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第89話 新暗黒騎士パーティーの出発

 翌日、俺たちは国王に呼ばれて宮殿前の広場にいた。


 広場には、多くの人たちも集まっていた。


 俺が正式な暗黒騎士に任命されることとなった。

 そのお披露目もかねていた。


「すでに知るところであろう。暗黒騎士パーティーのスレッグ隊は、任務の途中に命を落とした。先日、暗黒騎士が不在となったゾクラナ帝国を襲う者が現れた。だが、それを救ってくれた者たちがいる」


 国王の横に並んでいる俺たちや太陽騎士団に視線がいっきに集まる。


 そして、観衆が拍手と歓声をあげた。


「長年、隣国ゾンネの国と力を競わせてきた太陽騎士団」


 エルドウィンたちが観衆に手を振ると、また拍手が大きくなる。


「そして、暗黒騎士パーティースレッグ隊に所属していた賞金稼ぎキール・ハインド。今回、このボザーダイアを敵の手から救い、敵の本拠地を壊滅させた立役者である」


 太陽騎士団のとき以上に、拍手の勢いが増した。


 いやいや、そんな風に紹介しなくても……。


「ほら、兄さん。手を振って」


 リーゼが言ってきた。


「そうだよ。ほら」


 と、エレナに手を取られて操られるように手を振った。

 エレナも笑顔で手を振る。


「ボザーダイアを救ってくれて、ありがとう」

「町を守ってくれて、ありがとう」


 などと、観衆が叫んでいた。


「そんなキールを新しい暗黒騎士に任命する」


 国王の声が一帯に届くと、今まで以上の拍手喝采となった。


「皆の者も納得のようだ。それでは、キールよ。前に」


「はい」


 俺は国王の前に立った。


 国王は、侍従から黒いマントを受けとった。

 そして、俺は国王にそのマントをつけてもらう。


「本当に良いのか、マントだけで。暗黒騎士の鎧も用意できたのに」


 国王が言った。


「お気づかいありがとうございます。今の格好のほうが動きやすいので、マントだけで大丈夫です」


「そうか」


 国王は、俺の手首をつかんであげた。


「ここに、八大騎士の1つ、新しい暗黒騎士が誕生した」


 ふたたび、拍手で祝われた。


 若き暗黒騎士カミルたち3人も拍手してくれているのが見えた。


「そして、新生暗黒騎士パーティーを発足する。その仲間は、エレナ・ツェッペリン、リーゼ・エインスワース、カリン・レンナルツだ」


 エレナたち3人も暗黒騎士の証である黒いローブを身につけた。

 あたたかい拍手に包まれた。


「それでは新生暗黒騎士パーティー、太陽騎士団よ。闇の指輪をしっかり葬ってきてくれ。頼んだぞ」


「「はい」」


 そのままボザーダイアを出発しようとしたときだった。


「キール」


 カミルたち3人がリフィーに近寄ってきた。


「カミル、ザラ、アーモット。俺たちがいない間、国王をはじめ、国のことを頼んだぞ」


「はい、それはもちろん……」


 しかし、カミルはまだなにか言いたげだった。


「ほら、カミル。しっかり言え」


 ザラにこづかれた。


「わ、わかっている。キール」


「なんだ?」


「闇の指輪を捨てる任務から帰ってきたら、俺たちを弟子にしてくれ。一人前の暗黒騎士になりたい」


 カミルをはじめ、ザラとアーモットも真剣に俺を見つめてきた。


「そうだなぁ、任務から帰ってきたら考えてやる。気が変わらなかったらな」


「えっ、はぁ?」


「もともと俺は賞金稼ぎだからな」


 そう言いながら、リフィーのたづなを引いて飛びあがった。


「ちょっと、本当に戻ってきてくれよ」


 カミルの声がどんどん遠ざかって、すぐに聞こえなくなった。


 リフィーを追いかけて来るように、太陽騎士団を乗せたオレンジ色の獣が着いてくる。


 俺たちは、首都ボザーダイアを出発した。




 ゾクラナ帝国を南下した。

 そして、地獄の谷のあるデルフケヤ大陸との間にある海を最短距離で渡る。


 俺たちはリフィーでそのまま空を飛ぶ。

 太陽騎士団も獣に乗って海を渡る。

 オレンジ色の獣たちは、海に沈むことなく、海面の駆けることができた。


 なんてすごい獣たちだ。

 まったく世界ってのは、すごいな。




 日が沈みかけるころ、デルフケヤ大陸のエゼル岬に到着した。


 大陸といっても大きな島である。

 リフレリアと同じくらいか……。

 まさか、またココに同じ目的で戻ってくるとはな。


 そのまま陸地を進んで、ミデンカの町に到着した。

 日も暮れて暗くなっている。


 あれからずいぶん時間がたったはずだが、この町はあまり変わってないな。


「よし、飯にしよう」


 と、なんの迷いものなく店に入っていく。


「キール、この町に詳しそうだな」


 エルドウィンが聞いてきた。


「詳しいもなにも、1度来たことのある町だからな」


「へー。さすが賞金稼ぎ。世界を渡り歩いているだけあるな」


「いや、ここに来たのは、前の暗黒騎士パーティーと一緒だったときだ」


「お主たちは、ここまで来ていたのか」


「あぁ」


 店に入ると、店内がざわついた。


「おい、アレ、太陽騎士団じゃないか?」

「八大騎士のオレンジ色だろ。はじめて見た」


「あれ、もう1隊は? 見たことない顔ぶれだ」

「黒いってことは、暗黒騎士パーティーか?」


「暗黒騎士パーティーは、ずっと前に町を出ただろ?」

「ニセモノ?」

「太陽騎士団と一緒ってことはそうなんだろ」


「また八大騎士が来るって、やっぱり……」

「つい先日も八大騎士がいたよな……」

「あぁ、みんな闇の指輪を運んでいるらしい」

「それじゃあ、死霊の山を通って、地獄の谷に行くのか」


 あちこちのテーブルで俺たちの話をしていた。


「すごく見られてますね、私たち」


 カリンが困惑して、周囲を見ないようにしていた。


「そりゃあ、太陽騎士団と暗黒騎士パーティーだからね」


 リーゼは堂々言った。


「さぁ、ここが最後の町だ。しっかり食べて明日からの峠越えに備えてくれ」


 エレナたちや隣のテーブルの太陽騎士団に言った。


「このあとのルートは?」


 エルドウィンが聞いてきた。


「死霊の山をのぼって、そのまま地獄の谷に入る」


「それは簡単じゃな」


「それがそうでもない」


「なんじゃ、1度行ったことあるんじゃろ、キール」


「死霊の山の途中までな。山のルートを探索しているときに、俺は暗黒騎士パーティーを追放されたから、山の途中から先は正直わからない」


「でも、聞いたところじゃ1本道なんじゃろ?」


「あぁ、そのはずだ。だが、行けるのは人間だけだ」


「兄さん、どういうこと?」


 リーゼが聞いてきた。


「言葉のままだ。山に入れるのは、人だけ。リフィーや獣たちに乗っていくことができないってことだ」


「わはははは。道が狭くたって、うちの獣たちはどんな斜面でも登れるぞ」


 エルドウィンはじめ、太陽騎士団もうなずいていた。


「そもそもリフィーや獣たちが入れない山なんだよ。山に近づくと、足が進まなくなったりする」


「そんなバカな話があるか」


「明日、確かめてみればいい」


「ほぉ、さすが死霊の山。いわくつきじゃの」


「ふん。はっきり言って、敵もいわくつきだ。面倒くせーぜ」


「ちょっと怖くなってきました」


 カリンの表情が暗くなった。


「カリン、大丈夫だよ。キールがなんとかしてくれるから」


 と、エレナ姫がにっこり笑う。


「私もいるから安心して、カリン」


「はい……」


「まったく、頼りにしてるぜ」


 久しぶりのミデンカの町の料理が運ばれてきた。


 明日は、死霊の山へ。


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