第66話 暗黒の戦士と闇の指輪
ブラックエリクサーを飲んだダミアンの体は、黒いオーラに包まれた。
レッドエリクサーを飲んだときには見られなかった現象だな……。
イヤな感じがしてならない。
こんな力を持ったヤツらを思い出すぜ。
「とても気分がいい。ますます俺はシックザール反映のために尽くしたくなった」
ダミアンが再生させた黒い手をかざしてきた。
大きな黒炎の弾が生まれた。
——なにっ、これは、暗黒炎連弾?
——バカな暗黒魔法だと……暗黒を宿した者しか使えないのに。
——いや、暗黒よりもっと濃い……闇だ、これは。
ダミアンは、いくつも闇炎弾を撃ち放ってきた。
——仕方ない。
「烈・暗黒氷連弾」
黒氷の塊が、次々と闇の炎の弾に激突していく。
黒い煙を勢いよく昇らせて、闇と暗黒の魔法が打ち消されていく。
ダミアンがギロリと俺をにらみつけてきた。
「……貴様、ただのマナ徒じゃないな。ブラックエリクサーに似た魔法を使うとは……」
「おっおっ……賞金稼ぎ、今のはいったい?」
フレデリックが目を丸くして聞いてきた。
「説明している暇はない。アイツの闇に巻きこまれたくなかったら、兵士たちを退避せろ」
「闇ってなんなんだよ……ハッ! わかった」
なにかを思い出したように納得したフレデリックは、一帯を包囲している兵士たちに指示を出した。
「賢明な判断だ。だが、ブラックエリクサーの力はこんなもんじゃ——」
スパーンスパーンと、黒剣でダミアンの両腕を切り落とした。
生身の片腕は、その場にぼとりと落ちた。
再生した黒い腕は、黒い煙をあげて消えた。
「させねーぜ」
「だから、ブラックエリクサーの力はこんなもんじゃいって言ってるんだよ」
ダミアンの腕の切断面から出た黒い煙が、腕を形取った。
そして、黒い腕として復元された。
両手が俺に向けられた。
「死ねーーー」
「くっ」
闇の波動が体を押し出す。
——なんて力だ。
ザザーっと、足を踏ん張っても後方へと押し戻されてしまった。
「へー、これに耐えるか」
ダミアンは微笑んだ。
さすがにマナの保護がなければ、死んでいたかもな。
これは、もう捕獲どころじゃいぞ、隊長さんよ。
黒剣をかまえ直す。
——暗黒龍昇乱舞斬
暗黒の龍がダミアンを包みこむようにして、切り刻む。
「しょ、賞金稼ぎ……なんという剣技だ……」
フレデリックが言った。
「グフッ……これは効いたな……だが、残念だったな、マナ徒」
チッ。
切りつけた瞬間から、傷口がどんどん回復していきやがる。
しかし、ダミアンの無数の傷口は完全にふさがらない。
「えっ、クソッ、なんで傷口が」
そこから闇のオーラがあふれ出す。
それを手で押さえこむダミアン。
しかし、オーラの噴出は止まらない。
いったい、アイツになにが起きてる?
まさか、レッドエリクサー同様、別の作用が?
「グァアアアア」
ダミアンの体は爆発したように、いっきに闇のオーラに包みこまれた。
そして、オーラがふたたび人の形を作っていく。
しかし、それはダミアンの姿ではなかった。
ダミアンよりも体躯のいい戦士のように見えた。
闇でかたどっているため、真っ黒だった。
いったい、コイツはなんなんだ。
闇の戦士が腕を振りあげると、そこに大きな剣が形作られていく。
——その剣!
大剣が振りおろされて、地面を割った。
その勢いは森をも切り裂いた。
その衝撃に兵士たちは動揺の声をあげた。
——まさかとは思うが、暗黒騎士のアシル……。
——暗黒騎士パーティーの1人。
——その大剣、地を裂く技、見たことがある。
——森にはエレナ姫たちがいる。これ以上は……。
「しょ、しょ、賞金稼ぎ、いったいなにが起きている」
フレデリックが聞いてきた。
「よくわからないが、別人に変わったようだ」
「えっ? じゃあ……」
「元のヤツをとらえるどころじゃない。すぐにアイツを止めなければ、ここ一帯はメチャクチャにされる」
「くっ。賞金稼ぎ、手立てはあるのか?」
「ないわけじゃない。アンタも離れておいてくれ」
「なっ、俺もか。す、少しくらい力に……」
「よくその震えた手で言えたな」
「こ、これは……」
「言った度胸だけは認めるが、巻きこまれる前に離れておけよ」
そう言って、地面を蹴って、剣を振りあげる闇アシルとの距離をつめる。
同時に投擲ナイフを投げつける。
まるで硬質化したような闇の鎧に弾かれてしまう。
アシルの振りおろす大剣を黒剣で受け止める。
ぐっ。
さすが、地を割るほどの力。
——暗黒閃明斬り
闇アシルの胴体に穴があき、闇よりは明るい向こう側が見える。
しかし、闇がその穴を埋めていく。
やっぱりもう、単なる攻撃は無意味か……。
あのときと同じように効いてくれればいいが。
闇アシルに手をかざす。
——マナ・エクソルツィスムス
闇アシルの足元に散乱していた投擲ナイフから、白い光線が闇アシルに伸びていく。
体をひもで縛られるかのごとく、闇アシルはもがく。
白い光が闇のオーラをはぎとっていく。
よし、いけるか。
このまま……。
闇のオーラは白い光に吸収されて消えた。
そして、もとの男ダミアンの姿に変わった。
その表情は、苦しみ叫んでいるかのようだった。
「ふぅ……」
手を下ろすと、白い光は消えて、その場にダミアンが倒れた。
動かない。
死んだか……。
1歩1歩、警戒しながら近づく。
ブラックエリクサーの効力は切れているのか……。
ん?
突然、ダミアンの体中から黒い煙が吹き出した。
まるで体内に蓄積した煙が噴出しているかのように、ダミアンの体がしぼんでいく。
体が溶けていくのか……。
あっという間に、ダミアンの体は消えてしまった。
——これは。
ダミアンの体があった場所に、黒く光るモノがあった。
かつて、見たことのあったモノだった。
——闇の指輪。
「お、おい、賞金稼ぎ、やったじゃないか……って、なんでそれを持ってる」
闇の指輪を見て、フレデリックが驚いた。
「あの男がこれに姿を変えたんだよ。ん、これを知っているのか?」
「もちろんだとも。紫苑騎士団壱番隊が、地獄の谷へ捨てに行ってるからな」
そういうことか……。
シックザールは、自分たちの驚異となる八大騎士を国から遠ざけるために闇の指輪をわざと作ったのか。
その隙に、マナ使いの子供たちを誘拐したり、国王を狙っていた。
そこに白い光の塊が空から降ってきた。
「イヤな予感がしたと思ったら、案の定……このあり様」
黒いローブを着たロスワルドと、
「また貴様か。私の兄だと名乗るマナ徒……」
リーゼ。
「ダミアンのヤツ、ブラックエリクサーを使ったのかよ。バカなやつだ」
「アレも一緒に渡さなかったのか?」
リーゼがロスワルドに聞いた。
「アレはまだ1つしかないからな。あんなヤツに渡すわけないだろ」
「ふん。しかし、これで、少女の暴走を止める手立てを失ったわ」
「別に止めなくたって、利用すればいい」
「リーゼ……」
「気安く私の名前を呼ぶな。もし、次に貴様と会ったとき、命はないと思え……」
ロスワルドとリーゼは、ふたたび白い光に包まれて、夜の空に飛んで行ってしまった。
いったい、なにがどうなってる……。
シックザール……。
リーゼ……。
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