第44話 シックザール魔教会
窓の外に見えていた炎が消えた。
「火が消えたー」
「すごーい!」
「呪文、となえてないのに……」
「おじさん、すごい!」
子供たちが驚く。
「そこはお兄さんだろ」
いや、俺も子供からしたら、おじさんなのか……。
ちょっと心が痛いな。
「キール、いったいなにをしたの?」
「炎を消したのさ」
「それは見ればわかるけど……」
「なに。マナにうったえかけただけだ。炎よ、静まってくれって」
「えっ? マナって、そんな風に扱うの?」
マオノがあきれたように言う。
「極論はな。呪文で制御する魔法に比べると、マナのほうが人との距離感は少し近いんだ」
「それは、はじめて聞いたわ。外に逃げたアイツらは?」
「外にいる。こっちの様子をうかがっているようだ。マオノは、子供たちとここにいてくれ」
さっき突き破って入っきた窓枠に足をかける。
「わかった」
ひょいっと、窓枠を蹴って外へ飛び出た。
「貴様がやったのか?」
ローブを羽織っている男が、ステッキを俺に向けた。
「さぁーてね」
同じ説明をするのも面倒だ。
わざわざ手の内を明かすか。
むしろ、マナ徒ならわかることだろ。
「ルーペルト、いったいどういう」
女が男に言った。
「いや、俺にもまったく……まぁ、でも、コイツが出てきたってことは、子供たちがまだ教会の中で息をしているってことだ。奪い返すまでだ。マルギット」
男が言った。
「えぇ。外なら、上級魔法が使いやすい」
「さっきは子供たちがいたからな。遠慮なくやれる」
「烈・豪華豪雷」
広範囲に、天から雷がいたるところに落ちてくる。
次々と降りそそぐ稲妻をよけていく。
「そんな……あれだけの雷をよけつづけるなんて」
「マルギット、なに躊躇してるんだ。本部に知れたら、俺たちだって」
「わかってるよ」
マルギットはふたたびステッキを強く握りなおす。
「極・豪華豪雷」
レベルをあげても無駄だ。
ただただ地面に黒い穴をいくつもあけていく。
――芸がないね。
「バカな……私の魔法をすべてよけるなんて」
「マルギット。そのまま続けろ。極・直進雷光線」
ルーペルトのふりかざしたステッキの先から、稲妻が一直線に放たれる。
上から落ちてくる稲妻。
正面から向かってくる稲妻。
俺は、軽々とかわす。
「1発よけられたからって油断するなよ。1発だけだと思うな」
ルーペルトが、ステッキを何度も振りかざしてくる。
ステッキの先から雷光線がいくつも向けてくる。
――まったくコイツも芸がないね。
「なにっ? コイツ、後ろにも頭の上にも目がついてるのか」
「全方位を取り囲んでるのに、なんで当たらないのよ」
「次は、俺の番ってことでいいか」
稲妻の間をくぐりぬけて、ルーペルトの前に出た。
「速いっ」
ステッキを持っていた手首を力強くつかみ、ルーペルトの懐に入りこんだ。
「痛っ!」
そして、容赦なくルーペルトの腹部に黒剣を突き刺した。
「ウグッ……ググッ……」
「今度は、マナの保護は回避させてもらったぜ」
ルーペルトの腹部から剣を抜く。
腹部から鮮血がボタボタとその場に流れ落ちる。
「ゴブッ……ギ、ぎさま……」
腹を押さえこんで、膝をつくルーペルト。
「ルッ、ルーペルト!」
「次は、お前だ」
マルギットに剣を向ける。
「くっ、なめやがっ!」
一瞬でマルギットとの間合いをつめて、ステッキを持った手首を握る。
「放せっ、極・っ、グッ」
魔法を放つ前に、マルギットの腹部に黒剣を突き刺した。
「お前ら、マナ徒って言ってたわりには、マナを使わないんだな」
マルギットの腹から剣を抜く。
ボタボタと血が流れ落ちる。
「ゴフッ……な、なんだと」
マルギットは腹部を抱えこんで、前かがみに倒れた。
「油断したな。死ねっ」
背後からルーペルトが叫んだ。
ルーペルトが放った無詠唱の火球の連弾を、背を向けたままよけた。
「なにっ?」
「そんな敵対心むき出しでマナを使えば、後ろを向いていても簡単に感じとれるんだよ。マナ徒なら」
振り向くと、ルーペルトの傷はすでに癒えていた。
回復魔法を使ったか。
腹部を貫いたから、魔力をだいぶ使ったはずだ。
どこまで、もつかな。
「貴様もマナ徒なのか。あの村にこんなヤツがいるなんて、本部から聞いてなかったぞ」
「なに、俺はあの村に用があって、たまたま来ただけだ」
「それなのに、わざわざ首を突っこんできたのか」
「子供たちをさらって見過すわけにはいかない。お前らがマナ徒だって聞いてな。それに、そのローブの紋章、どこの紋章か知りたくてな」
「ふん。これから新しいマナ徒が世界を支配する。我らがシックザール魔教会」
「シックザール魔教会……」
「貴様もマナ徒というなら、生き遅れた古いマナ徒」
「その古いマナ徒は、滅亡してもらわないと、新世界が汚れるのよ」
マルギットも回復魔法を自分にほどこして立ちあがった。
――それで、俺の村やマナ徒の村々が、つぶされていったのか。
――シックザール魔教会……。
「貴様は、ここで死んでもらわなければならない」
ルーペルトがステッキを向けてきた。
「魔法素質のある子供たちは、新しいマナ徒になり、シックザールに仕えるのよ。新世界を作るためにね」
マルギットもステッキをかまえる。
新しいマナ徒になる?
本来、マナ徒は血筋で遺伝するものだ。
そうでない人をマナ徒にするというのか。
「お前らは、本当のマナ徒じゃないんだな?」
「貴様の言うマナ徒は、過去のもの。我らはマナに従うんじゃない。マナを従わせる者が、我ら、シックザールのマナ徒だ」
「マナは、人とともにある。人がマナを従えるものじゃない。もし、そんなことを続ければ……」
「うるさいね、これだから過去のマナ徒は、消されるんだよ。陣・大炎上」
マルギットが魔法陣を発動させた。
俺の足下だけでなく、あたり一帯に魔法陣が広がった。
教会をも取りこむほどだ。
そして、地面から炎がいっきに燃えあがる。
「いいぞ、マルギット。魔法陣なら、マナでどうにかできるものじゃないからな」
ふん。
「コ、コイツ、きいてない……」
「そりゃそうだろうよ。俺だって、マナで自分を保護できるだから」
白く薄い光が、炎から守ってくれている。
とはいえ、魔法陣を対処する術はもっていない。
けど。
荒れた海のようにうねる炎を生み出す魔法陣が、白い光を放って消えていく。
「なぜだ。魔法陣が……」
マルギットの目が動揺して泳いでいる。
「キール」
わかってるね、マオノ。
「マオノ、ありがとう」
マルギットとルーペルト2人に黒剣を向ける。
「お前らの使うマナは、見逃せないね」
「マナ徒がマナ本来の力を発揮させないで、なにをする?」
ルーペルトもステッキをかまえた。
「人を傷つけ、人を支配するマナの使い方。その使い方が間違ってるって言ってるんだよ」
――閃鋭乱風斬
マルギットとルーペルトの体を切り刻んだ。
一帯に血しぶきをあげながら、2人はその場に倒れた。
「マナ徒がそんな剣技を……」
マルギットは、血だらけ手で懐から赤い液体のはいった小瓶を取り出した。
「ここは、我々がシックザール四天王様に管轄を任されているんだ。こんな失態は許されない」
ルーペルトも赤い小瓶を取り出して、口に運んだ。
コイツらもレッドエリクサーを持っていたのか。
「おもしろかった!」
「今後どうなるのっ……!」
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