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第78話 闇の召喚

「よくも子供たちの未来を奪ったわね?」


 ヘルミーネが俺をにらみつけて、ステッキを強く握った。


「未来を奪ってるのはどっちだ? 自分たちの手駒にしたいだけだろ?」


「なにを言っているのかしら? ココに来られる子たちは、選ばれし子。これからのシックザールを担う子。そして、世界を手中におさめる子を育てるのが私の役目よ」


「その役目も今日で終わりだ」


「あら? 勘違いしてるのはそっちよ。シックザールを抜け、シックザールにかみついたらどうなるのか、死んで後悔しなさい」


 ステッキを強く振りおろすヘルミーネ。


 雪原の雪が集まりだして、巨大な雪の玉が2つ上下に重なった。


 ドスンドスンと跳ねながら、勢いよく近づいてくる。


 俺は、ギュッと雪を踏みしめて、駆け出た。

 そのまま雪の玉の中に突っこむ。


 そして、雪の玉を突き抜けると、雪の玉ははじけ飛んだ。


 一瞬でヘルミーネとの間合いを縮めた。

 その勢いのまま、黒剣をヘルミーネの腹部に突き刺した。


「なっにっ、ガフゥ……」


 剣を抜くと、雪を赤くした流れ落ちる鮮血。


「……なぜ、またマナが効かないの?」


「なにも聞かされていないのか……それは残念だったな」


 ヘルミーネは、自分の腹部に手を当てて回復魔法をかける。


「お前はブラックエリクサーを持っていないのか?」


 俺が聞いた。


「あんな未完成で不安定な効き目のもの、私は使わない。闇に飲まれるだけよ。私にはもっといい魔法があるからね」


 ヘルミーネは、まだ血が流れ出る腹部から手を外して、地面に手をかざす。


召喚・闇世界騎士イデヨ・ダークヴェルトナイト


 魔法陣から真っ黒い影が現れた。

 剣を持った騎士の姿をしている。


 ——この感じ、ブラックエリクサーを飲んで、闇に飲まれたヤツらと同じ。


 ——直接、闇から呼び寄せたのか。確かに、これならブラックエリクサーはいらないな。


 闇の騎士が剣を振りあげて、斬りかかってきた。


 黒剣で、闇の剣を受け止める。

 剣を振り払って、すかさず剣を振りおろす。


 闇の騎士は、サッと黒剣を飛びよけた。


 なるほど。

 動きは騎士そのものか。


 グッと足を踏みこんで、闇の騎士に斬りかかる。

 剣で受け止められる。

 その反動を使って体をひねって、胴体を切る。


 ——まったく切った感触がない。水を切ったよう感じだぜ。


 闇の騎士の胴体は、水面の波が落ち着くように元に戻る。


「ふふふ……さぁ、あなたには私が召喚した闇の騎士が倒せるかしら?」


 ヘルミーネが笑っている。


「兄さん……」


 サッと背後に手を向けた。


「大丈夫だ。お前たちはそこにいろ」


 わざわざリーゼに手を貸してもらうまでもない。

 ただ、剣が体をすり抜けてしまうのは、ちょっとやっかいだな。


 いつものようにマナで闇を封じる手もあるが……。


 闇の騎士が、勢いよく斬りかかってくる。


 体をすり抜けないタイミングは、相手が攻撃をしてきたとき。


 騎士の剣を受け止めるフリをする。

 剣と剣がぶつかる寸前、黒剣を高速で振り抜く。


 金属のぶつかった音が大きく響く。

 と、同時に、闇の騎士が吹き飛んでいく。


 教会の壁を突き破って、中へと突っこんだ。


「な、なんだと?」


「アイツを先に倒すのもいいが、術者を倒せばアイツも消える。効率的だと思って、しばしここから離れてもらった」


「ぐぬっ、ふざけるな。なにをしてる、闇の戦……し……っ」


 瞬時にヘルミーネの眼前に飛びこんで、黒剣をヘルミーネの腹に突き刺した。


 剣を抜いたその勢いで、両腕を切り落とした。


「ふぎゃぁぁぁぁぁぁ」


 ドバドバと鮮血が雪の上に流れ落ちていく。


「シックザールの好き勝手にさせるわけにはいかない」


 ヘルミーネに手をかざす。


「ふっ、ふ……ふざける……な……」


 ——烈・暗黒大火球弾レツ・ダークヒュージファイアボール


 黒い炎の球を放つ。

 ヘルミーネを飲みこんで、教会へ向かっていく。

 教会も飲みこむように激突すると、爆発して、黒い火柱をあげた。


 ——シックザールには、まだやっかいなヤツらいそうだな。早く、シックザールの本拠地を潰したほうがよさそうだ。


「うそ……司祭さまを一瞬で……」


 エレナたちのもとに戻ると、カリンが目を丸くして、俺を見つめてきた。


「さすがキール」

「さすが兄さん」


 エレナとリーゼが同時に言った。


「あ、あの黒い火は、な、なんですか……」


 カリンが聞いてきた。


「あぁ。ちょっと強い火炎の魔法だ。教会もこれで跡形もないさ」


「す、すごい人……剣も魔法も両方扱えるなんて……」


 すると、倒れていた子供たちが、次々と目を覚ましていく。


「みんな」


 カリンが雪の上をかけていく。


「カ、カリン……いったい俺たちは……」


「もう帰れるよ、みんな。あの人たちが司祭さまをやっつけてくれたから」


 子供たちは、まだ現実が受け入れられていないのか戸惑っていた。




 山と港町を何度か往復して、子供たちを雪山から降ろした。


 暗くなる前に、全員を連れてこられてひと安心だ。


「ありがとうございました」


 カリンとリーゼの説明もあって、子供たちは自分たちがシックザールから解放されたことを実感しはじめていた。


「あと、コレがないと家に帰れないだろ」


 と、俺は1人1人に3万セピーを手渡した。


 さすがに1人ずつ家に送り届けている時間はない。

 まぁ、ぶっちゃけ面倒だ。

 みんな15才前後だというから、自力で帰れるだろう。


「もし、足りなくなったら、自分たちでなんとしてくれ」


「「はい。ありがとうございます」」


 子供たちは、握りしめたことのないカネを大切にしまって、各々去って行った。


 カリンだけがまだそこに残っていた。


「なんだ? 帰らないのか?」


「帰ります。本当に、私を助けてくれただけでなく、みんなも、おカネまでくれて……その……なんて言っていいのか」


 カリンは、嬉しさと申し訳なさを同居させていた。


「なに。カリンが勇気を出して、あそこから抜け出していなかったら、まだみんなは教会にいただろうな。カリンが行動したから、今があるんだ」


「そ、そうですよ」


 顔をあげたカリンは笑顔になった。


「カリーン、行くよー」


「あ、うん。すぐ行く」


 カリンは振り返って、返事をする。


「あの、本当にありがとうございました」


「あぁ」


「シックザールをやっつけてください」


「もちろんだ」


 もう1度笑顔を見せたカリンは、仲間と一緒に町の中へと去って行った。


「俺たちも行くにしても、日が暮れかけてるし、出発は明日だな」


 またここから海を渡る。

 この海さえ渡ってしまえば、シックザールの本拠地があるという大陸だ。


「キール、お腹すいたよ」


 エレナが腕にしがみついてきた。


「それじゃあ、美味いものを食べに行くか」


「うん」


「えぇ。この町は、なにが名物なんでしょう」


「おもしろかった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「キールたち、今後どうするのっ……!」


と思ったら


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