第55話 妹リーゼとの再会
血だらけになった兵士の知らせを聞いて、緊張が走った。
すでに城の中に侵入者?
アレクサンダーは、いったい何のために……。
なにが起きている……。
レオンを先頭に、紅蓮騎士団パーティーと一緒に王の間へ向かった。
王の間に入ると、すでに戦っている者がいた。
「国王さま」
レオンが叫んだ。
「お前たち、ヘタに手を出すでないぞ」
国王は、光の盾を発動させて、攻撃から身を守っていた。
「しかし」
剣を握りしめて、今にも駆けだそうとしているレオンの腕をつかんだ。
「待て、レオン」
「あの光は、ただの魔法じゃない」
——マナだ。国王はマナ徒だったのか。
そして、黒いローブを着た2人が国王に手をかざし、光を撃ち放っていた。
あのローブ……赤い紋章……シックザールか。
ということは、マナ徒である国王が本命か。
「国王の護衛兵が全滅? あり得ない」
2人のシックザールと国王1人だけが対峙している。
国王を守っていたであろう兵士たちは、すでにあちこちに倒れていた。
レオンが言うと、紅蓮騎士団メンバーも信じられないといった様子だ。
「思ったより早かったな。闇落ちした騎士は、たいして足止めにならなかったか」
シックザールの1人が言った。
「そうね。で、ロスワルド、アイツら邪魔なんだけど」
「へいへい、消しますよ。1人で大丈夫なんだろうな」
「こんなじじぃに負けるわけないでしょ」
「そうかい……チッ……年下のくせに……」
シックザールの1人、ロスワルドが歩き向かってきた。
レオンだけでなく、紅蓮騎士団メンバーもかまえる。
「紅蓮騎士団、戻ってきたのか……そのまま闇の指輪を捨てに行ってたと思っていたのに……」
「ここは俺がやる」
前に出る。
「キール。しかし、1人では」
レオンが言った。
「ちょっとコイツらとは、いろいろあってな。レオンたちは、国王を頼む」
「……わかった」
「あ? 誰だ、お前? まぁ、どのみち全員消す」
ロスワルドが手をかざしてきた。
「レオン、行け」
床を蹴って、ロスワルドにつめ寄った。
「みんな、国王を」
レオンたちも駆けて、国王を助けに行く。
ほぼ同時に、今今までレオンたちがいた場所に火柱がのぼった。
無詠唱で、ムダのない発動……。
コイツは、もともとマナ使いのようだな。
となると、もう1人も同等の力を持っているだろう。
「わざわざ立ち向かってこなければ、いいものを」
と、ロスワルドは狙いを俺に定める。
俺の周囲を炎が取り囲む。
炎を無視して、ロスワルドに黒剣を振りかざす。
「なにっ?」
剣をよけた弾みで、ロスワルドのかぶっていたローブがめくれて、驚いた表情が見えた。
「その光は……貴様……」
「シックザール魔教会、だっけか。お前らのやっていることは、阻止させてもらうぜ」
黒剣の先をロスワルドに向けた。
「俺のマナを真っ正面から受けたと思えば、身を保護するその光……貴様もマナ徒か」
「そういうことだ」
「シックザールの名前を知っているなら、お前や国王がどうなるか、わかっているだろ? マナ徒は皆殺し」
「親玉は誰だ?」
「ふん、言ったところでムダだ。貴様はここで死ぬんだからな」
ロスワルドは強く俺をにらんできた。
たちどころに、俺の周囲に稲妻が発生する。
いっせいに雷が俺に向かってきた。
手をかざすことなく、マナを発動させるか。
かなりの使い手。
だが。
俺は手をあげた。
手のひらに稲妻が集まって、消失していく。
「チッ。シックザール四天王である俺のマナをこうも簡単に打ち消すとはな。でも、マナ徒の弱点は、マナを守ることにしか使えない。残念な教えだぁ」
ロスワルドは、勢いよく両手を振りあげた。
四方八方から巨大なツララが、同時に何本も俺に向かってくる。
床を蹴って、正面のツララを断ち砕き進む。
そして、黒剣をいっきにロスワルドの腹部に突き刺した。
「ごふっ」
ロスワルドの背後に伸びる黒剣を引き抜く。
ドバッと腹部からおびただしい量の血が漏れ落ちた。
「ぐはっ」
ロスワルドは膝から崩れ落ちた。
「マナを守ることにしか使わなかったとしても、いくらでも戦いようはある。少しの間、そこでへばってろ」
すぐさま足を踏みこんで飛び、レオンたちに加勢する。
レオンたちは、もう1人のシックザールに手こずっていた。
魔法攻撃もマナで防がれてしまい、マナの攻撃で近づけずにいた。
国王へのマナ攻撃に、レオンたちの攻撃をも防ぐ器用さの持ち主か。
「レオン、国王を」
「キール」
紅蓮騎士団の頭上を飛び越える。
「リーゼ、そいつもマナ徒だ」
自分の腹部に手を当てて、傷口の回復を施すロスワルドが叫んだ。
——リーゼ?
リーゼと呼ばれたシックザールの人物が振り向いた。
顔の上半分は、ローブに隠れていた。
——女。
突然、俺の前に風の刃が生まれた。
——コイツも純粋にマナを使う。
俺はマナで身を保護してそのまま突っこんで、剣を振りおろす。
リーゼは、剣を飛びよけた。
国王にかざしていた手がひかれて、攻撃もおさまった。
「国王様」
すぐにレオンたちが、国王に駆け寄って、敵から守るように囲んだ。
飛び退いた勢いで、女のフードがめくれた。
肩まで伸びた金髪の女。
ハッ!
「お前、リーゼ……なのか? リーゼ・エインスワース」
リーゼが目を細めて、俺を見てきた。
俺は息を飲んだ。
「なぜ、私の名前を……」
やっぱり、そうなのか……。
3つ年下の幼い頃のリーゼの記憶しかない。
でも、顔立ちは、あの頃のおもかげがある。
それに大人になって、母さんにも似ている。
間違いない。
「俺はキール・ハインド……いや、キール・エインスワース。お前の兄だ」
「は? 私の兄? 私に兄なんかいな……あっ、クッ」
リーゼは額を押さえた。
——どうした?
「兄? キール? 私の兄? うっ、くっ……」
「そうだ。ロザヒマナの森にあった村で暮らしていた。子供の頃、村が何者かに襲撃を受けた。村の人だけじゃなく、父さんや母さんもそいつらに殺された。俺は1人逃げてしまった」
「あっ、うっ……私は、わたしは」
「少したってから村に戻った。でも、リーゼ、お前はいなかった。遺体も……」
「……わたしはどうして……ずっとシックザールで……」
「おい、リーゼ、どうした? お前に兄妹がいたのか?」
腹部を回復させたロスワルド。
「……わ、わからない」
リーゼは、なにかを振り払うように頭を左右に振った。
そのとき、大きな地響きが聞こえてきた。
床も細かく振動した。
——な、なんだ、この気配は。
「あっ、くぁ……」
今にもリーゼは倒れそうになり、ロスワルドに体を支えられた。
「外でなにか起こっている。リーゼ、ここはいったん退くぞ」
「え、えぇ……」
ロスワルドとリーゼは光に包まれて、城の壁を通り抜けていなくなってしまった。
「おい、リーゼ」
俺の声が王の間に反響した。
「レオン、外へ。都でなにかが起こっておる」
国王が言った。
「は、はい。アンネは国王を。行くぞ」
レオンたちは王の間を出て行った。
「キールと言っていたか?」
国王が声をかけてきた。
「あっ……はい」
我に返って、慌てて返事をした。
「さっきは助かった。お主もマナ徒だったのじゃな」
「はい……国王さまも」
「うむ。ヤツらは……」
「シックザール魔教会と名乗っていました。マナ徒を殺しに回っているようです」
ふたたび、地響きが伝わってきた。
そして、聞いたこともない咆哮が、外から鳴り響いてきた。
「おもしろかった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「キールたち、どうなるのっ……!」
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