第68話 シックザールの拠点へ
翌朝、日の出とともにレイアルロイツの都を出発した。
目的地は、モーゼスの秘宝島。
シックザールの拠点である。
捕まえたシックザールの女らから聞き出したものだ。
その秘宝島は、ルクセチア国のものだが、陸側から離れている。
紫苑騎士団弐番隊らとともに、飛竜で海を渡った。
「やけに静かなだな……島に近づくと、船が沈められる話もあったが。見張りはいないのか」
フレデリックが上空から秘宝島を眺めながら言った。
なにか異様な感じがするな。
嵐の前の静けさとでも言うような……。
まっ、簡単に上陸できるなら、それにこしたことはない。
飛竜は、あっけなく秘宝島に降り立つことができた。
「エレナ姫とアルスは、リフィーとここで待機しててくれな」
「うん。キール、気をつけてね」
「あぁ。もし、なにかあったら、すぐにリフィーで逃げるんだぞ」
「うん……でも、キールは……」
「俺なら大丈夫だ。ヴェロニカや紫苑騎士団もいる。大人しくしていろよ」
と、エレナの肩に手を置いた。
「うん」
「キール、行くぞ」
フレデリックが隊員を連れて、木々の向こうに見える城のような豪華な建物に向かって歩き出した。
「あぁ。行こう、ヴェロニカ」
「はい……本当にここがアジトなのでしょうか。人気がありませんね」
「シックザールの拠点ではなく、ただの無人島なのかもな。この島に住んでいたモーゼスはとっくに死んでいるらしいからな。海賊たちがねぐらにでもしているのかも」
「それは違うようだ、キール。見ろ」
フレデリックが足を止めていた。
倒れた木々の脇で、人が倒れていた。
5人ほどがあちこちに倒れていたのだ。
全員、シックザールの黒いローブを身につけていた。
ローブがボロボロだ。
なにかと争ったのか?
「こ、これは……」
フレデリックは建物を見あげていた。
建物の一部が大きく損傷していた。
まるで魔法でも爆発したかのような状態だった。
「どうも、なにかあったようだな」
「そうのようだ。内乱か、別の侵入者と争ったのか……見張りがいないのは俺たちにとっては都合がいい」
フレデリックを先頭に、辺りを警戒しながら、建物の中へ入っていく。
主を失って時間がたち、建物内はボロボロだった。
最近の破壊も目新しく、瓦礫も多い。
伝説の賞金稼ぎモーゼス・クレッチュマンか。
手に入れたカネで、財宝を買ってコレクションした島。
お宝のようなものは、すでに盗まれてしまっているが、建物からしてその財を感じられる。
天井に穴の空いた大きなホールにたどり着いた。
あちこちに瓦礫が転がっている。
それに押しつぶされるように、ここでも人が何人も死んでいた。
「シックザールは、ここを捨てたのかもしれない」
最悪の状況を考えるなら、ここにリーゼがいないことを願いたい。
まさか、とは思いたくない。
「それとも全員、殺されているか……」
フレデリックの言葉が、ずっしりと心にのしかかってきた。
コツ……コツ……
ホールに誰かの歩く音が響いてきた。
紫苑騎士団がかまえたことで、いっきに緊張感が高まった。
「そっちから乗りこんで来るとはな……」
ホールに男の声が響いた。
黒いローブをかぶった者が、正面右側の階段を降りてくる。
「ここは、もうお前らの墓場だ」
左側の階段から、女の声、リーゼが降りてきた。
そして、階段がつながる中央の踊り場で2人は立ち止まった。
「四天王2人が、早速、出てきてくれるのは、こっちとしても好都合だ」
フレデリックが剣を抜いて、剣先を2人に向けた。
「ふん。紫苑騎士団壱番隊ならともかく、その手下どもは、お呼びではない」
ロスワルドの小馬鹿にするような声が響いた。
「なんだと」
フレデリックが言い返す。
「1番邪魔なのは、賞金稼ぎ、お前だ。2度と私を妹呼ばわりできないようにしてやる」
リーゼ……。
「あれが、キールの妹……」
フレデリックにちらっと見られ、うなずき返した。
「リーゼ、お前たちシックザールはいったいなにを企んでいる?」
「いにしえのマナ徒には、関係ないことだ。ここで聞いたところで、どうせ死ぬんだ」
リーゼの声は冷たかった。
「キールを死なせはしない。紫苑騎士団弐番隊隊長の名にかけて」
フレデリックがそういうと、紫苑騎士団全員が武器をかまえた。
「ふん。貴様らを消すのは、私たちじゃない」
と、ロスワルドが宙に手をかざした。
光を発して、空中に少女が現れた。
——ハッ!
「あわわわわっ、キ、キール!」
ヴェロニカが空中に浮いている少女を指差した。
「あぁ、気づいてるよ。ニーナだ」
「あの子が、キールたちの探していた少女か」
フレデリックが聞いてきた。
「あぁ」
ニーナは黒いオーラに包まれて、今にもオーラが弾けそうでもあった。
少女の目からは黒い炎があがるかのよう。
怒りに満ちている表情をしていた。
「いったい、彼女になにをした?」
「我々シックザールの意思を継ぐとても素質ある魔法使いの子供だった。この子なら、改良したブラックエリクサーに適応できると思っていたが……ダメだった」
ロスワルドがなんの悪気もないように言う。
「子供になんてことを……」
「貴様らが、教会に乗りこんで来なければ、暴走は押さえこめたかもしれなかった」
「どういうことだ?」
リーゼに聞き返した。
「ブラックエリクサーで暴走してしまったこのガキを眠れる布で、しばらく眠らせていた。だが、その布に触れることができなくなった。あの男に新たな眠れる布を作らせようとしていた……ガキの力は布を破って、完全に制御できなくなった」
それであの男をさらったというわけか……。
「取り押さえるのに、ひと苦労した。まぁ、この島のシックザールはほとんどガキの力に巻きこまれて死んだがな……」
笑いごとのようにロスワルドが言った。
今、ニーナを押さえこんでいるのは……。
マナで拘束しているのか。
よく見ると、ニーナに透明な糸がいく本もつながっていた。
「さすがに俺もこれ以上、ガキを黙らせておくのは限界だったんだよ。そこにお前らがちょうど現れてくれて、助かったぜ。大陸まで連れていく手間がはぶけたってわけだ」
「大陸? ルクセチアを落とそうっていうのか?」
フレデリックが聞いた。
「ルクセチアだけじゃない。エリンネリミアも。マナ徒がまだ民衆にまぎれて、住んでいるからな」
ロラストの都にいる国王もマナ徒だ。
暴走するニーナを使って、マナ徒を滅ぼそうっていうのか……。
これじゃあ、マナ徒だけが被害を受けるわけじゃない。
「そうとう良からぬことを企んでいるようだな、シックザール魔教会ってのは……」
黒剣の切っ先を階段上の2人に向けた。
「貴様らにそれを止められはしない」
ロスワルドが手を下ろした。
ニーナを押さえこんでいたマナの糸が消えた。
ニーナを包みこんでいた黒いオーラが、爆発したように広がった。
そのオーラは、まるで悪魔の翼のようにも見えた。
「なんて魔力だ」
フレデリックが腕で、顔を覆う。
ホールの中の空気をかき乱すほどだった。
——あの男、よくマナで押さえこんでおけたな。
——解放されたことで、溜めこまれた魔力がいっきに増大したか……。
——どうやって、ニーナを助ける……。
「このあと、キールたちどうするのっ……!」
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