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敵か味方かは使い方次第

「今度は虎とか……本当に最悪……」


私が目の前の獰猛な脅威と睨み合っていると背後からさっきの男たちの大声が聞こえてきた。


「いたぞ!こっちだ!」


「くっ……さっきの声で位置がバレた、この状況はかなりヤバイかも」


私は素早く意識を視覚に集中させるとまた視界がぼやけて虎の動きがスローモーションになった。


どうやらさっきの男たちの声に反応してしまい、気が散った私に攻撃をしようと飛びかかろうとしたようで、私は素早くそれを回避してナイフを抜いて構える。


(このまま逃げても今のふらふらの体じゃ追いつかれるし、森を出ればあの三人組にも見つかる……だけどこのままやりあってても結局連中がやってくるだろうし……この状況を打開するにはもうこれしかない)


「キャアァァァァ!!」


私はわざと悲鳴を上げ、男たちに位置を把握させる。そうしてすぐさま灯台の方向へと走り出して連中を誘い込む、このまま上手くいってくれると良いけど。


「いたぞ!お前は回り込め!」


「よし、このまま大人しく着いてきてほし……ッ!?」


合図の声が聞こえてくる方を向き、自分の作戦が順調にいってることを確認していたその時、急に視界がボヤけて普段なら聞こえないように妙な音が聞こえだし、その中で風を切る音が私の真後ろから近づいてくるのが分かり、咄嗟に振り向く。


見ると視界が逆にクリアになって全ての動きがスローになり、そっちから何か細長いもの……ボウガンの矢が飛んできているのが分かって寸前でそれを躱す。少しボウガンの矢が私から逸れるように曲がった気がするけど躱せたならどっちでもいい。


「チィ!外した!そっちで仕留めろ!」


どうやら蒼を襲った男が先回りしていたらしく、ボウガンを避けたのを確認して移動を始めていた。しめた、あの男に押し付ければ……


「速く、もっと速く動いて……!」


自分の脚に念じるようにそう呟く、そうしていると視界がボヤけて少しずつ私の脚の回転が加速していくのが分かった。


スピードが上がって、男が私に気づいてボウガンをリロードをするよりも早く、私は男の前に到着する。


「うわっ!」


「さっきはどーも」


動けなくなった男に適当な挨拶をして、私は男を飛び越えるように大きく跳躍した。


当然普段の私、というか普通の人間では出来ない動きなのだが、この時の私は何故か出来るという確信があり、実際にそんな超人じみた事をやれてしまった。


「グルゥオオオオ!!」


「え?うわあぁぁぁぁ!!」


そんな私の動きに呆気に取られている男に、私の後を追いかけていた虎が襲いかかる。どうやら獲物は誰でもよかったようだ。


「どうした!?うわっ!と、虎ぁ!?」


それと同時にフードにグラサンの男が拳銃片手に現れ、目の前の虎に発砲する。撃った理由もスキンヘッドの男を助ける為などといった殊勝なものではなく、単に驚いて反射的に撃っただけのようだ。


「ガグゥ!?グ……グルゥアアアアア!!!」


「うわ!やめ……ギャアアアアアア!!!」


攻撃に逆上した虎は、獲物をグラサンの方に変え、襲いかかって八つ裂きにしてしまう。


「う……私は殺してないからね!」


自分に言い聞かせるようにそう叫ぶと、私はその場を離れる。タカ君が言ってたけど、一度興奮状態に陥った動物は手がつけられない程凶暴になるらしい、そんな状況じゃ次にスキンヘッドを襲ったら今度は私の番になってしまう、それならもうここに居る理由はない。そう思って逃げ出そうとしたら……


バンッ!というか音と、バカァ!という音が私の後ろで同時に響き思わず振り向く。その瞬間、私の目に飛び込んできたのは、赤い血肉の飛沫を上げて虎の頭部が弾け飛ぶ瞬間だった。


「チッ、一人やられたか……おい!そこの女ァ!!」


自分の位置を知られている……それが分かった瞬間私の体を恐怖が支配し、木の裏に隠れると手で口を塞ぎへたりこんでしまう。


「お前のその動き、相当覚醒が進んでいるようだな!お前みたいなヤツは戦力になるかもしれん!だから今回は見逃してやる!」


男は何を言ってるんだろう……?覚醒?戦力?何より見逃してくれるってどういうこと……?


「次に出会う時までに誰の側につくか決めておくんだな!おい、いつまで座ってるんださっさと立て」


「あ、ああ……」


「クソ、埋めるくらいはしてやるか……」


剃り込み男はそれだけ言うと、ずっと腰を抜かしていたスキンヘッドを立たせた後、グラサンの死体を引きずって二人でどこかへと去っていった。


「…………行ったの?それならお言葉に甘えて退散させてもらおう、あいつらがいたんじゃ灯台の方も何も残ってないかもしれないけど、それでも行くしかない」


私は周囲を見て危険がない事を確認すると立ち上がる。安全だと分かると股の不快感が再び気になってしまう。


「うう……とりあえず着替えが欲しい……」


なるべく別の事に意識を持っていきながら私はすぐ目の前まで来ている灯台を目指した。

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