第51話 赤の量産品
「キール、やったのですね」
ヴェロニカが立ちあがった。
「いや、まだだ。ヴェロニカ、今のうちに外へ逃げろ」
あとあとのことを考えると、ヴェロニカをここに置いておきたくない。
「いえ、私も戦います。これでも元勇者ですから……」
剣をかまえなおす。
「いやいや、今はそんなことを言っている場合じゃ」
ダフネルが立ちあがった。
「私としたことが、油断しましたね。半信半疑でしたが、思った以上に効き目のあるようだ、レッドエリクサー」
はぁ……。
ドイツもコイツも平気でレッドエリクサーを飲むな。
どんな効果があるのか聞かされていないんだろうな。
「そんなものを飲んで、あとでどうなっても知らねぇぞ」
「心配は無用。本当に心配される前に、お前は意識を俺に奪われている」
ダフネルは床を踏みこんで、短剣も抜いて、突っこんでくる。
今度は、二刀流か。
器用なヤツだ。
そう来るなら、俺も。
腰後ろから短剣を引き抜き、剣と剣、短剣と短剣で押し合う。
「さっきとは違いますよ」
ダフネルの腕がぶくりと太くなる。
くそっ、押されてる。
「どうしました? そこそこやれると思ったのですが、たいしたことないようだな」
しっかりレッドエリクサーの効果かが出てるじゃねーか。
「ハッ」
剣をなぎ払うと、ダフネルは後方に飛びあがる。
空中で短剣を口にくわえ、またナイフをいくつも投げつけてくる。
どんだけの数、持ってるんだよ。
と、全部のナイフを軽々よける。
力だけでなく、速さもアップか。
この手のヤツにレッドエリクサーは、うまく効くな。
動きを止めるか……。
「急・閃鋭風針」
ダフネルの着地する足を狙った。
ダフネルは後方に足を払って、魔法をかわした。
「よくあの体勢でかわせたな」
「俺をなめては困る。だが、貴様の引き出しもわかりはじめた」
すると、ダフネルは体を回転させながら飛びあがる。
回転の勢いとともに、体中から無数のナイフが飛びできた。
一帯にナイフが飛び広がった。
ちっ。
テーブルを倒して、その影に隠れる。
ガガガッと、ナイフが天板にいくつも刺さった。
「うぎゃー」
「グアッ」
隠れられなかったか。
ヴェロニカは大丈夫か?
テーブルの影からのぞくと、ヴェロニカも台の影に隠れていた。
さすが元勇者。
さて、どうする?
ダフネル兄は、俺が殺してこないことをわかってるな。
だが、そろそろ時間だろう。
「さぁ、出てこないのか? ここまで相手になるなら、もっと俺を楽しませてくれよ。ウグッ……そ、それとも策は尽きて逃げ出したかぁ……はぁ……はぁ……な、なんだ、この感覚は……」
ダフネルは股間を両手で押さえる。
内股で。
「な、なぜ、こんなときに」
「レッドエリクサーのもう1つの作用だよ」
水を飲ませてみるか……。
って、もうそんな時間はないか……。
「はっ、ハッ、ハァアァァァァ」
ダフネルは背中をのけぞらせる。
バサッと、着ていた服が弾けた。
そして、股間にはアルスのいうこん棒が、ギンギンに天に向かって勃っていた。
「あー、あー、あー」
弟と同じく獣と化したか。
「あわわわ……いっ、いったい、ど、どうしたことでしょう」
ヴェロニカは両手で自分の顔を覆ったが、指の隙間はしっかり空いている。
はっきりと目が開いているぜ、ヴェロニカ。
「オ、ン、ナ……オ、ン、ナ……オンナァァァ」
ダフネルは、ヴェロニカに気づいてヴェロニカに猛進する。
「ヴェロニカ、すぐに逃げろ」
テーブルの影から飛び出しす。
「あわわわ、こ、来ないでくださいぃぃぃいやぁぁぁぁ」
「はいはい、猛獣は大人しくしてろ」
烈・暗黒拘束
ダフネルに手をかざした。
黒い煙が蛇のようにダフネルの体にまとわりつく。
ダフネルは走る格好のまま体を固めて、その場に倒れた。
「もう大丈夫だぞ、ヴェロニカ」
「あわわ……はい、あ、ありがとうございます。ピクリとも動きませんね」
ヴェロニカはチラリチラリとダフネルをこん棒を見ていた。
「あぁ、拘束魔法で拘束したからな」
「キールは、なんでもできるのですね」
「そうでもないさ。さて、コイツを……んっ?」
別の賞金首たちがぞろぞろと現れた。
奥にもまだいたのか。
「ここを仕切っていたくせに、いの一番に捕まるとは、フォルカー・ダフネルもたいしたことねーな」
「殺し屋のダフネル兄弟と聞いてあきれるぜ」
「そうだな、ハハハ……」
「こんなヤツ、人数で押せばいける」
8人ほどがいっせいにレッドエリクサーを飲んだ。
そして、剣をかまえていっせい飛びかかってきた。
どれだけレッドエリクサーは作られてるんだ?
そろいもそろって、所持してやがる。
この暴動にあわせて持たされているのか?
「取りこんで、いっせいにやれば、逃げられねー。ここだー」
「雑魚がレッドエリクサーを飲んだからって、雑魚は雑魚だ」
次々と振りおろされる剣をかわす。
飛びあがって、集団に手をかざす。
「破・麻痺拘束」
「グアァ……か、体がしびれるっ」
しばらくそのまましびれていろ。
「キール、本当にムダのない身のこなし。しっかり賞金首を捕獲するスキル、とても勉強になります」
「そうか?」
「はい、もちろんです。攻撃をかわして、拘束魔法ですね」
「袋づめ、終わったぞ……?」
奥の部屋からパンパンにふくらんだ袋を抱えた男が出てきた。
「えっ、なに、これ? いったい……」
「まだいたのか」
男は袋をその場に落として、レッドエリクサーを飲もうとする。
「破・麻痺拘束」
男に手をかざす。
「ハギャッ」
レッドエリクサーをつかんだまま、男は固まって倒れた。
「ダフネル兄はともかく、ほかのヤツらも懸賞金、かかってるのか。この程度で……」
「ど、どうなんでしょう。手配書はもうないですし」
「こいつらが賞金首でもたいした額にはならないかもなぁ」
「やっと終わったか……」
アイツらは、手配書をくれてやったヤツら。
騒動が終わるまで、物陰にひそんでいたのか……。
「もらった手配書の賞金首は、ここにはいなさそうだな」
横取りする気だったのか……。
「ヴェロニカ。ほかのヤツらに持っていかれないように、暴れたヤツらをパブに連れていくぞ」
「あ、はい」
まずは、殺し屋のダフネルだな。
「キール」
エレナとアルスがカジノに駆けこんできた。
「姫さん、アルス……宿に戻ってろって」
「違うの。都のあちこちで暴れる人たちがたくさんいて」
「ヤバいですぅぅぅ」
「本当か?」
カジノだけで起こるわけじゃないのか。
「おもしろかった!」
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「キールたち、どうなるのっ……!」
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