第48話 女賞金稼ぎヴェロニカ
白銀の鎧を着た女が落とした手配書を拾う。
エレナとアルスが拾った手配書を受け取ってまとめ直す。
その際、ざっと手配書の顔と名前に目を通す。
懸賞金としては低いな。
どれも100万セピー未満。
A級B級の賞金首ばかりか。
こんなヤツらばかりが、やってくるのか?
「ほらよ」
ずれた兜の位置を直した女に、手配書の束を手渡した。
「あわわ……あ、ありがとうございます……」
顔を見る。
まだ、若そうだな。
といっても、エレナ姫より少し年上なくらいか。
「あんた、賞金稼ぎなのか?」
「あ、はい。賞金稼ぎになったばかりで……諸事情でパーティーを追い出されて、右も左も上も下もわからないんです」
あぁ、そういうことはどこにでもあるんだな。
ただ、なんなとく追い出された理由がわかる気がする。
だいぶ、ゆったりとした性格だからな。
「そ、そうか……」
だからって、賞金稼ぎをはじめるのに、わざわざそんな鎧を身につけてなくてもいいと思うが。
まぁ、着こなしは悪くない……。
「近々、たくさんの賞金首がここに集まってくると聞いたので、探してるところです。おカネが心もとなくて……えっと、あなたは……賞金首?」
なんでそうなる。
女は、手配書を1枚1枚めくって、俺の顔と照らし合わせている。
——どこかに、こんな風に手配書と顔をいちいち確認していたやつがいたな。
「残念だが、俺は賞金首じゃない」
「あわわ……そ、そうなのですか?」
「キールは、すごい賞金稼ぎなんだよ」
エレナが俺の腕をつかんで上機嫌で言った。
「えっ、しょ、賞金稼ぎ……本物の賞金稼ぎなんですか?」
女は目を丸くした。
「そうだよ。谷で商人の荷物を奪う賞金首やドラゴンを狩る悪い賞金首たちを捕まえてるんだよ」
「お、おい」
エレナをにらむ。
「嘘は言ってないんだし、いいじゃん」
「まぁ、そうだが、言わなくてもいいことだ」
「そ、それはすごい賞金を稼いでいらっしゃるんですね。ぜひ、キールを目標にさせてください」
「えっ、目標? いや、目標にされてもな」
「実際に賞金稼ぎをされている方がいると、なんとなく進めそうです」
なんとなく……か。
よくわからない人だ。
「あわわ、申し遅れました。わたくし、ヴェロニカ・オルブリヒトと申します」
「キール・ハインドだ」
「キールもここにやってくる賞金首を探していたんですよね。お仕事の邪魔をしてすみませんでした。それでは……」
と、ヴェロニカはカジノに入って行った。
いや、俺は仕事の途中でもなんでもなかったんだが……。
なぜ、ヴェロニカはカジノの中に?
賞金首がいるとは思えないが……。
「カッコイイ!」
エレナがカジノの中に消えていくヴェロニカの後ろ姿を見つめていた。
「ん、なにがだ?」
「ヴェロニカの身につけてた鎧。やっぱり、私も鎧を着てみたい」
エレナが目を輝かせて、下から俺の顔を見あげてくる。
「やめておけ。重くて動けないのがオチだ」
「そうだ。カジノでジャラジャラして鎧を買う。さぁ、私たちも行こう」
エレナに腕を引っ張られるようにカジノの中へ入る。
多くの客が、さまざまなゲームに夢中だった。
エレナとアルスは、客のやっているゲームを後ろからのぞきこむ。
「コレ、やってみたい」
「へいへい」
と、少しばかりコインを渡す。
結果は……
「さ、最初はこんなものよ。次はきっと……」
エレナは別のテーブルを探して移動する。
「今度は、アレ」
「へいへい」
勝手に動かれて、はぐれても面倒なので、エレナとアルスのあとについて行く。
いくつかのゲームを渡り歩いたときだった。
「おい、女。変な言いがかりはよせよ、ああ?」
「あなたには12万セピーの賞金がかかっています。迷惑をかける前に、大人しくわたくしにおつかまりになってください」
「なんだ、この女?」
「手配書なんて持って、賞金稼ぎのつもりか?」
ざわついている方を見ると、男たちに囲まれている白銀の鎧を身につけている女がいた。
——ヴェ、ヴェロニカ? 早速、なにをしたんだ?
「どうせ、コイツも例の話を聞いてきた口だろ」
「あなた方は、都でなにかをすることはわかっています」
ヴェロニカは、ゆったりとだが、自信あり気に言う。
——なにかって、なんだよ。
「ふざけるな。俺たち賞金首でもなんでもねぇーよ」
「いいえ、しっかりこの手配書にあります」
と、束でつかんでいた手配書を男に見せる。
が、バラバラと手から手配書が落ちてしまう。
「あわわ……」
ヴェロニカは落ちた手配書を集めようとかがむ。
しかし、兜がずれて、手配書のないところばかりに手が伸びる。
——あの手配書には、男の顔はなかった。ヴェロニカの間違いだろう。
「おい、女、ふざけるのもいい加減にしろよ」
男が足下にあった手配書のふみつけて、ヴェロニカに近づいていく。
「大人しくおつかまりになっていれば……」
ヴェロニカは、スッと、腰につけていた剣を握りかけた。
——まずいっ。
一瞬、床をふみこんで、男とヴェロニカの間に割ってはいった。
「おっと、ご両人。ここまでにしておこう」
「誰だ、お前?」
「あわっ、キ、キール?」
兜をかぶり直したヴェロニカが顔をあげた。
「あん? お前ら知り合いか?」
「まぁ、そんなところだ。で、彼女、かなり目が悪くて、見間違いしていたようだ。申しわけない」
落ちた手配書をサッとかき集める。
「あんたたちも例の話を聞いて?」
「あ、あぁ、そうだが」
「この手配書を差し出す代わり、彼女を許してやってくれないか?」
「あ、あぁ……パブに行っても集まってきそうな賞金首の情報がなかったからな……これで勘弁してやるよ」
男たちは手配書を見ていた。
「疑ったりして悪かったな」
「あぁ」
「行くぞ」
ヴェロニカを連れて、その場から離れた。
——あのままヴェロニカが剣を引き抜いていたら、痛い目に合っていたのは男たちのほうだったからな。
「キ、キール……わたくしの手配書……」
なんでそんなに涙目なんだよ。
その手配書だけで、本当に見つけられると思っているのか?
「真っ昼間のカジノで、賞金首が楽しんでいると思うか」
「あわわ……きっとおカネがからむところに悪い人がいると思って……」
グスリと、ヴェロニカは涙をひとつこぼした。
「ぐわぁぁぁ、キール」
「ジャラジャラ、できませんでしたぁぁぁ」
エレナとアルスも涙をほとばしらせて、せっついてきた。
あぁ、なんだろ。
この光景だけは、はっきり想像できていたんだよな。
落ちこんだ3人の肩に腕を回して、とぼとぼとカジノを出た。
飯でも食わせれば、元気になるだろう。
「おもしろかった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「キールたち、どうするのっ……!」
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