとしとるじゃろがい! この馬鹿弟子が!」


 そう言ってジジイは俺の額を指で突付いた。チビの癖に。


「痛ぇな! ジジイの弟子になった覚えなんぞねえわ!」指を腕ごとを払ってやった。


「なんじゃとお! あんだけ人の技パクった癖に!」


「パクられるジジイが悪いんだろ。普通秘伝奥義の類は他人に見せんのを絶招までホイホイ見せやがって!」


「大丈夫じゃ! お前に絶招は使えん! カッカッカッカッ!!」


「ムッかぁ!? その内パクってやるから覚悟しとけよ」


「ふん! 兎に角、貴様は暫く反省房で謹慎しとれ。あまり舞い上がってくれるな英雄サマよ。人はお前に正義を望むだろうがそれは人間の分を越える行為じゃ! 我等神官の仕事は神と人との仲介で神の法を人に押し付ける事ではない!」


「別にそんなつもりはねぇけど……」


「何、心配するな。ただの犯罪なら見逃す。儂らの出る幕ではない。だが残念ながらクラレントの件、誘拐が事実であればは見逃せぬ事になる」


「お、まさか」


「応とも其奴らは儂らに喧嘩を売った。……これはそういう事じゃ」

 爺さんからあんまり神職とは思えない思いたくない殺気が放たれ、ちとたじろぐ。辺りにいた小鳥がざぁと飛び立つ。


 こえぇ。


「……じゃあ、俺も」


「駄目じゃ。筋が違う。今回の件お前は関わらさん

 謹慎しとれ」


「ぐぬ…… じゃあ後で三倍受けるから謹慎解いてくれよ」


「バカモン借金の取りたてじゃあるまいし。これは規律の問題じゃ」


「解ってる。そこを曲げて神殿長に申し上げる」

 俺は立礼で頭を下げる。



「……ハァ。解ったわいお前がそこまで言うならな」


「いいのか? 助かる」


「此処で折れんとお前神殿出ていくじゃろうが! まぁ貸しにしとく。そして後で罰を受けてもらうぞ。そうさの貴族相手の接待とか治療に行って貰おうかの」


「……よりによって一番嫌な仕事ヤツ振りやがって……」頭をバリバリ掻いた。


「解ったやろう」


「なら寝てこい。起きた頃には色々解っておるだろうて少し気になる事もある」


「気になる事?」


「後じゃほら行け。行くのは反省房じゃぞ。別に自室でも構わんが」


「じゃあ自室でいーじゃん」


「寝れると思うか? まず間違いなく御目付のカタリナに起こされて朝の務めに狩り出されるぞ」


「そ、そうだった。反省房お借りします……」ぎゃふん。そうだよ鬼のカタリナが居た。三十年前から俺の御目付役で俺が石化したら復活したら還俗先から戻ってきた有り難くも鬱陶しい先輩巫女だ。年齢は今は五十前後だが詳しくは聞いてない。当時一個か二個上だった筈。ちなみに貴族の生まれで子持ちだそうな。


 うーむ。近所の仲の良い知り合いのねーちゃんが出稼ぎから帰ってきたら知らない間に結婚して子供出来たの聞かされた気分だった。


 カタリナ子供の作り方も知らない初な小娘だったのに。昔は象さんのネタて盛り上がった物だが今は効かなくなって悲しい。お説教から逃げれないじゃないか。


 そうして気になる事はあるが俺は反省房の煎餅布団(ただし清潔)に包まって寝た。どこでも寝れるのは行軍中の必須技能だから朝飯前だ。


 ああ、朝飯食いそびれたなぁ……。ふぁ。



 起きたらけっこー経ってた。何やってんだ俺は。


 軽く自己嫌悪してから適当に身繕いしてカタリナの捜索から逃げ延びジジイの部屋に忍び込んだ。


「遅かったな」半目で睨まれた。


「起こしゃいーだろ」


「まぁいいわい。どうせ儂等突入要員じゃしな」


「ジジイも来んのかよ」


「当然じゃ神殿が舐められたんじゃぞ? 戦争じゃ。トップが動かんでどうする」


「嘘付け百パーセント趣味だろうに」


「呵呵ッ! 刹劫、愛劫、歴劫捨てれぬは人の業よ。それより…… 不味いことになった」


「なんだよ勘弁してくれよ。このクソ忙しい時に…… で?」俺はうざったくなって長い髪を搔き上げた。


「どらごんが現れた」


「……ハァ? おい、爺さん人を担ぐにしても時とばし…… まじ?」


「まじじゃ、今、衛兵が事実確認しとるが見た。というのがいるのは真実じゃ」


「やめてやめてやめてここでトラブル積み増すのマジやめて、竜害とか都市滅んじゃう。あ、爺さんひょっとして竜相手にイケたりすんの?」


 かなり期待した目線で爺さんを見る。


「弟子が老人を虐待しよる」よよよと泣き崩れる爺さん。


「やっぱり相手するにゃギアスがいるな。よし爺いが使えんのは解った。詳細は?」


「ちっ、ムカつくガキめ。まぁ確かに一々そうじゃこの街に契約機ギアスは無い。領都にならあるじゃろうが壊されたら替えはきかん。最悪都市は一つで済むなら領主は契約機ギアスを出さんじゃろう。都市を守った後に余所の島に契約機ギアス出されたらバンザイするしかなくなるからの。どだい竜をどうこう出来るなんざ人間越えとるわ。来たら諦めるしかない。でだ目撃情報たが朝方、街に着いた隊商の護衛の一人が見た」


「こんだけ人間の領域減らされてまだ懲りないのかね。人間同士で争ってる場合じゃないだろうに。いやだからかな。取れる所から穫る。しかし見間違いじゃねーの? 一人なんだろ?」


「なんでもそいつは目がいいんだと。昼間に星が見える程だからちょっと凄いぞ。かなり遠く他の者には豆粒みたいに“ナニカ”が見えたらしいが断言は出来ないとな。幸いこれが一番大事じゃがウチからは遠く離れる方向に飛び去ったらしい」


「取り敢えず一先ず安心かな。噂広まると食料値上がりしそうだが。まぁ来ない竜に備えてもしゃーないから夢物語は置いといて現実に対処しようぜ」


「実はそっちも不味い。ちょっと引っ掛っておったんじゃがなビンゴじゃった。子供攫って島外にとか算盤合わねー事、やるわけないと思っとったら案の定じゃ、衛兵廻りのコネと話したら解った。奴等の目的は子供じゃねぇ」


「子供じゃない?」


「いや、子供は子供なんだがどうやらターゲットは“魔物憑きの子供”のようじゃ」


「じゃあ、クラ公は……」


「魔物憑きじゃ。アレの背中には動かない異形の小さな羽根がある。服で隠せる程度のな。あの娘は元々近在の貴族の子弟でな。まぁなんじゃソレを理由にウチに預けられたんじゃが……」


 爺さんは俺を見て顔を顰めた。


「おいおい、儂に怖い顔すんな。チビるだろうが」


「ああ、悪りぃ」


「そこは儂も同じ気持ちじゃ。だがままならん物はある」


「解ってるよ。続けてくれ」


「それだけじゃ。幾人か街から街に移動中に捕まった奴等からの情報なんじゃが口が物凄く固いらしくてなプロの拷問吏が口を割らせられないとかちょっと普通じゃない」


「いやいやいやおかしくねーか? プロがマジにやって口割らせられないとかどんな忠誠心だよ」


「変じゃろ?」


「変だ」

 それだけ言って爺さんに背中をみせる。


「どこに行く?」


「一味の面を見に行く」


「ほう、理由は?」


「今んトコ聞いた話ばかりで座りがわりぃ。実際に会ってみりゃ組織の匂いつうのかな。貌が解るだろ」


「……なるほどの。鵺ではあるまいし実物は見ておいて損はないか」


「だろ」


「儂も行く。その方が許可も取りやすかろ」


「んじゃあ玄関に集合な」


「うむ」





「ぶはは、なんじゃあそれ? 下手くそ。丸わかりじゃぞ?」


 合流後、ジジイは俺を見て即座に吹き出した。何も変わった様に見えない筈なのに……。


「何で解るんだよ…… ああっもう、うるせぇ! ジジイ位しか解らんからいいんだよ!」俺は頭を抱えた。頑張ったんだけどな。


「呵々、まぁそうじゃな未熟者め。精進せえ行くぞ」


 そういう事になった。


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