第76話 賞金稼ぎ連合
夕食を食べていた店で聞いた宿に入った。
宿では、なんの疑いもかけられることなく、すんなり泊めてくれた。
俺が賞金首である情報は、賞金稼ぎたちにしか出回っていないようだな。
で、部屋はいつものごとく1つだ。
そして、いつものごとく両側を陣取られて寝る。
「いっしょに寝ると暖かい」
と、エレナが俺の肩に顔をくっつけてくる。
「あぁ、ここは寒いところだから、なおさらだな」
「兄さん……暖かい……」
リーゼも俺の腕を抱きしめて、顔を寄せてきていた。
「無理にいっしょに寝なくてもいいんだぞ、リーゼ」
すぐにギュッと腕にほどよい圧力がかかった。
「ここがいい」
はぁ。
まさか妹ともこうして寝ることになるとは、想像もしていなかったな。
長時間の移動の疲れもあって、すぐに寝入ってしまった。
翌朝。
外は相変わらず、空気が冷たい。
早いところ、暖かい地域に行きたいもんだ。
宿を出ると、すぐにその前の大きな通りが人で埋めつくされていた。
「いったい、なんの騒ぎだ?」
先頭に見たことのある顔があった。
「昨日は、よくも俺様をいたぶってくれたな、賞金首」
またお前か……。
昨晩、食事中にからんできた賞金稼ぎのヴォルフガングだった。
「今度は、なんの用だ?」
自分で聞いておいてアレだが、俺たちの首か……。
「今日は、昨日みたいなヘマはしねーぞ」
ヘマ?
お前が、ただ弱かっただけだろ。
言い返す気にもならない……。
「昨日、忠告したのに、まだこの町にいるとはそうとう余裕だな、キール・ハインド。お前は、今日で終わりだ。この賞金稼ぎ連合が、お前らの首をいただくぜ」
ウォルフガングの後ろには、賞金稼ぎと思われる輩がたくさんいた。
いったい、どこからかき集めて来たんだ?
わざわざ、深夜にここまで来たのか?
「その人数で、懸賞金を分けあったら、1人あたりたいした額にもならないと思うが」
「ふん。額だけで賞金稼ぎは動くわけじゃない。お前の首を狩りたいんだよ」
ウォルフガングの声が響いた。
「キール・ハインド、本物だ」
「SSS級の賞金首には見えない」
「あのきれいな女たちはなんだ?」
「女のほうがSSS級だ」
「もともと賞金稼ぎだったはずだろ?」
「なんで賞金首に?」
「いくつもの町や都を救ってきたって話だ」
「手配書が間違ってるんじゃないのか?」
賞金稼ぎの群衆が、ざわめき立った。
「あぁ、そうなんだよ。俺たちの手配書は間違いだ。悪の組織のしわざでな」
「ふんっ、そんないま作った嘘が通用すると思うか? れっきとした手配書があるんだ」
「キール、早くリフィーのところに行こうよ」
「姫さん、この状況で言ってくれるな」
「だって、キールは賞金稼ぎだし、悪いことしてないもん」
「そりゃそうだ」
とは言っても、簡単に通してくれる感じでもない。
「おや、もしかして、気にしているのは、コイツのことかな?」
ウォルフガングが手で合図をすると、群衆が左右に分かれた。
その先にいたのは、捕まえられたリフィーだった。
クァーーーン
「リフィー? ひどいっ。早く、リフィーを解放して」
エレナが叫んだ。
「リフィーを怪我させてねーだろうな、お前ら?」
「おっと、やる気になったか? コイツが怪我するかどうかは、お前らの行動しだいだ。万が一、逃げることでもあれば、コイツは……」
「キール、リフィーを助けないと」
エレナが言った。
「わかってるって……逃げる? はっ? 全員ぶっ倒して、リフィーは無傷で返してもらう」
俺は、1歩、足を前に踏み出す。
次の瞬間、賞金稼ぎたちがザッと1歩引く。
「おいおい、ビビってんのか? SSS級とはいえ、相手は1人。あぁ、もう1人女がいるか。でも、女だ」
「い、いや、俺は……」
「あぁ……賞金首になった理由がわからないし……」
「都を襲った化け物を倒したっていうしな……」
ざわざわと集団から、抜けていく者たちも出はじめた。
「チッ……。半分くらい減ったか……まぁ、やる気あるヤツが残ったってことだ。これだけいれば、SSS級とはいえ、倒せるだろ。強さには数だ」
ヴォルフガングはニヤリと微笑んだ。
「オオー」
と、賞金稼ぎたちの咆哮が響いてきた。
「キール・ハインドの戦いが見てみたい」
「すっごい速さで、一瞬らしいぞ」
「詠唱なしで魔法を使えるとか」
「結果が、すべてを語る。本物の賞金稼ぎがどっちか」
賞金稼ぎ連合から抜けたヤツらが、戦いの行く末を見届けようとしていた。
数が多い。
ムダに時間は使いたくないし、殺すと本当に賞金首になっちまいそうだ。
「兄さん……コイツらくらいなら、私がいっきに片付けてあげるよ?」
リーゼが俺の横に立って、微笑んだ。
妹よ、その笑顔が怖いぞ。
「できるだけ無傷で、鎮めたい。あの場にいる全員の動きを止められるか?」
「えぇ、もちろん」
「一瞬で、かまわない」
すぐにリーゼは、胸の前で両手を合わせた。
「烈・制停留居止魔法陣」
賞金稼ぎたちの足元に光の魔法陣が広がった。
瞬時に飛びあがったヤツもいた。
「なぬっ」
「くっ、体が動かないっ」
飛びあがったヤツらは、空中で止まっている。
地上にいるヤツらも身動きがとれずにいた。
「おぉ、あの女、スゲー」
「なんてデカい魔法陣なんだ」
「あれだけの人数をいっきに」
周囲から見ていた者たちが口々に言う。
妹が褒められるのも、兄として悪くないな。
「兄さん」
「あぁ」
魔法陣の中にいるヤツらに手をかざす。
——急・暗黒拘束
「「ぐぁああああああ」」
魔法陣の中で身動きの取れないヤツら全員がいっきに苦悶の叫びをあげた。
「なんだ? 一瞬で……」
「キール・ハインドは、いったいなにをしたんだ?」
「手をかざしただけだぞ?」
「詠唱していたのか?」
「これが都を守った賞金稼ぎ」
「噂は本当だったようだ」
「リーゼ。もういいぞ」
リーゼは胸の前で合わせていた両手をはなした。
魔法陣が消えて、バタバタと賞金稼ぎたちがその場に倒れて痙攣している。
「兄さん、大丈夫なの? 全員、倒れちゃったけど?」
「ちょっと、しびれているだけだ」
暗黒拘束だから、ちょっとではないが。
コイツらだったら、このくらいでも十分だろう。
倒れた賞金稼ぎたちの前を歩いて行く。
誰も起きあがってくることはできず、無事にリフィーを解放することができた。
「リフィー、怪我してない? 大丈夫?」
エレナがリフィーの周囲を見ていく。
「大丈夫そうね」
クア
リフィーがエレナに顔を近づけてきた。
「それじゃあ、また変なヤツらに騒がれる前に、出発するか」
「うん」
「えぇ」
リフィーに乗って、ツキギニの町をあとにした。
「おもしろかった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「このあと、キールたちどうなるのっ……!」
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