第67話 レイアルロイツの都
「キールー」
上空からエレナとアルスの乗ったリフィーが降りてきた。
「ド、ドラゴン? しかも女が乗ってる……」
フレデリックが言った。
「キール。ついさっき、森が揺れたよ? キールは大丈夫だった?」
エレナがリフィーから飛び降りて、かけつけた。
「あぁ、大丈夫だ。ひとまず、タビタを助けることができたからな」
「ほっ、良かった。で、タビタはどこにいるの? ヴェロニカは?」
「2人は、兵士たちに保護されてる」
「おい、賞金稼ぎ。仲間か?」
フレデリックが聞いてきた。
「あぁ。女勇者と写本師を解放してくれ」
フレデリックに言うと、ジッと俺を見つめてきた。
「本当にアイツらの仲間じゃないんだな?」
「おいおい、まだ疑ってるのかよ? シックザールを倒したんだぜ」
「むっ、確かに……わかった。もし、変な動きを見せてみろ。仲間もろとも拘束するからな」
フレデリックはそう言い捨てて、兵士に指示を出した。
「それと、賞金稼ぎ。ここでもう少し待機してろ。レイアルロイツへ移動して、詳しく事情を聞かせてもらう」
と、フレデリックが教会の裏にある大きな建物を見て言った。
「いや、別になにも企んじゃいない」
「アイツらのことを知っているだろ。その指輪のことも、国王に知らせる必要がある」
「で、あんたたちは?」
「俺たちは、ルクセチア国内の各地で行方不明になっている子供たちを救出に来たんだ。そして、あの裏の建物に隔離されているはず……」
兵士たちが慎重に建物に侵入していくところだった。
しばらくして、憔悴した子供たちが次々へと出てきた。
用意された馬車へと案内されていく。
シックザールは各地で、いろんな国で、子供たちを無理矢理マナが使えるように仕立てようとしているのか……。
夜明けを待って、ルクセチアの中心であるレイアルロイツの都へと移動した。
俺たちもフレデリックに着いていく。
都に入ると、子供たちが救出されてことを民たちが喜んでいて、拍手と歓声に包まれた。
そして、ルクセチアの国王に謁見することとなった。
「フレデリック、紫苑騎士団弐番隊、よく戻ってきた。そして、とらえられた子供たちの救出、ご苦労だった」
「ありがとうございます」
フレデリックが頭を下げると、紫苑騎士団弐番隊の隊員4人も頭を下げた。
「こうして戻って来ることができたのは、ちょうど同じくさらわれた仲間を救出に来ていたキール・ハインドに、力を貸してもらえたおかけでもあります」
と、フレデリックが続けた。
「うむ。キールよ、お主の活躍は報告を受けている。紫苑騎士団弐番隊では手の負えない相手をしたと。それと、お主の仲間を間違ってとらえてしまったこと、申し訳ない」
「いえ。こうして、ヴェロニカを解放していただき、ありがとうございます」
「あわわわ……ありがとうございます」
ヴェロニカが慌てて頭を下げた。
「うむ。シックザール魔教会、なにやら企んでいるそうじゃな」
「はい。しかし、これからどんなことをするかまでは、まだ……。これから、キール隊から話を聞かせてもらおうと思っています」
と、フレデリックが落ち着いて答えた。
「うむ。では、キールよ。国の存亡にもかかわることかもしれない。紫苑騎士団壱番隊は、国を出て行ってしまっている。良ければ、お主の力を貸して欲しい」
「はい、もちろんです。私ごときの力でよければ……」
「そうか。よろしく頼む」
国王との謁見を終えて、しばらく休息の時間がもうけられた。
夜通しでの救出、夜明けからの移動だったからだ。
ふたたび招集がかかったのは、夕方前だった。
広間に置かれた大きな机。
立派なイスに座る。
紫苑騎士団弐番隊と俺、エレナたち、タビタも招集を受けていた。
あらためて、紫苑騎士団があの教会にいた経緯を聞き、タビタの話となった。
「私は、彼らに汚れた紙の字を写本しろと言われました」
タビタは、気落ちした感じもなくハキハキと答えていた。
シックザールに乱暴されることもなく、いつものタビタに戻っていた。
「それはどんな?」
フレデリックが聞いた。
「なにかの設計図みたいな、手順みたいな感じでした。取りかかろうとして、すぐキールたちが来たので、それをちょっと見たくらいです」
「それで、その写本しようとした紙だが、あの場にいた男の物だった。名は、ディルク・オストホフ。31才の魔道具士。眠れる布という布の設計図だそうだ」
「あっ!」
「それですぅぅぅ」
「あわわっ」
「ふぇ!」
エレナ、アルス、ヴェロニカ、タビタが同時に声をあげた。
——眠れる布。
——あの誰もいなかった工房の主も、シックザールにさらわれていたのか。
「シックザールから、眠れる布に触れても眠らないようにしろと、言われたそうだ」
「ん、それはどういうことだ? 触れるだけで、眠っちまうのか?」
確かその布をかければ、眠るとか……。
「ディルクの話だと、誰かに眠れる布を使ったようだ。そしたら、布の効力が暴走したのか、触れるだけで眠ってしまうことになり、布は暴走したまま。それを解決するように、命令されたようだ」
フレデリックは首をかしげながら言った。
確か、リーゼたちは、少女の暴走を止める手立てがどうとか言っていたな。
それに関係しているのか?
「それで、設計図を見返したら、汚れていてわからず、写本師であるタビタに写本してもらおうとして、さらわれたと……」
流れを整理しながら、俺はしゃべった。
「設計図が汚れたのは、シックザールのせいらしい。ディルク自身がさらわれる以前に、その眠れる布をシックザールに奪われている。そして、少したってからディルクがさらわれた。そのときに争って、工房をメチャクチャにされたようだ」
「設計図が必要となったが、工房がメチャクチャで設計図も汚れてしまったんですね……」
タビタは謎が解けたように、うなずいた。
「そういえば、ニーナ?」
と、エレナが聞いてきた。
「あぁ、そうだ。救出した子供たちの中に、ニーナという女の子はいなかったか?」
俺がフレデリックに聞いた。
「いや、もう一度、確認させたが、いなかったようだ」
フレデリックは資料をめくりながら答えた。
「キール、どうしよう」
エレナが心配そうに見つめてきた。
ふと、ニーナの姉メラニーが必死にお願いしてくる表情を思い出した。
あきらめるわけにもいかないしな……。
救出された中にいないとなると、他の教会か、全然別の場所に?
そもそもシックザールがさらったのか……。
いや、魔法に長けたニーナとこつ然と姿が消えたとなるとやはり……。
「私たちが救出したい子供たちも、まだ全員ではない。とらえたシックザールの女たちを尋問したところ、いくつかの拠点があることがわかった」
フレデリックの目に力が入った。
「もしかしたら、そこにニーナがいるかも」
「あぁ。拠点としている教会には、紫苑騎士団の総力をもって、救出に向かう。キール、力を貸して欲しい。紫苑騎士団弐番隊は、大きな拠点へ攻めこもうと思っている」
「大きな拠点?」
「選ばれし者しか行けない場所だそうだ。そこに四天王と呼ばれる者たちがいるようだ」
ということは、そこにリーゼがいる。
シックザール四天王相手に弐番隊だけでは、正直、やりきれる相手ではないだろうな。
ニーナは紫苑騎士団に任せて、俺も参戦するか。
「キール。あんたが単なる賞金稼ぎとは思えない。闇の指輪をもって平然としていられる。それに、教会での戦闘、正直、驚いている。力を貸して欲しい」
フレデリックが言うと、弐番隊隊員の視線が俺に集まった。
「どうせ目的地は一緒だ。行こう」
「ありがとう」
「その拠点の場所は?」
「秘宝島。モーゼスの秘宝島だ」
フレデリックが強い語気で言った。
「おもしろかった!」
「続きが気になる、読みたい!」
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