第65話 ブラックエリクサー
シックザールの2人は、ステッキをかまえた。
「アルヴィー、囲まれてる。いっきに蹴散らすか?」
「紫苑騎士団にはかまうな。俺が例の賞金稼ぎを引きつけている間に、ダミアン、お前は四天王様のところへ」
「え、まさか、コイツが? 他の支部をつぶして、ロラストで国王を守ったヤツ……アルヴィー、だったら、俺も」
「だから、緊急事態ってことを伝えるんだ」
「くっ、わかった」
アルヴィーと呼ばれた男が、ステッキを下げた。
「行け、ダミアン」
シューッと音だけが、俺に向かってくる。
マナか……。
わざと腕を下ろして見せたな。
バシューンと、眼前で、風の槍を弾いた。
悪いが、マナはすべて無効化させてもらう。
チッ。
俺の攻撃の間に、もう1人を逃がす気か。
シュパーンと、空気を切り裂く音——。
「グアッ」
飛びあがったダミアンの腕に矢が刺さり、その場に着地した。
「でかした、ツィスカ。この紫苑騎士団弐番隊の包囲から逃れられないぞ」
紫苑騎士団弐番隊隊長のフレデリックが言った。
弓使いか……。
この暗闇から放たれたら、よけるのはそうとう困難だ。
「クソッ」
ダミアンは矢を腕から抜き捨て、すぐに傷を魔法で回復させた。
「これなら、どうだ、賞金稼ぎ」
アルヴィーが片足を前に踏み出した。
足元の地面から、いっきに亀裂が俺に向かってきた。
ムダなことを……。
手をかざすと、亀裂は俺の手前で止まった。
「なに? 本当にマナが効かないのか、コイツ……」
アルヴィーは信じられないといった表情をした。
「詠唱なしに魔法を発動させて、詠唱なしに魔法を打ち消す……本当にただの賞金稼ぎなのか?」
フレデリックも夢でも見ているかのように驚いていた。
「それだけじゃない。俺はマナを攻撃には使わない」
黒剣をかまえて、地を強く蹴った。
一瞬で、アルヴィーとの間合いを縮めて、黒剣を腹部に突き刺した。
「グブッ……」
素早く剣を引き抜いて、位置をずらしてふたたび腹部に突き刺す。
「ゴブォ……」
「アルヴィー……貴様っ」
ダミアンが手をかざす。
いくつもの雷が俺に向かってくる。
直撃する寸前に、手で振り払う。
雷は、地面に落ちて吸収された。
「えっ……」
すぐさま、呆気にとられているダミアンの腹部に黒剣を突き刺した。
「オブッ」
黒剣を引き抜いて、すばやく後方に飛び退いた。
ダミアンは腹部から流れ落ちる血を押さえるように、すぐに回復魔法を施す。
「おい、賞金稼ぎ。なに殺してるんだ? 自分でそいつらをとらえると言っただろ」
フレデリックが叫んだ。
「コイツらは、この程度じゃ死なない」
すぐにアルヴィーとダミアンは、傷を回復させた。
「ダミアン……今度は2人でやる。2人の力で押し切る」
「あぁ……」
2人はステッキを俺に向けてきた。
直後、無数の風の刃が辺りを囲む。
そして、それらに炎が混じり、火炎竜が次々と襲ってきた。
「いったいヤツらはなんなんだ……おい、賞金稼ぎ。大丈夫か」
フレデリックの声が火炎竜の外から聞こえてきた。
はぁ……。
芸がないな、シックザールというヤツらは……。
黒剣で、1度辺りを振り払った。
火炎の竜巻が、剣に切り乱されて、その形を維持できなくなって、消えていった。
「なんと、賞金稼ぎ……」
フレデリックは胸をなでおろした。
「クソッ、コイツ、本当にマナが効かない。あ、おい、待てダミアンっ」
「だったら、ゼロ距離なら」
ダミアンがステッキを突き向けて、俺の頭上に飛び降りてきた。
ステッキの先端から、風の槍が放たれる。
俺は、スッとよける。
地面に細い穴が空いた。
そして、黒剣を天に振りあげる。
「アガハッ……」
ダミアンが黒剣に串刺しとなった。
そのまま、地面を踏みこんで、ふたたびアルヴィーの眼前に駆けた。
「グハッ……」
ダミアンを突き刺したままの黒剣を、アルヴィーの腹部に突き刺した。
2人から剣を抜くと、ダミアンの上に重なるようにアルヴィーが倒れこんだ。
「あっ、また賞金稼ぎ、拘束しろって」
フレデリックが俺の元に駆けてきた。
アルヴィーとダミアンは自分に回復魔法をかけているが、なかなか起きあがらない。
「魔法が使える状態で、コイツらを拘束してもすぐに逃げられるだけだ。力を削ってからと思ったが、ちょっとやり過ぎたか……」
「すぐに拘束だ」
はいはい……。
2人に手をかざす。
「急・雷蛇束縛」
拘束魔法にかかる寸前、アルヴィーがダミアンをかばうように、前に立ちあがった。
「グアッー」
しびれてその場に倒れるアルヴィー。
ダミアンは、その隙に後方へ飛び退いた。
「心やさしきアルヴィー、助かったよ。俺はこんなところで、捕まるわけにはいかないんだよ」
と、腹部から血を流したままのダミアンは、ふところから黒い小瓶を取り出した。
また妙な物を……。
レッドエリクサーの類いは勘弁してくれよ……。
「俺はシックザールの上を目指している。それなのに、どうしてアルヴィーが支部の代表で、俺が副代表なのか納得できなかった。でも、俺はこれを授けられた」
グビグビと、黒い小瓶の液体を飲んだ。
みるみると、ダミアンの表情に生気が戻ってきた。
アイツはいったい、なにを飲んだんだ?
「四天王様は俺の将来の可能性を見てくださっている。だから、ブラックエリクサーをくれた」
——ブラックエリクサー?
——次から次へと……変な効果だけはやめてくれよ……。
「アルヴィー、お前より俺のほうが優れているんだ。もらってないだろ、ブラックエリクサーを」
ダミアンは、アルヴィーに手をかざした。
手を上に動かしていくと、麻痺しているアルヴィーが空中に浮いていく。
「ブラックエリクサーはすごいよ。力が湧いてくる。ここの問題は、俺が片付ける……だから、アルヴィー、お前はここで終わりだ」
ダミアンはもう片方の手を振りあげた。
アルヴィーの真下の地面から巨大なツララが伸び生えていく。
その鋭い先端が、空中のアルヴィーを腹部を貫いた。
そのままツララは天へと伸びていき、アルヴィーの胴体を貫いたツララは太くなっていく。
そして、アルヴィーは胴体から真っ二つに引き裂かれてしまった。
「ハハハハハ……」
一瞬で、これほどのマナを固め集めたか。
どうも、レッドエリクサーよりも強い効力がありそうだな。
「さぁ、ここにいる全員、まとめて消えてもらう」
チッ。
ザッと、いっきにダミアンの眼前に移動して、黒剣を振りかざす。
スパーンと、ダミアンの片腕を切り落とした。
「グアァァァ……なんて」
片腕を切り落とされても、その余裕はなんなんだ。
「ふはははは……」
ダミアンの切られた腕の断面から黒い煙が吹き出すと、黒い腕が生えた。
ダミアンは、新しく生えた黒い腕の感触を確かめるように拳を握った。
なんて気味の悪い効力だよ、ブラックエリクサー……。
「キールたち、この後どうなるのっ……!」
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