表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

シビア母さん

作者: Letz

 四月○日


 僕は、今日から社会人になる。

 子供の頃からやんちゃしていた僕。しかしその僕が、見事東大に合格し立派に社会に出られるようにまでなったのは、他でもない母さんのおかげだ。

 時には優しく、時には厳しく、いつ何時でも僕の事を気にかけ、育ててくれた。

 ……いや、まぁ確かに優しいというのは間違っていない。事実、いつもは母さんは微笑を絶やさない、にっこりほんわかした雰囲気を纏っている。

 ……そう、いつもは、だ。

 母さんは、怒ると怖い。ただ、単純に怒ると表現するのは違う。

 言うなれば、そう。


 母さんは、怒るとシビアになる。


 語源は、厳しい、過酷。母さんは僕を叱る時はいつもシビアになった。しかし、そんな母さんの教育が、いつのまにか僕に東大、のち就職という輝かしい道のりを歩ませていたのかもしれない。

 思い起こせば、母さんのシビア教育が始まったのは、確か僕が小学生になってからの辺りだった。

 その頃が一番ワンパク全開の頃だったから、母さんのシビア教育も比例して一番多く、一番厳しかったはずだ。

 目を閉じると、思い出す。そう、あんなこともあったな――



   *



 ケース1 皿を割った


 バリィン!!

「うわぁ! やっちゃった!」

「どうしたの、ナオキ?」

「ごめん母さん、お皿割っちゃった……」

「弁償しなさい」



 ケース2 ニンジンが食べられない


「うぅ……ニンジン食べたくないよぉ……」

「ほら、ナオキ。早く食べないと、いつまでも片付かないわよ」

「だって……ニンジン嫌いなんだもん。美味しくないから」

「……そのニンジンいくらしたと思ってるの? 母さん奮発して、ちょっと高めのニンジン買ってきたのよ。ナオキにどうしてもニンジン食べてほしくて奮発したのに、それをナオキは食べられないと言うの? ねぇ、どうなの? 聞いてるのナオキ。どうなの? ちょっと聞いて……」



 ケース3 ゲームのやり過ぎ


「ゲームはやっぱりおもしろいなぁ。ピコピコ……」


 ――二時間後――


「こら、ナオキ! ゲームは一日一時間の約束でしょ!?」

「うわぁ!? 見つかっちゃった!」

「罰としてセーブデータを消去します」



 ケース4 テスト0点


「ただいまー」

「おかえりナオキ。算数のテスト、どうだったの?」

「ごめん、母さん……0点取っちゃった」

「あなた、そんな点数で東大受かると思ってるの?」


 重ねて言うが、これは小学生の頃の話だ。



 ケース5 ケンカに負けた


「ただいま……」

「おかえりナオ……ちょっと、どうしたのその傷?」

「友達とケンカしちゃった」

「友達はどうしたの?」

「えっ? どうしたって……」

「その傷の十倍位は、相手に返したんでしょうね?」

「ううん。どっちかって言ったら、僕が負……」

「十倍返しもできないような子は、家の子じゃないわね。不法侵入よ。親はどこ?」



   *



 ……なんか、これだけ見ると普通に厳しい母親みたいだな。違うぞ!? 三時のおやつにケーキ買ってきてくれるような、優しい母さんだったぞ!? いつもは! ……何を言ってるんだ僕は。

 とにかく、この5つのケースはほんの一握りの部分だ。まだまだ色々とシビアなエピソードはあるが……いかん、もう家を出ないと、初日から遅刻するな。

 だから、最後に記しておこう。


 母さん、今まで育ててくれてありがとう。

 僕はこれから、社会人になりま


「ちょっとナオキ! あなたいつまでそんなもの書いてるの!?」

「うわぁ! 母さん!?」

「さっさと会社行きなさい! もし初日遅刻なんてしたら、鍵取り上げて一週間は家に入れないからね!!」

「い、行ってきま~す!」



 最後にもう一度、言わせてください。

 母さんは怒ると……いや。


 母さんは、シビアです。

初投稿です。

拙作ですが、感想頂けるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 面白い
[一言] ケース5はナオキくんが可哀想になって来るなぁ 母さんの「親はどこ?」ってウケたww
[良い点] まとめ方がうまい
2013/02/01 18:52 あいうえお
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ