表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/93

第71話 兄のつとめ

 瓦礫をよけながら、壁伝いに飛びあがっていく。

 最初にいたホールへ到達すると、すでにそこの屋根はすべて崩落していた。


「キャッ」


 リーゼが、暴走するニーナに吹き飛ばされてきた。

 リーゼを受け止めた。


「リーゼ、大丈夫か?」


「ぐっ、貴様は……私にふれるんじゃない」


 リーゼは、俺を突き飛ばす勢いで体を離した。


「あっ、くっ……また……頭痛が……」


 リーゼは額に手を当てる。


「大丈夫か?」


「貴様に心配される筋合いはない。ロスワルドがいないということは……」


「彼は闇の指輪になった……」


 ロスワルドが変化して生まれた指輪を見せた。


「ホワイトエリクサーを持っていたのに、効かなかったのか」


「いや、使う前に、体が動かなくなっていたようだ」


「まったく、シックザール四天王が効いてあきれる。だが、ロスワルドがいなくなった今、貴様を殺すのは私のみ」


 と、にらみつけたリーゼが、俺に手をかざしてくる。

 しかし、その手は震えている。


「クッ……」


 膝をついて、頭をかかえるリーゼ。


「お、おい、リーゼ、本当に大丈夫か?」


「うるさいっ、近寄るな……貴様と出会ってからだ。原因は、兄づらするお前のせいで……」


 リーゼの額には、無数の粒の汗が浮かびあがっていた。


 俺のせい……。


「確かに、俺があのとき、お前を見捨てることがなければ、こんなことにはなっていなかった……」


「そ、そんな過去は知らない。勝手に記憶を植えつけるんじゃない」


「グアァァァァ」


 大きな衝撃音と、フレデリックの声が響いてきた。


 リーゼも心配だが、ニーナを先に押さえこまないと、紫苑騎士団だけでなく、この島じたいが跡形もなく消えちまいそうだ。


「リーゼ、大人しくしているんだ」


 俺はフレデリックたちがいるほうへ歩き出す。


「ふん。あの少女に殺されてくればいい」


 リーゼは苦しい声で言った。


 そのつもりはねぇーよ。


「フレデリック、大丈夫か?」


「あぁ、まだ大丈夫だ……」


 すぐにかけつけた紫苑騎士団の魔法使いが、フレデリックを回復させていた。


「キール。あの少女、意識がないからか、まったく動きが読めない」


「ブラックエリクサーの力、どんどん高まって、もう手に負えなくなってる」


「紫苑騎士団弐番隊隊長ともあろう者が、そんなこと言っていいのか?」


 俺は笑って言ってやった。


「キール、冗談を言っている状況じゃないだぞ。止める手段はもう、刺し違えてでも彼女を殺すしか……」


「それは、はなっからなしだ。生きて返す」


「しかし、どうやって」


「これを手に入れた」


 白く発光する小瓶を見せた。


「それは?」


「ホワイトエリクサーだ」


「ホワイトエリクサー?」


「ブラックエリクサーを消すことができるようだ」


「そんなもの、どこで」


「シックザールの男が持っていた。少女の動きを止める。手伝ってくれ」


「あぁ、もちろんだ。それなら任せてもらおう。紫苑騎士団弐番隊、少女の動きを止める。紫苑円陣だ」


 フレデリックは叫んだ。


「「了解!」」


 魔法使いの2人が呪文を唱える。

 床一面に、巨大な紫色の魔法陣が広がった。

 ニーナはそれを避けるように飛びあがる。


「逃がすか」


 フレデリックは飛びあがった。

 紫苑騎士団の戦士も、フレデリックと並ぶ。


「合技・紫苑(シオン)


 ニーナの頭上から、2人が剣を振りかざす。

 紫色の波動がニーナのオーラと衝突。

 しかし、ニーナは落下しない。


 シューンと、天から紫色の閃光のごとく何本もの矢が、魔法陣の外側に突き刺さる。


 その矢をつなぐように、魔法陣が広がった。


 フレデリックと戦士は、魔法陣の縁に剣を突き刺した。


「よし、今だ」


「「窮・紫苑拘束円陣キュー・シオンホールドエンジン」」


 魔法陣から紫色の光が、天に向かって伸びていく。


 その光に包まれたニーナは、動けなくなっていた。

 ニーナの体がゆっくりと地面に降りてくる。


 そして、紫苑騎士団が魔法陣の中心に歩き出す。

 魔法陣が縮まっていった。


「よし、キール。いいぞ。そう長くはもたない」


「わかった」


 ホワイトエリクサーを紫色の光の中に突っこむ。

 身動きのとれないニーナの口へ運んだ。


 ニーナの口元から白い液体がこぼれるも、ニーナはホワイトエリクサーを飲みこんでいた。


「くっ、も、もうもたない……」


 魔法陣が消えた。


 ニーナのオーラがふたたび広がる。


 ——頼む、ホワイトエリクサー。効いてくれ。


 ニーナの闇の目が俺を見つめた。

 そして、手をかざしてきた。


 ——ダメか?


 ニーナの黒いオーラが、どんどんと小さくなっていく。

 そして、黒い光の粉をまき散らして、消えていった。


 吊っていた糸が切れたかのようにニーナは倒れそうになる。


「ニーナ……」


 ニーナを抱きかかえた。


 意識は戻っていない……。

 でも、呼吸は……している……か。

 はぁ……。


「キール」


 フレデリックたちが駆けよってきた。


「大丈夫そうだ」


「ほっ、良かったぁ」


 フレデリックの肩の力が抜けた。


「ロスワルドもやられ、少女までも……こうなれば」


 リーゼが建物の外へ飛んでいく。


「フレデリック、彼女を頼む」


 ニーナをフレデリックにあずけた。


「キール……やるのか?」


「あぁ。妹を止める。そして、妹を助けるのも兄のつとめだ」




 外へ出る。


 どこへ行った?

 なにか、辺りが……マナが騒がしい。


「キール、無事だった……良かったぁぁぁ」


 リフィーに乗ったエレナが、上空から降りてきた。


「姫。退避していたか……ヴェロニカたちは?」


「アルスと一緒にブラックエリクサーの解析をするっていって、また建物の中に」


 なぜ、また中へ?

 ブラックエリクサーを作っているあの場所へ戻ったのか。


「そうか。ニーナは助けた。紫苑騎士団にあずけてある」


「良かった……えっ、キール、見て。海が」


 エレナが目を丸くした。

 海が壁のごとく、どんどん高くなっていく。


 リーゼのマナか。

 どこにいる?

 いた。リーゼ……。

 津波で島ごと……。


 空中で、自分の胸の前で両手を合わせていた。


 まさか、海をここまで……。

 マナを使えるようになっていて、嬉しいやら悲しいやら……。


「エレナ姫。リフィーでここから逃げろ。空にいれば安全だ」


「キールは?」


「俺は、あの海を止める」


「私だけ逃げるのいやだよ」


 ジッとエレナが見つめてきた。


「わかった。じゃあ、姫さん、リフィーを出してくれ」


「うんっ」


 エレナがリフィーのたづなを握り、俺はエレナの後ろに乗った。


 そして、リーゼの前にリフィーが飛びあがった。


「自分たちだけ、空に逃げてきたのか?」


 リーゼは片目をギュッとつむっていた。


 まだ頭痛があるのか。


「逃げてきたわけじゃないさ。リーゼ、君を助けに来た」


 リフィーの背中に立ちあがった。


「この状況で、仲間たちを島に置いてか?」


「島も妹も救うんだよ」


 両手を胸の前で合わせる。


 海のマナたちよ、鎮まってくれ。


 ——マナ・バルムヘルツィヒカイト


 秘宝島だけでなく、大陸にも届きそうなほどの津波が徐々に引いていく。


「クッ……ハァハァハァ……この頭痛さえなければ、こんなマナ徒に……」


 リーゼの頬を、いくつもの汗が流れていった。


「ハァハァハァ……これ以上、シックザールの恥をさらすわけにはいかない。このマナ徒以上に強いマナを引き出すなら……」


 リーゼは、肩で息をしながらふところに手を入れる。


 そして、ブラックエリクサーを取り出した。


「リーゼ、やめるんだ。それを飲んだら……」


「えぇ。闇の指輪になる。ホワイトエリクサーは、ロスワルドの持っていたもの1つだけだから——」


 リーゼは、口元にブラックエリクサーをもっていった。


「リーゼ、やめろ!」


「このあと、キール、どうするのっ……!」

「おもしろかった!」

「続きが気になる、読みたい!」


と思ったら


下にある ☆☆☆☆☆ から、作品への応援お願いいたします。

おもしろかったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直な気持ちで大丈夫です!


続きが読みたい方は、ぜひブックマークもしていただけると本当にうれしいです。


よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ