表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

流動

灯台の真下は、思いの外ごちゃごちゃしていた。


ここは元々施設があった島なのか放置されたコンテナや木箱が散乱し、得体の知れない薬品の容器が転がっている。


私はそんな周囲を定期的に見回しながら一つ一つ物色するが、使い方はおろかどういう代物なのかわからない機具や薬剤ばかり入っていて手に取る気も起きなかった。


「やっぱり灯台の中を見るしかないか……」


半ば諦めるように灯台を見上げる、周囲のこの様子と近くにあんな奴らが屯ってた事実からこの中を探しても良い結果は得られない可能性の方が高い気がしたからだ。


「言ってても仕方ない、しっかり警戒して……」


ナイフを構えてながらゆっくり扉を開く、めちゃくちゃ嫌だけどなにか出てきたらナイフで仕留めるしかない。


「よし、なにもいないみたい。一階も大したものはなさそう」


入ってすぐの出入り口付近は思った以上に物が少なかった、どうやら散らかってたら出入りが困難になるという当たり前の考えの元、ちゃんと整理整頓されているようだ。


しかし、木箱の上には飲みかけのペットボトルが置かれていて、ここに人がいたことを私に教えている。


「うーん、ダメ元で上も探すか……」


すぐに階段を上がっていき2階を探す、デスクにパソコンと日誌が置かれていたが、パソコンは壊れていて電源がつかず、日誌も大体が「異常なし」でたまに漁船や個人所有の船の誘導をしたことが書かれている程度だった。しかし内容より気になったのが……


「これ、3年前から書かれていない……この島って結構前に放棄された島ってこと?」


日誌の最後の日付が3年前で止まっており、これより先の記述がない、よく見たら最後のページまで書かれているので新しい日誌に変えたのだろうけど、ならその日誌はどこにいったのだろうか。


「この島って元々何のための島だったんだろう……いやいや、そんなこと考えてる場合じゃない!早く蒼のところに戻らないと!」


余計な考えを振り払いすぐに捜索を再開する、せめて股間の不快感を払拭できる物がないか一つ一つ引き出しやロッカーを確認するけど、どれもこれも空っぽだ。


「ん?タオルだ!あんまり数無いけどとりあえずこれで……あ、それにジーンズもある!」


ロッカーの一つを開けるとタオル数枚が畳んで置かれ、その上にはジーンズがハンガーにかけてあった。よく見たらベルトまで残されていて、サイズが合わなくても強引に締めることができそうだった。


急いで下を脱ぎ、一枚を拭き用に使いもう一つを生理用品代わりに敷いてジーンズを穿く、もう血まみれの服は使えないから放置するしか無い。


「うーん……やっぱり感じ悪い、さっさと漁って戻ろう」


この階に何もない事を確認して上に登る、すると何か外から音が聞こえてきた。


「やばっ!外に何かいる……見つかりませんように……」


なるべく音を立てずに階段を上り、次の階に警戒して乗り込む。


「早く回収して一番上で外の様子を見なくちゃ」


見ればこの階は倉庫兼寝泊まりする場所となっており、ちょっとした棚や机、そこに置かれた家電や簡易的なベッドがあった。


私は手当たり次第に戸をら開けたり使えそう物を物色していると、机の引き戸に鍵がかかっているのが分かった。どうやら全部に鍵が付けられるようで全てしっかりロックされていた。


とはいえ、鍵は見当たらないけど、そもそも机は古く鍵もガタついている。


「これならナイフを使って開けられるかも」


早速ナイフを鍵穴に差し込むけど流石にこれは無理だった、すぐにアプローチを変えて隙間にナイフを差し込んでテコの原理でこじ開ける。


「ふんぬ〜……うわっ!!」


渾身の力を込めると、勢いよく開き私も尻餅をついてしまう。


「いたた〜……中身は!?」


急いで中を確認するけど、そこには何かCD ROM数枚と、何かの鍵が入っていた。


「こんなの今は必要ない!下は!?」


急いで下を開けようとすると、衝撃で鍵が壊れていたようであっさり開いた、そして……その中を見て私はギョッとした。


中身は、小型のハンドガンだった。ご丁寧に弾まで一緒に入っている。


既に見慣れた物なのに、これが島が機能していた時代から常備されていたという事実に冷や汗が出る。


「でも今はありがたい、もらって行くよ」


すぐに取り出して弾を確認する、しっかり装填までされており、いつでも撃てる状態になっているようだった。


「最高ね、それはそうとあんな音出して気づかれなかったかな……」


こっそりと窓から外を見る、すると相当高い所まで登っていたようで、窓の外はこの辺りの景色を一望できる絶景だった。


「観光で来てたなら感動の涙でも出してただろうなぁ、それよりあの音の主はどこ?」


外を観察すると、高すぎて灯台の根本を見ることはできなかったけど、周囲や最寄りの森の様子くらいならよく見る事ができる。


この島がどれほど広いのか分からないけど、遠くの建築物も大きいものは視界に入ってくる。特に、島の中央あたりにある謎のドーム型の大型建築物は島の端であるこの灯台からもその存在感を感じる事ができた。


(あんなのまであるの……?どんな島なのよここは、それに……)


私は視線を灯台の根本に持っていく、そこでら森の方へと単独で向かう人影が確認できた。足取りから余裕のある感じが伺えて私は思わず首を傾げる。


(一人?それならさっきのスキンヘッドの連中じゃない、それならなんで……)


私は人影が消えるまでその姿を凝視する。


(おかしい、もしあいつがさっきの戦闘音を聞いてるはずなら確認の為にこの灯台の中まで調べてても不思議じゃない、敵が待ち伏せしているかもしれないと考えて灯台の中までは調べなかった?だとするならあんな悠長な歩みなどせずすぐに引き返すはず……あいつはわざとこの中までは調べなかった……?)


異様な人影に得体の知れない恐怖を感じた私は、すぐに部屋を出る為に探索を再開する。食料は見つからなかったけど、残りの弾丸と先の鋭いペーパーナイフ、電池切れの懐中電灯、そして軽い怪我なら治せそうな内容の救急箱を見つけ、それと見つけた鍵も一緒にバックパックに詰めて更に上に行く。


上は頂上の灯室だった、流石に何もないだろうと思いつつも探索していると……あまりにも予想外のものが見つかり思わず言葉を失う。


それは、いわゆるスナイパーライフルと呼ばれるものだった。かなり大きなもので、それが備え付けられている。


「どうしよう……こんなの流石に使えない、でもここに置いていたら誰かに見つかって使われるかも……それならとりあえず持っていって洞窟に隠そう」


そう判断して、ライフルと背負い弾をバックパックに入れる。予想通りめちゃくちゃ重い、正直海に捨てることも考えてけど、心の隅にあったら役立つかも……という考えが出てきてしまいその判断をする事ができなかった。


急いで灯台を降りて元来た道を戻る、一応警戒したけどあの人影はもうどこにもいなかった。


………………


「あっ!!愛信和さん!戻ってきたんですね!!」


夕方、奇跡的に何事と起こらず洞窟まで戻ると、待ちわびていたように蒼が明るい顔で駆け寄ってくる。この状況で二人とも無事なのはあり得ないと思っていただけに、熱心でもない私でも神に感謝したくなる。


「良かった……蒼も無事だったんだね、こっちも大怪我はしなかったし、それなりに物資も手に入った」


そう言ってバックパックを下すと、いやでも存在感を放つライフルに蒼が目を丸くした。蒼の持っていたライフルとは違い、軍隊とかで使いそうなそれは、流石に勝手が違うと彼女も分かったようだ。


「こ、これ……使うんですか……?」


「いや、こんな大きくてマニュアルのない銃は使い方わからないし……だから洞窟の奥に隠しておいて誰にも使わせないようにしようと思って持ってきたの」


私は大型ライフルを握って洞窟の奥へと持っていく、奥は熊の巣があって暗いという予想通りの様相だった。私はあえて暗い岩壁の隙間にライフルと弾を押し込んでその位置を蒼に見せる。


「ここに隠したからね、どう扱うにしても場所はちゃんと覚えておいて」


「はい」


結局、ハンドガンくらいしかまともな戦利品は無かったけど、蒼は十分です!と言って疲れた私に残った食料を多めに私に渡してきた。正直疲れてお腹ぺこぺこだったからありがたい。


それに生理用品も蒼のバックパックに無事なやつがあり、真っ赤になったタオルを捨ててちゃんとしたやつをつける。こういう時に現代製品のありがたみを感じる。


二人で残った食料を食べ、もうすぐ暗くなるという事で、一つの毛布に二人寄り添って包まり、岩壁に寄り添って眠ることにした。巣や熊の死骸の側は流石に匂いがアレなのでなるべくその二つから離れた位置でゆっくりと身体を休める。


「ありがとうございます、愛信和さん」


「なに?急にさ」


「あなたのおかげで今も生きていられているんです。感謝してもしきれないんです」


「今更ね、私も蒼がいなかったらきっとどこかで死んでだと思う」


「それなら、必ず二人で生き残ろうね」


「そうだね、だから早く寝て身体を休めよ?」


「はい……」


目を閉じ静寂の世界を全身で感じる、蒼が横にいる安心感からか、体の疲れがどっと押し寄せて睡魔が体を包んでいく。


ふと、蒼が私の手を握る感覚を頭の隅で感じながら、私の意識はまどろみの中に消えていった……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ