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第62話 人と布探しの依頼

「今日はみなさん、お疲れさまでした。爆弾魔を捕まえていただき、ありがとうございます」


 タビタはテーブルの前に立って、深々と1度、頭を下げた。


「これといったお礼はできませんが、腕によりをかけて作ったので、じゃんじゃん食べてください」


 ニカッとタビタは笑った。


「「いただきます」」


 エレナとアルスは、勢いよく食べはじめた。


「大人の方は、お酒も用意してありますよ。どうぞ」


 タビタが俺のコップに酒をついでくれた。


「ありがとう」


「キール、結局、頼ってしまって、私はなんの力にも……」


「それ以上は言うな。ヴェロニカが言い出さなければ、爆弾魔は今日も爆破させていただろう。そして、今後も」


 ヴェロニカの言葉にかぶせて伝えた。


「そうです。ヴェロニカもどうぞ。キールやヴェロニカたちが、この町にいてくれて助かりました。町の人の不安も解消されたんですから」


 タビタはヴェロニカにも酒をついだ。


「あわわ……よくよく考えれば、人探しで来たのに」


 まっ、それは確かに。


「また明日から、地道にやっていけばいいさ」


 それから、タビタの手料理と酒を夜更けまで堪能して1日を終えた。




 翌朝。

 朝食を食べているとき、タビタの家のドアがノックされた。


「こんな朝から?」


 ドアを開けると、きっちりとした服を着た年のいった男が立っていた。

 背筋はしっかりしている。


「朝早くから申し訳ございません。こちらに、昨日、爆弾魔を捕まえた方たちがいると聞きまして」


「はい、いますけど……なにかご用ですか?」


「ご主人様が、人探しと布探しをご依頼したく、お会いしたいと……」


 布探しって、なんだよ?

 こっちも人探しの途中なんだよ。

 付き合ってられるか。


「あー、すまないが、こっちは便利屋じゃないんで、ほいほい頼まれても困るんだ。帰ってもらえるか」


 朝から、面倒くさい。


「おぉ、あなたが爆弾魔をつかまえたキールさま。……申し遅れました。私は、ランペルツ家に使えるヨーゼフ・ヘフネルと申します」


「ふぇっ。ランペルツ家の?」


「タビタ、知ってるのか?」


「いやいや、知っているもなにも、ハザシュの町の唯一の貴族です。1番上のお屋敷に住まわれている……」


「貴族だからって、こっちには優先制度とかないんで。こっちも取りこみ中なんだ」


「15才の双子の娘の1人が行方不明で、2週間探しても見つからず。たいへん困っております」


 ヨーゼフは丁寧に言う。


「そうだったんですか。親御さんはとても心配ですね。私もなにかお力になれればいいのですが……」


 タビタがいっきにヨーゼフに共感してしまった。


 これが、修道院出という心持ちなのか。


「もちろん、こちらもタダでとは言いません。報酬に最低でも1,500万セピー。働きによっても、もっと出すとご主人様はおっしゃっております」


「1,500万セピー? おカネ、ジャラジャラ……」


 なんでアルスが反応するんだよ。


 アルスは目を輝かせてしまっていた。


「キール。爆弾魔を捕まえてくれたその力、貸すことはできませんか?」


 タビタが頭を下げた。


 えっ、もう君もそっち側かよ?


「そう言われても……ん?」


 15才の双子の娘……行方不明……。

 誘拐……。


「まぁ、話だけは聞いてやる」


「キールさま。ありがとうございます」


「良かったですね」


 タビタは涙を浮かべるように、嬉しそうに言った。


「たくっ……やるかやらないかは、話を聞いてからだ」


「詳しいお話は、屋敷のほうで。ご主人様が直接お話しますので」


「わかった」


 朝食をさっと食べて、みんなで屋敷に向かった。

 中に通されて、高そうな壺や置物のある部屋に案内された。


 まるで城の中のようだ。

 いや、それ以上の作りか……。


 エレナ姫は、さすがだな。

 姫だけあって、この程度のモノは見慣れているんだろう。


「ふぇー、す、すごい……すごい……」


「で、タビタ。なんで君まで一緒なんだ?」


「だって、ランペルツ家ですよ。めったに入ることなんて、いやもう2度とないかもしれないと思って……」


 いや、頼まれたのはこっちだぞ。


「お待たせした。キール殿。この屋敷の主、ロイス・ランペルツです」


 顔に疲れの見える細身の男だった。


「凄腕の賞金稼ぎに、勇者、魔道具士、踊り子が、爆弾魔をとらえたと聞いて……」


 踊り子、ねー。

 踊ったところは見たことないが……。


「前置きはいい。ひとまず、詳しい話を聞かせてくれ」


「あぁ……」


 2週間前の朝、双子の娘、妹のニーナがいなくなっていた。

 夜、部屋で寝るを侍従が見ていた。


 それから使える手段は全部使って、ニーナの捜索に当たった。

 しかし、まったく成果はあげられていなかった。


 コレは、売り飛ばされたか……。

 もう足取りは追えないか……。


「妹のニーナの捜索と、もう1つ。眠れる布(・・・・)を手に入れてほしい」


「眠れる布、とは?」


 聞いたことないぞ。

 ちらっとアルスに視線を送ると、アルスも知らないと言うように首をかしげた。


「その布をかけるだけで、どんな状況下でも熟睡できるという布です」


「なんで、そんな布が必要なんだ。妹を探すことと関係ないだろ」


「ニーナがいなくなってから、姉のメラニーが上手く寝つけなくなっていて……もともと病気がちですぐに体調をくずしてしまって……」


 少しでも寝てほしいと……。


「そんな布の話は聞いたことがない」


「隣町ベゼアの魔道具士が作ったと噂で聞いて……」


 だったら、自分で手に入れろよ。

 カネが入ろうが、徒労で終わるな、これは。


 ドアが開いた。


「あの、ニーナを見つけてください、コホッコホッ」


「メラニー」


「メラニーさま。お部屋で休んでおられませんと、お体にさわります」


 ドアを開けたメラニーにかけ寄ったヨーゼフ。

 顔立ちの整ったメラニーは、明るい髪を背中まで伸ばして、寝間着姿のままだった。


「お願いします。妹ニーナを……ニーナが勝手にいなくなるはずがありません。コホッ、立派な魔法使いになると、いつも言って、練習にはげんでいました、コホッコホッ」


 ——魔法使い?


「なぁ、魔法のスキルはどのくらいだ?」


「魔法使いの家庭教師にも、来年はグレンツェント魔法学院にトップの実力で入れると聞いている」


 父ロイスが答えた。


 それなら、わざわざ姿を消す理由はないか。


「妹のニーナも体は弱いのか?」


「いえ、ニーナは活発で、元気がありあまっているほうです」


 ——まさか。

 ——シックザールか?


 指折りの魔法学校に入れる魔法スキルを持っているなら……。


 体が弱い姉メラニーを連れ去られなかったと考えると……。


 とはいえ、いなくなってから2週間。

 シックザールが関わっていない可能性もあるが……。


「キール殿、お願いです。これ以上、家族を失いたくない。メラニーの気持ちを考えたら、絶対ニーナを……」


 ここに母親がいないのは、そういうことか。


「お願いします、コホッコホッ」


 メラニーはその場に座りこんでしまっても、頭を下げてくる。


「キール?」


 話をくんだような目で、エレナが見つめてきた。


「報酬が、1,500万で少ないなら、2,000万いや倍の3,000万セピーも。頼む」


 ロイスも頭を下げてきた。


「しゃんじぇんまん……ジャラジャラ……」


「キール、どうします?」


 ヴェロニカが聞いてきた。


 はぁ……。


「わかった。依頼を受けよう……」


「ほ、本当ですか。ありがとうございます」


 ロイスがまた頭を下げてきた。


「ありがとうございます、コホッコホッ……」


「ささ、メラニーさま。お部屋へ」


 リーゼの行方も気になるところだが、今すぐリーゼの命に関わる話じゃない、と思いたい。


 ニーナを探して、なにも成果がないこともある。

 だが、もし、シックザールがからんでいるとなると。

 そこから、リーゼにも……。


 俺たちは、ニーナと眠れる布探しへと出かける。


「おもしろかった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「キールたち、今後どうするのっ……!」


と思ったら


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