第59話 ハザシュの町
翌日。
カーンカーンと、城の鐘が都に響き渡った。
すごい人だな。
国王の挨拶を聞きに、城の前には、多くの民衆が押し寄せていた。
国王をはじめ、紅蓮騎士団と俺たちは、城のバルコニーからその光景を眺めている。
「皆の者よ。先日の騒ぎで、多くの心配をかけた。しかし、その驚異からロラストの都を救ってくれた者たちがいる。紹介しよう」
民衆から拍手がわいた。
「まずは、紅蓮騎士団だ」
レオンたち5人とオオカミ1匹が国王の横に並んだ。
各々、民衆に手を振ったり、頭を下げていた。
いっそう拍手の音が大きくなり、歓声もあがった。
「そして、紅蓮騎士団とともに協力し、あの化け物を倒してくれたもう1人の英雄がいる。キール・ハインドだ」
いやいや、英雄とまで言われるほどのことは……。
「ほら、なにをしているキール。前に出よ」
「そうだよ、キール」
と、エレナが強引に俺を押した。
紅蓮騎士団の隣にエレナと一緒に並ぶ。
さらに拍手と歓声が一段と大きくなった。
「ほら、キールも手を振って」
エレナ姫は、その風格もあって堂々と手を振る。
「いや、俺は別に……。よく手が振れるな……」
「みんなの声援に答えてるんだもん。ほら、キールも」
「お、おい……」
エレナが俺の手首をつかんで、むりやり手を振らせた。
わーっと、それに反応するように、歓声と拍手が湧いた。
ヴェロニカとアルスも横に並んで、手を振る。
城の入り口。
リフィーを連れて、旅立つ前に立ち寄った。
紅蓮騎士団が見送りに来てくれていた。
「レオン、地獄の谷への地図だ。俺が進んだところまでだけどな」
レオンに丸めた地図を手渡した。
「途中までとはいえ、助かる。キールお墨付きのルートだ」
「レオンたちなら、指輪を捨てられるさ」
「あぁ……。キール、もう一度、聞いてもいいか?」
「なんだ?」
「やっぱり紅蓮騎士団に入らないか? キールの力で、いっしょに国を守っていかないか? キールなら十分にやれる」
「……期待してもらえるのは嬉しいよ、レオン。でも、俺にはやらなければならないことがある」
「そうだよな……。2回も断らせてすまなかった。上手くいくことを祈ってる」
「ありがとう。レオンたちも良い旅を」
どちらからともなく、手を差し出して、レオンと固い握手をかわした。
「行くのじゃな、キール」
「国王さま……」
城の入り口に、国王が現れた。
「今回のことは、深く感謝する」
「いえ、ありがとうございます」
「妹を救い出せるといいな。それと、シックザールの計画を阻止してくれ」
「はい、もちろんです」
「気をつけてな」
「はい」
リフィーに乗り、城から飛び立った。
「これから、どこへ向かうのですか?」
俺の前に座るアルスが聞いてきた。
「ひとまず、西へ向かう」
「キールの妹が、飛んでいった方向?」
背後から俺の腰に腕回して抱きついてるエレナが言った。
「そうだ。ヴェロニカもそれでいいか?」
リフィーの首から下がっているカゴの中にいるヴェロニカに聞いた。
「はい。私は行く当てもありませんので、お供します」
「よし」
リフィーのたづなを引き、西へと向かわせた。
ロラストの都が、どんどん小さくなっていく。
レッドエリクサーの化け物に破壊されたエリアが、はっきりと視認できる。
都でつかまえた賞金首の賞金は、受け取とることはしなかった。
暴動者や化け物に破壊された都の再興に使ってもらうためだ。
なんだかんだで、旅の資金も余裕が出てきている。
もし、少なくなれば、稼ぐだけだ。
西へ移動しながら、いくつかの町を経由した。
妹リーゼとロスワルドが移動していった光を見た者がいないか聞きこみをした。
まだ西へと飛んでいったことがわかり、エリンネリミア国の隣国ルクセチアに入った。
夕方、ハザシュという海辺の町に到着した。
海辺からすぐ山があって、斜面を利用して町が広がっていた。
「ひとまず、今日はここで休もうか」
「うん」
「はいです」
「はい、いいところですね」
パブを探しながら、町を散策する。
移動する光の情報も聞きこんでみたが、見た人がまったくいなかった。
ここを通過していないか……。
ということは、ここより手前で降り立ったか、方向を変えたのかもしれないな。
「み、みなさん……はぁはぁ……ちょっと……ま、待ってくださいぃぃ」
アルスが坂をゆっくりと歩きのぼってくる。
「な、なんで、こんなに坂ばっかりなんですかぁぁ……はぁはぁ……」
「そりゃー、斜面だからだろ」
「はいぃぃ……ですぅぅ……パブはまだですぅかぁ」
「まだ見当たりませんね。一緒に歩きましょう」
ヴェロニカがアルスの片腕を取って、引っ張る。
「ありがとうございますぅぅ」
こんな坂ばかりで、町の人もたいへんだな。
リフィーでひとっ飛びしたいところだが、どこの道も狭く、降りるのが難しいな。
「あっ、キール、あそこ。そうじゃない?」
「そうだな」
エレナがさらに上にある建物の看板を指差していた。
「アルス、もう少しだ。がんばれ」
「は、はいですぅぅぅ」
少し遅れて、アルスも到着して、パブに入った。
「賞金稼ぎなのかい、あんたたち?」
ちょびひげを生やした小太りの店主が言った。
「追っているヤツがいて、数日前の夜、空を移動する光を見なかったか?」
「移動する光? んいやぁ、その窓から外は見えるが、見なかったな」
「そうか」
「うちはパブだから、そこそこ遅くまで店を開いているが、いかんせんここは海と山の町だ。夜は早い」
「そりゃそうか」
「こんなところとういこともあってか、賞金首の情報もあまりないぜ。そういう話は、港のほうがあるじゃないか」
「ふぇぇぇ……また坂を降りるんですかぁぁぁ」
アルスが音をあげた。
もうアルスは限界か……。
「あぁ、物騒な話ならある。いや、賞金首にはなっていないんだが、ここのところあちこちで爆発騒ぎがあってな」
「爆発騒ぎ?」
俺が聞き返した。
「爆弾魔だ。捕まえたいのも山々なんだが、手がかりがつかめなくてな。あっ、賞金稼ぎだったら、そういうヤツも捕まえてくれるんだろ?」
「いや、賞金もかかってないのは……」
はっきり言って、ごめんだ。
この町にリーゼの情報がないなら、長いするつもりもない。
「それは危険ですね。早く捕まえないとですね」
ヴェロニカが、店主に心強い言葉を発した。
あぁ、そうだった。
元勇者がいたんだったな……。
その時だった。
バーンと、大きな音と衝撃が伝わってきた。
パブの建物も揺れるほどだ。
「またかっ。今回は、近いぞ」
店主はさっさと店を出て、確かめに行ってしまう。
「ほら、賞金稼ぎ。あそこだ」
開けっぴらいたドアに興奮した顔を戻してきた店主。
爆発した場所は、パブの通りを進んでいった少し先。
すでに建物から火があがり、黒煙がもくもくとのぼっていた。
「おもしろかった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「キールたち、今後どうするのっ……!」
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