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83.卒業後の私達

 王立学院を卒業して一年後、私は十八歳になった。


 先日大々的に戴冠式が行われ、晴れてアレクシス国王が誕生した。私との結婚は来月に迫っている。


 オスカーは飛び級して二年で卒業するとブレンネン王国に居を移し、立派に国を治めている。ベアトリクス様もオスカーの補佐として陰で支えているらしい。ベアトリクス様の罰則は『ヴェールハイト王国に二度と立ち入らないこと』と『決して自ら命を絶つことをせずオスカーのために力を尽くすこと』だったそうだ。


 ルキは相変わらず鍛錬の日々で、ますます精悍になっていく。ちょっと野球をしてみて欲しいが、一向にやってくれない。無念だ。


 お兄様とフランツは王都でもすっかり良い仲である噂が広まって、ご令嬢達の猛攻はすっかり収まってしまった。しかし黒騎士団への研修希望に見目麗しい令息がやたらと増えて、お兄様を熱のこもった目で見ているのが気がかりではある。でもそこは上官と研修生だから何とかなるだろう。もし猛攻をしかけられたら、ご令嬢相手と違ってちょっとだけ凍らせてもいいかもしれない。ダメかな。


 ヒューは王家に関する発刊物の校閲者として王城に勤務しており、元編集者として校正能力の高さを遺憾なく発揮している。兄姉達はすっかりヒューへの態度を改めたようで、『オリーヴェ家の希望』とまで呼び始めたらしい。


 ヒューのお姉様方は社交界でもおしゃれ上級者として名を馳せているが、未だに婚活中のようなので頑張って欲しい。『カールにまた会いたい』とぼやいてるそうだが、多分もう二度と会えない。申し訳ない。


 アイヒェル先生は私、ルキ、ヒューが飛び級せず三年間在学したことで、入学希望者が増加しクレームも来なくなったと、卒業式ではご機嫌で『風邪ひくなよー!』と言ってきた。飛び級しなかったのではない。出来なかったんだ!


 卒業式のアイヒェル先生はふわりとした栗色の髪をぴっちり撫でつけていて、舞踏会直前に必死に覚えた招待客リストの『甘栗ピタ夫』さんであると思い出した。やはりあだ名で覚えるのはやめよう、と心に誓い、最近は結婚式に向けて本名で暗記中である。


 ちなみに卒業パーティーではレクシーがエスコートしてくれて、勿論婚約破棄も断罪も無くて心から安心した私がいる。




 レクシーの転移魔法陣のおかげで好きな時にシュテルン本邸と行き来出来るので、最近はお祖母様・お母様が王都で開かれる夜会やお茶会にいそいそと参加している。行く先々で豪華ゲストとして扱われている次第だ。


 そしてどの会でも多くの参加者にお兄様とフランツのことを尋ねられるらしいが、二人とも面白がっているので一切のフォローをしていない。そして益々世間は『レオフラなのか、フラレオなのか』、という心からどうでもいい議論で白熱している。


 カメーリエ伯爵とラヴェンデル宮中伯が最近やたらと飲みに行ってるという噂で若干心配したが、お兄様とフランツの薄い本を肴に『これは尊いッ』『滾りますな』とか言って飲んでいる事実が発覚したので心配して損をした。



 私は私でいまだに黒騎士団の相談役エンジェルとして活動している。今は騎士達のメンタルのサポートをすべくカウンセラー育成中だ。怪我等で引退した元騎士で、現役騎士の悩みに共感出来る方達を再雇用しようと思っている。トレーナーやコーチにも既に元騎士を再雇用中なので、引退後も手厚いと騎士志望の若者が後を絶たない。相談役として嬉しい限りだ。いずれ白騎士団でも同じような体制にしていくつもりだ。


 白騎士団でも数年前からトレーニングマシンやプロテインメニューを取り入れていて、見目麗しい細マッチョだった近衛兵達も今ではガチムチで見ていて非常に楽しい。


 筋肉好きはこの世界にも多いので、そんな近衛騎士達の半裸の姿絵が売られていたりする。近衛騎士は王宮所属なので販売前にヒューがチェックするのだが、カレンダーと画集を他国でも販売しようと画策しているほどによく売れているらしい。筋肉で経済が回っている。



 魔石による武器も、レクシーが一瞬で数種類の属性の魔力を魔石数千箱分満たしてくれたので、ヴェールハイト王国の軍事力は過去イチであるのは間違いない。


 周辺国にも争いの種は生まれず、ヴェールハイト王国の同盟国として安定した生活を送っている。


 この争いの無い平和な日々がずっとずっと続いて欲しい。千年前、子供だった私達が望んだ世界が、今も千年の間続いているこの奇跡は、たった一人の大魔法使いから始まった。



 もうすぐ私の夫となる人から。






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