第63話 元勇者パーティーとの遭遇
行方がわからない魔法使いの少女ニーナと眠れる布を探すため、隣町ベゼアにやってきた。
ただニーナの行方に関する手がかりは、ない。
ひとまず、情報のある眠れる布を追ってやってきたわけだが……。
「あー、ディルクが作ったとかいう布だろ? そんなものがアイツに作れるわけないだろ」
いくつかの道具屋の店主に聞きこみをして、どれも同じようなことを言われた。
「実際に、見てはいないのか?」
「あぁ、見てないよ。そもそも表に出そうと作ったわけじゃないだろうからな」
「ん、それはどういうことだ?」
「自分のため、だめよ。あまり大きな声じゃ言えないが……」
と、店主が指で小さく手招いてきた。
「少女をさらってるらしい」
「少女を」
「しっ。……そうだ。その眠れる布を少女にかけて、眠らせた少女をそのままくるんで連れさっているらしい」
まさか、それでニーナもさらわれたとか?
んー、それだと、なにか違和感がある。
店主が体を引いた。
小声話はここまでのようだ。
「それで、工房で飼っていたようだ。でも、1週間くらい前に姿を消した。工房はめちゃくちゃにされていたよ」
「で、少女たちは?」
と、聞くと、店主は首を左右に振った。
「いや、少女たちも一緒にいなくなっていた。消えた理由もさっぱりだ。誘拐したのがバレそうになって、どこかへ逃げたってのが有力だ」
「工房の場所は?」
「行ったって、なにもわからないぜ」
それは行ってから判断する。
「ここのようだな」
道具屋の店主が教えてくれ場所にやってきた。
通りから奥に入ったところで、周囲は木々に囲まれていた。
ここじゃ、辺りからは見えないか。
「なんか、静かで不気味……」
エレナが俺の腕に引っついてきた。
奥には工房らしい建物があった。
中に入ると、物がひどく散乱していた。
なにかを作る材料だけでじゃない。
布がたくさんあった。どれも女モノ、子供サイズの服ばかりだ。
やっぱり、ここに閉じこめていたのか……。
「まるで、争ったあとのようですね。少女たちを強引に……」
ヴェロニカが言った。
「少女たちを連れていくだけで、ここまでになるか?」
布の手がかりになるようなものがあるとは思えないな……。
ガザッ
背後から足音が聞こえた。
「あら、先客……かと思えば、ヴェロニカ」
「あわわっ、あなたたち……」
女3人が工房に入ってきた。
装備やその姿から、戦士、モンク、魔法使いといったところか。
「ヴェロニカ、知り合いか?」
「あわわわ……えぇ、元勇者パーティーです」
呆然としていたヴェロニカが我に返った。
元のパーティーは、女パーティーだったのか。
「まさか、もう別のパーティーに入っているとはね〜」
戦士の女が言った。
「あわっ、いえ、加入したわけでは……」
「あぁ、試用期間ってヤツね」
いや、そんなことはしてないんだが。
俺たちはパーティーを組んでいるわけでもない……。
「まったく大変ですよね〜、追放された女勇者を仲間にしてくれなんて頼まれて」
「いや、別に……」
俺は嘘を言ったつもりはない。
「いいんですか? ヴェロニカが仲間になれば、あなたのパーティーは勇者パーティーと名乗らされますよ」
「勇者がいるんだから、勇者パーティーでもいいんじゃないか? 別に変じゃないだろ」
「そう甘やかさないほうがいいですよ。私たちは、勇者パーティーと名乗られたくなかったので、追放したんですよ」
「うんうん」
モンクの女が、強くうなずいた。
魔法使いの女は、戦士とモンクの様子をうかがうようにして静かに1度首を振った。
どんな理由で、追放したのかと思えば、まったく意味がわからねーな。
「ヴェロニカ、アイツらの言うことなんか気にするな」
「あわわわ……」
「よくそんなので、勇者がつとまってわね。てっきり、ロラストの都にずっといると思ってた。なんか化け物が出たから、それに巻きこまれて死んだんだとばかり……ふふっ」
「そうそう、だから、そこに立っていて、驚いたわ」
モンクの女も言葉を重ねてきた。
たく、元の仲間をそこまで言うか。
「あの化け物は、紅蓮騎士団といっしょに俺たちが倒したって話は聞いてないのか?」
「はぁ? 八大騎士の紅蓮騎士団と?」
「そうだよ。キールとヴェロニカが化け物に突っこんで剣で切ったんだよ。それで、化け物を倒したんだよ」
エレナが口早に言った。
「そうですぅ。ヴェロニカは強いんですぅ」
と、アルスも加勢した。
「そんなバカな話があるか……」
戦士の女が小声で言った。
聞こえてるっての。
「あんたたちもココにいるってことは、眠れる布を探してるのか?」
戦士の女が話題を切り替えるように、聞き返してきた。
「あぁ」
「高く売れるって話らしいからな。絶対にあんたたちより先に手に入れてみせる」
カネ目当てかよ。
「お前らといっしょにしないでくれ。こっちは、仕事として依頼を受けて、探してるんでね」
「チッ、なんなんだよ、コイツ……」
また戦士の女が小声で言う。
だから、聞こえてるっての。
「見る限り、ココには手がかりはなさそうだ。行こう」
と、戦士の女とモンクがせっせと工房を出て行った。
魔法使いの女が、じっとヴェロニカを見つめて動かない。
もの悲しい目をしていた。
「なにしてる?」
「う、うん……」
魔法使いも呼ばれて、工房から出て行った。
気分のいい連中ではないな。
ヴェロニカもアイツらも苦労していたのか……。
「俺たちは俺たちで、やれることをやればいいさ」
「あわっ、はい……ありがとうございます」
さて、やっぱり手がかりはないかな。
「あの、コレ……」
と、アルスがボロボロになった紙を持ってきた。
「なにか書いてありそうだな」
「はい、泥や液が染みこんでいてよくわかりませんです。もしかすると、なにかの設計図かと」
まさかとは思うが、布の設計図ではないだろうな。
「ほかにもありそうですが、どれも読めません」
「タビタにお願いしたら、字を読み取ってくれるかもしれない。持っておくか」
「はいですぅ」
結局、ディルクの工房を探ってみても、足取りの手がかりになるものはなかった。
アルスの見つけた紙に書かれたものをタビタに読み取ってもらえるかお願いしに、ふたたびハザシュの町に戻った。
なんだ、いくつか煙がのぼってるな。
火事か?
リフィーを海岸近くの広場にとめた。
「おい、町の英雄、たいへんだ。タビタがさらわれた」
と、町の男が声をかけてきた。
「えっ? いったい、誰に?」
「よくわからないが、黒いローブをかぶったヤツらだった。魔法を使うから、タビタを助けることもできなかった……」
黒いローブ?
魔法?
——シックザールか?
「そいつらは、どこに向かった?」
「馬車に乗せられて、海岸沿いの林へ向かっていった。少し時間がたっちまってるが」
町の人じゃ、ヤツらを止めることはできないだろう。
なんで、タビタがさらわれなきゃいけないんだ?
「おもしろかった!」
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「キールたち、今後どうなるのっ……!」
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