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第57話 都の平穏

「できましたですぅ」


「アルス、なかなか良い腕をしておるな」


 ヨルグはとても感心していた。


「そ、そんな……お褒めの言葉をいただくほどでは……」


「いやいや、アルスの力がなければ、こんな威力のある爆弾を作れなかったですぞ」


 と、ヨルグは手に持っていた黒い弾をアルスに手渡した。


「紅蓮騎士団の魔道具士から言われたんだ。もっと誇っていいんだぞ、アルス」


「は、はい……」


 アルスは爆弾を見つめた。


「よし、キール。その爆弾を飛龍から落とせるか」


 レオンが爆弾を確認しに来た。


「あぁ、問題ない」


「俺とユリアヌスは、ウルスラのアセナに乗って出る。キールが爆弾を投下し、開けた穴から各自、コアを狙う」


「わかった」


「では、これを」


 アルスから爆弾を受け取った。


「ヴェロニカもリフィーへ」


「わかりました」


 ヴェロニカは強くうなずいてみせた。


「よし。1回で終わらせるぞ」


 レオンがぐっと拳を強く握った。


「「おおー」」


「エレナ姫、リフィーのたづなを頼む」


「うん」


 リフィーのたづなを握ったエレナ。

 俺とヴェロニカもリフィーに乗る。


「よし、行くぞ」


 レオンとユリアヌスがウルスラのオオカミに乗り、走り出した。


「姫、俺たちも」


「うん」


 エレナがリフィーのたづなを引くと、リフィーが翼を広げて羽ばたいた。


 レッドエリクサーの化け物に向かっていく。

 ゆっくりと歩く化け物の足元で、次々と建物が踏みつぶされて、破壊されていく。


 リフィーがちょうど化け物の真上にやってきた。


「あわわ……近づくともっと大きく見えますね」


 ヴェロニカが緊張気味に言った。


「怖いか、ヴェロニカ」


「怖くないといえば嘘になります。でも、この化け物を止めないと、もっと怖いことになりますから……覚悟はできています」


 剣を引き抜いた。


「さすが、勇者だ。それじゃ、はじめるか」


 赤くきらめくコアに向かって、爆弾を投げ落とした。


「ちっ」


 爆弾は風にあおられた。

 狙っていた落下位置から横にずれていく。


 爆弾が爆発したのは、化け物のやや側面だった。


 舞いあがった爆煙が風に流されていくと、想像以上の大きな穴があけられていた。


「コアまでは届いていないか」


 レオンか?


 オオカミが高い建物から飛びあがる。

 赤い鎧の2人の騎士が、オオカミの背中からジャンプした。


 ふさがりはじめる化け物の体を狙って、紅蓮の騎士2人は剣を振りかざした。


「「合技(ごうぎ)紅蓮(グレン)」」


 紅蓮の炎の波動が化け物のコアに向かっていく。

 そして、大きな爆発とともに火柱があがった。

 炎は、化け物の体をさらにとかしていく。


「コアの光がはっきりと見えるようになりました。あわっ、またすぐにふさがれそうです。そうはさせません。行きます」


 ヴェロニカが紅蓮騎士2人の開けた穴に向かって、リフィーから飛び降りた。


聖剣鋭光破斬ホーリーシュトラールスラッシュ


 一瞬の閃光が、コアをふさいでいたピンク色の肉壁を割いた。


「これで、とどめだ」


 コアがふさがれないうちに、即座にリフィーから飛び降りる。


 黒剣をかまえる。


暗黒閃明斬りダークブリッツブレイク


 赤くきらめくコアを真っ二つに切り割いた。


 化け物を突き抜けて、振り返る。


 コアの色がどんどん赤黒くなっていき、ついに粉々に砕け散った。


 そして、化け物の体も吹き飛ぶようにして、ピンク色の爆煙をあげて消滅した。


 やったか。


「「おおおおー」」

「「うわー」」

「消えたー」

「都が救われたー」


 都のあちこちから歓声があがった。


「やったね、キール」


 エレナは手を振り、リフィーが空中から降りてくる。


「キール、やりましたね」


 ヴェロニカも駆けつける。


「やったな、キール。その腕、賞金稼ぎにはもったいないな」


 紅蓮の騎士2人も駆けつけて、レオンが言った。


「俺は、ただ、とどめをさしただけだ。みんながコアまでの道をつくってくれたおかげだよ」


「ひとまず、脅威は去った。だが……」


 レオンは、化け物にめちゃくちゃされた周囲を見回した。


「まだ、暴動者たちがいるかもしれない。暴動者の確保と怪我した者の保護を」


「わかった」


 ユリアヌスが即座にうなずいて、駆けだしていった。


「キール、もう少しだけ力を貸してくれ」


 レオンが見つめてきた。


「もちろんだ」


「もちろん、わたしくも」


 ヴェロニカも強く言った。


 それから、暴動者を探して回り、都の人々を救助していった。


 レッドエリクサーを飲まなかった者たちは、化け物の騒動の裏で、盗みを働いていた。もちろん、容赦なく捕まえた。


 一方、レッドエリクサーを飲んでいた暴動者たちは、魂を抜かれたかのように意気消沈していた。


 レッドエリクサーの集合体に、魔力や生命エネルギーのようなものすらも抜き取られてしまっていたようだった。


 紅蓮騎士団をはじめ、ロラストの都の兵士らともに、夜通しで当たった。


 そして、朝日が都一帯を照らす。


 ふたたび、都中から歓声と拍手があがった。




「みんな、ご苦労であった。そして、ロラストの都を守ってくれて、深く感謝する」


 国王が頭を下げた。


 昼近くになって、城に戻ることができた。

 国王に呼ばれて、俺たちと紅蓮騎士団が広間に集まっていた。


「紅蓮騎士団、レオンよ」


「ハッ」


「この危機を察知して、騎士団の任務を放棄し、都に戻る決断をしたこと、素晴らしい判断じゃった」


「ハッ。ありがたきお言葉」


 レオンはサッと頭を下げた。

 紅蓮騎士団もレオンにつづいて頭を下げる。


「そして、この混乱の中、大いなる力を発揮してくれたキール、協力してくれたヴェロニカ、エレナ、アルスよ、本当にありがとう」


「いえ」


 俺が頭を下げると、エレナ姫たちも緊張気味に頭を下げた。


「キールよ」


「はい」


「聞けば、お主は賞金稼ぎだそうじゃな」


「はい」


「それでいて、わしや都を救ってくれたお主の能力は、とても高いと見受けられる」


「いえ……それほどのものではありません」


「しかし、お主らがたまたまロラストにいてくれたこと、わしらにとってとても幸運じゃったよ。紅蓮騎士団と協力してくれたこと感謝する」


「はい、ありがとうございます」


 ふたたび頭を下げた。


「ところで、アレクサンダーのことだが」


「アレクサンダーはどうなりましたか?」


 レオンが勢いよく聞いた。

 レオンの声が広間に響き渡って、静まる。


「先ほど、アレクサンダーが目を覚ました。もちろん、正気を取りもどしてな」


「はぁ、良かった……アレクサンダー」


 紅蓮騎士団に安堵の表情が戻った。


 そうか。

 無事だったか……良かった。


「まだ少ししびれが残ってようだが、大丈夫そうだ。ただな、魔力は消失したようだ」


「そ、そんな……」


「これも命あってのことだ」


「そうですね……」


 レオンの声に、嬉しさと悲しさが入り交じっていた。


「キールよ、彼、アレクサンダーを闇から救ってくれて、ありがとう」


「いえ、彼の無事を聞けたことがなによりです……」


「マナを使うキールが、ここに現れたのは運命だったのかもしれんな」


 運命……。

 あぁ、リーゼの生存も確認できた。

 その通りかもしれないな。


「みなのもの、夕刻まで、しばしゆっくりとするがよい。ささやかなではあるが、食事を用意させる」


「おもしろかった!」

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