第42話 レッドエリクサー
「ゴク……ゴク……うへぇー、これはうまいもんじゃねーな」
赤い液体を飲み干したファルコは、小瓶を投げ捨てた。
――赤いポーションなんて、見たことないが。
「でも、体の中から力が湧いてくるねぇー」
ファルコは、グッと拳を握る。
なに?
腕がひと回り太くなったぞ。
筋力をあげる薬かなのか?
「おぉ……きたきたきたキタァーーー」
ファルコの体格が、一瞬でひとまわり大きくなった。
「渡されたときは、こんなもの使うかと思ってたけど、使ってみると案外いいもんだな。気分がいい」
ファルコは地面に刺さっていた自分の大剣を引き抜いた。
そして、その切っ先を俺に向けてきた。
さっきとは違う。
剣の動きが軽くなっている。
「配達屋の賞金稼ぎさんよ。さっきは油断しちまったが、次は隙も与えないぜ」
「姫さんたち、ここから離れろ」
「う、うん」
マオノがエレナとアルスをかばいながら、ゆっくりと後方へと下がっていく。
「誰をこの村に届けに来たか知らないが、今ここにいる人間は全員、真っ二つだからよー。まずは、配達屋。お前からだっ」
地を蹴ったファルコが、いっきに間合いをつめてきた。
「クッ」
大剣を黒剣で受けとめる。
――さっきより速いっ。
「速さだけじゃないぜ。オラーーー」
「グッ」
ギギッ、ギギッと剣の刃がにぶくズレる。
ふん張る足が、土の上をゆっくりと滑る。
――押されてる。
「さっきの勢いはどうした? 口だけかよぉ」
ファルコがいっきに剣をなぎ払った。
その勢いを利用して、俺は後方に飛びのいた。
「キ、キール?」
エレナが声をかけてきた。
「大丈夫だ」
心配されるとは、まだまだだな。
「これがレッドエリクサーの力か……悪くないねぇ」
ファルコはニヤリと笑みを浮かべた。
――レッドエリクサー? さっき飲んでいたものか。
「配達屋、次はどれくらい耐えられるかな。フンッ」
ファルコが体に力を入れると、さらに体格がよくなった。
やれやれ。
あまり調子に乗らしておくと、姫さんが割りこんで来ちまいそうだな。
黒剣をかまえ直す。
キラリと、黒い表面が光を反射する。
その一瞬で、またファルコが間合いをつめて剣を振り降ろしてくる。
一閃の光りのごとく、俺も黒剣を振り切った。
ファルコの大剣を弾く。
その隙に、投擲ナイフをサッと取り出して投げつける。
「おっと」
体勢を崩しながらも、大剣の面でナイフを防いだファルコ。
「いい判断力だな……それもレッドエリクサーってやつの効果か?」
「ふん。そういう小細工は、俺は好きじゃないんだよ。兄貴は好きだけどな」
「へぇー、ならその兄貴とやらも、捕まえに行くかな」
「そういうことは、俺を捕まえてから言うんだよっ」
ファルコが大剣をむやみに振り降ろしてくる。
かわすと、大剣の切っ先が地面に刺さる。
刺さった先の地面が切れ割れる。
――コイツ……。
「ほらほら、どこ見てんの?」
まるでオモチャの剣を振り回す勢いでファルコが切りかかってきた。
――さっきまでの冷静な狙いとは違う。いったい、どうした?
「オラァァァーーー」
ファルコが大剣を振り降ろす。
俺も黒剣をそれに合わせて振り抜く。
「なにぃ」
ファルコの大剣がくだけ折れた。
俺の剣は無事だ。
さすがアルスの硬質化による修復。
とはいえ、ファルコの力が強すぎて、剣がその力に耐えられなかったようだな。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
肩で息をしはじめるファルコ。
悪い目つきが、かっぴらいて赤く充血している。
「あぁ……あぁ……も、もう……ダメだぁぁぁ、我慢できねぇ……」
――な、なんの我慢だ?
「グァアアア……」
突然、ファルコが背中をのけ反らせた。
さらに体が大きくなった。
そして、全身の衣服が弾け散った。
「「キャァァァ……」」
俺たちの戦闘を見ていた村人の女性たちが悲鳴をあげた。
「なっ、なんですかぁ、あのぶっといこん棒は……人にあんなこん棒が生えることあるんですかぁ?」
アルスの声が背後から聞こえてきた。
真っ裸になったファルコの中心部から、天に向かって|こん棒がそそり勃っていた《・・・・・・・・・・・・》。
「元から生えているんだろうけど、太く成長しすぎだろ」
――どうして、一物がそんなになるかね。
「人のモノとは思えない」
村人の男の声。
「あぁ……あぁ……」
だみ声なのか、もだえる声なのか、ファルコはよだれを垂らし、獲物を探す獣のようだった。
「ぐぁああああぁぁぁ」
突然、走り出した。
ものすごい速度で蛇行して進む。
ちっ。俺をよけるようにして、背後へ。
「イヤーーー」
「こっちに来ないでぇぇぇ」
エレナとアルスが悲鳴をあげる。
すぐに、マオノが2人の前に出て、ステッキをかまえた。
「急・大火球弾」
マオノが、ファルコを余裕で飲みこんでしまうほどの火の球を放った。
「えっ、そんなっ。キャッ」
ファルコが火の球を突き破り、マオノを押し倒した。
「あぁ……あぁ……」
そして、こん棒を今にもマオノに突き挿そうとする。
「いやぁ、そ、そんなの……」
「マオノ!」
地を蹴って、一瞬でファルコとの間合いをつめる。
――痺れて、口が聞けなくなっちまうが。
「烈・暗黒拘束」
「ウッ、ウグッ、グッ、グッ……」
マオノを押し倒した四つん這いの格好のファルコが動かなくなった。
「大丈夫か、マオノ?」
すぐにファルコの下から引き出してやった。
「だ、大丈夫よ……ありがとう、キール」
震えるマオノの体をやさしく抱きしめてやった。
ファルコのこん棒は、ガチガチに硬さを保ったまま今にも地面に突き刺さりそうだった。
――冷静さを失って、本能のままに女を襲う。
――コレもレッドエリクサーの効果なのか?
――いったいこんなものを誰が……。
「マオノや……無事じゃったか……」
村の男2人が、よぼよぼの老人を支えるようにして近づいてきた。
「ピウス村長……はい。村長もご無事で……」
「若いのや。村の民とマオノを救ってくれてありがとう」
「俺は賞金首をとらえただけです」
「強いのじゃな。マオノと一緒じゃったのか?」
「はい。クラオエから私を助けてくれたのもキールです」
「そうだったか。キールよ。ふたたび感謝する。それより、そっちのおなごも……えらくイイものをもっているのぉ」
村長は鼻の下を伸ばして、エレナをいやらしく見つめている。
「? ど、どうも……」
エレナは軽くお辞儀をする。
「ほほほ……深い谷間じゃな……ほほほ」
「マオノ。本当にこの人、村長なのか?」
小声で聞いた。
「えっ、えぇ……昔から女の人が好きで……もう手を出せる力はなく、今は見るだけで満足してるけど……」
マオノも困ったように答える。
「そ、そうなのか……」
「村長。そんなことより」
一緒にいた村の男が言った。
「そうじゃった。実はの、あの男の仲間と思われる者たちに子供を連れて行かれてしまったのじゃ」
「えっ?」
マオノは息を飲んだ。
――村長さんよ。女を見るより、先にそれを言うべきだろ。
「おもしろかった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「キールたちは、どうするのっ……!」
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