第87話 シックザールとの決着
「教皇さま……」
「ついに神のお姿に……」
「ヴェラ教皇さま、バンザイ」
教会の外で太陽騎士団を攻撃していたシックザールの信者たちが、龍の姿のヴェラのもとに集まっていく。
ひざまずいて両手を合わせて、ヴェラに祈りを捧げはじめた。
「団長、これは……」
太陽騎士団の騎士が聞いてきた。
「あれがシックザールのボス。龍と一体化しているようだの」
エルドウィンがヴェラを見あげて答えた。
「もうこれは、人の姿ではない」
太陽騎士団でさえも、あの姿に驚きを隠せないか……。
「外が騒がしいと思えば、獣がいたのか」
太陽騎士団の乗ったオレンジ色の獣をにらみつけたヴェラは、口を勢いよく開いて、火を吹いた。
太陽騎士団の獣がいっせいに逃げ回る。
獣たちを追うように、ヴェラの火があちこちに広がっていく。
突然、俺の腕がつかまれた。
「カリン、大丈夫だ」
俺とリーゼのマナで保護する。
炎を浴びても、まったく熱さを感じない。
——ここにいてもラチが明かないな。
「エレナ姫ーーー」
空に向かって叫んだ。
クァーーー
「キールー」
エレナの乗ったリフィーが猛スピードで降下してきた。
またヴェラに火を吹かれる前に、リフィーに乗って地上を離れた。
「うわー、熱いぃ……教皇さま」
「や、やめてくださいぃ……」
火から逃げ惑う信者たち。
しかし、その中には火を浴びて燃え焼けていく者もいた。
「ひどい……」
リーゼが氷の魔法で火を消すが、手遅れだった。
「シックザールってのは、自分さえよければ、身内も敵も関係ないってのかよ」
「兄さん、規模が広すぎる……全部を消すことはできない……」
さっきまで俺たちのいた教会前一帯もすでに火の海だ。
太陽騎士団は?
「無事か」
少し離れた尾根の上にいた。
「あぁ、無事だ。あんな火くらいにやられるような太陽騎士団ではない、わはははは」
エルドウィンは余裕を見せた。
「しかし、団長。とはいえ、あんなデカい龍、どうやり合おうって?」
獣の男が聞いた。
「決まっておろう。よじ登って、直接、攻撃すればよい。わはははは」
「あぁ、それなら簡単だ。いくぜ、ラメフカミア」
獣の男は、自分の獣の名前を呼んで飛び出してしまった。
「あっ、おい、ペピン。だからって、突っこむな」
騎士の男が言ったが、もう遅かった。
ペピンの乗った獣は、軽々と火を飛び越えて、ヴェラの体に飛び乗った。
龍の背を駆けのぼっていく。
「なにかかゆいな」
ヴェラが体を蛇のようにウネウネとくねらせる。
ペピンの乗った獣は上手く走ることができず、バランスを崩す寸前に龍の体を蹴って、飛び退いた。
「なぬっ、そう簡単にはいかないか……」
エルドウィンが顔をゆがめた。
「デカくても弱点はある」
「キール、なんじゃ?」
「額にうめこまれている珠だ」
「おぉ、あれか!」
エルドウィンをはじめ、その場にいた全員がヴェラの額を見た。
「珠を破壊すれば、あの体を保っていられなくなるだろう」
普通の龍なら、死んでしまう。
「そうとわかれば、龍の珠を壊しにかかるぞ、太陽騎士団」
「「はい」」
「いいか。まずは我らの機動力で、龍を惑わせる。そしたら、合技じゃ」
「「了解」」
太陽騎士団を乗せた獣たちは、いっせいに崖を降りていく。
「よし。俺たちも上空へ。エレナ姫、頼んだ」
「うん」
エレナはたづなを引いた。
リフィーの羽が広がって羽ばたいた。
太陽騎士団で、獣に乗っていないモンクの男がヴェラの背中を駆けあがっていく。
ヴェラがモンクに火を吹く。
モンクは火を身軽によける。
うねる体に足を取られてバランスを崩して、龍の体から飛び退いた。
「目障りな」
ヴェラの周囲や体の上を走り回る太陽騎士団の獣たち。
火を吹き、尻尾で獣たちを追い払おうとする。
しかし、獣たちは軽快によけては、龍を翻弄する。
「ほらほら、こっちだ」
ペピンがヴェラの頭を引き寄せる。
輪っかになった龍の体をくぐる。
「グワッ、な、なにっ?」
ヴェラは自分の体に結ばれてしまった。
「ははは、団長、今だ!」
「わははははは、よくやったぞ。みんな、合技だ」
エルドウィンは剣を掲げると、エルドウィンの乗った獣がヴェラに走り向かっていく。
「「はい」」
エルドウィンにそれぞれの武器をかざす。
エルドウィンの剣先に、もう1つの太陽ができたかのように、大きな光の球ができあがる。
「合技・太陽」
エルドウィンは剣を振りおろした。
剣先の太陽が、ヴェラに直撃して爆発する。
「ぐわぁあああぁぁぁ」
シューッと、ヴェラの体が丸焦げになって、体から煙がのぼっている。
「キール、今じゃ」
「よし。カリン」
「はい。——窮・氷柱氷杭」
カリンがステッキを振った。
ヴェラの額の珠に、巨大な氷の杭が突き刺さる。
「ギャァアアアア……」
ヴェラはもだえ苦しんでいる。
「リーゼ」
「えぇ。——窮・剛岩流星」
まるで隕石が降るかのごとく、燃えあがる巨大な岩石がヴェラに直撃する。
額の珠に刺さっていた氷の杭がさらに深く刺さっていた。
珠の亀裂がさらに伸び広がっていく。
「兄さん」
「あぁ」
リフィーの背中から飛び降りて、黒剣をかまえる。
——暗黒覇王深貫閃
黒剣が龍の珠に刺さった氷柱ごと砕き貫いた。
龍の珠は、粉々に砕け散る。
「ウガァアアア……こ、こんな者たちに……私が……わたしがぁ……」
ヴェラは頭を左右に振って、力が抜けたように倒れた。
「か、神であるわたしを……お、おまえらに……罰が…………」
ヴェラの瞳が動かなくなった。
「ふん。罰がなんだって?」
ヴェラの体から細かい光が、キラキラと天へとのぼっていく。
龍の体がどんどん光へと変わっていった。
すべての光が天へ消えると、龍は跡形もなく消えてしまっていた。
——ヴェラ本人の体も残らなかったか。
辺りを燃やしていた火も、ヴェラがいなくなったことで自然と消えていった。
「キールー」
エレナたちの乗ったリフィーが降りてきた。
「わはははは、やったな。最後の一撃は見事じゃったぞ。さすが暗黒騎士じゃ」
エルドウィンをはじめ、太陽騎士団が集まってきた。
「きょ、教皇さまぁ……あっ、くっあぁぁあああ……」
生き残っていた信者たちは、頭をかかえて苦しみはじめた。
その額には黒い魔法陣が浮かびあがっている。
悲痛の叫び声とともに、黒い魔法陣が砕け散った。
信者たちは、意識を失って倒れていった。
「信者たちにかけられた魔法も解けたか……これで、シックザール魔教会は崩壊したな」
「えぇ、兄さん……」
怪我した信者たちをリーゼとカリン、太陽騎士団の女賢者が手当てした。
そして、変な夢でも見させられていたかのように困惑した元信者たちは、さっさと山を降りていった。
「さて、俺たちも戻るか」
「わっほい。ひと仕事終えての宴だ、宴!」
獣男のペピンがはしゃいでいた。
ついにシックザール魔教会を倒した俺たちは、首都ボザーダイアに戻る。
「おもしろかった!」
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