第41話 ソピナ村の襲撃
「朝食も済んだことだし、出発しよう」
「はい」
「はいです」
「うん」
クァ
マオノがリフィーの首にかかるカゴに乗りこもうとする。
「あ、マオノ。今日は、リフィーの背中に乗ってくれ。上から道案内してほしい」
「えぇ、そういうことなら」
「アルス、今日はカゴの中でいいか?」
「あっ、はい、もちろんですぅ」
体を下げたリフィーに乗ろうとしていたアルスは、ひょいっとカゴの中に入った。
リフィーの背中に乗って、エレナを引きあげて俺の前に座らせる。
マオノも引きあげて、俺の後ろへ。
「それじゃ、出発だ」
リフィーのたずなを引く。
バサバサッと、ドラゴンの翼が羽ばたいた。
辺りの砂を舞いあがらせながら、リフィーが浮いて、飛びあがる。
地図を広げて、マオノの村の方向を確認する。
「マオノの村はソピナ村だっけ?」
「えぇ、そうよ。この辺りね」
マオノは、俺の背中に胸を密着させて、横から腕を地図に伸ばしてきた。
「それじゃあ、この川を辿って、山を越えればいいかんじだな。よし」
たずなを振って、リフィーを川の上空へと向かわせる。
川をさかのぼるようにして、まっすぐ飛ぶ。
いくつかの町や村を通り過ぎていく。
「おっ、大きなお城が見えてきましたぁ」
カゴの中からアルスの声が聞こえてきた。
「ロラストの都よ。エリンネリミアの王都」
川を背にして、大きな城が建っていた。
川の一帯に、町並みが広がっている。
「リフレリアよりにぎやかそう」
エレナが見下ろしながら言った。
「そうだな」
人々がいたる通りを歩いているのがわかる。
米粒のようだけど。
「ここの都には、エリンネリミア最大のカジノがあるの。他国からも多くの人が来ていたりするらしいわ」
背後からマオノが言った。
「へー、カジノか。ひょっとしたら、賞金稼ぎやるより、楽して稼げるか……」
「私、カジノ行ったことない。おカネがジャラジャラ出てくるんでしょ? ジルが言ってた」
エレナが振り向いた。
いろいろ端折って教えていないか、ジルさんよ。
「王女様があまり出入りする場所じゃない。カジノには運も必要だ」
「そうなの? でも、私ならジャラジャラできそう」
「おカネ、ジャラジャラ……ジャラジャラ……」
アルスが言う。
目を輝かせているアルスが容易に想像できた。
アルスよ、正直、お前がジャラジャラしているところは想像できないぞ。
「キールは、どうなのよ?」
マオノが聞いてきた。
「昔、旅しているときに、たしなんだことがあるくらいだ。あまりカネもつぎこまなかったし、たいした儲けにもならなかったな。負けはしなかったけどな」
「堅実なのね」
「そういうのを楽しむタイプでもないからな。マオノの件が済んだら、寄ってもおもしろそうなところだな」
「うん、カジノ、いこいこ!」
いや、ほかにも見るところはあるだろうよ。
さらに川をのぼり、大きな山を越える。
広く山に囲まれた平野が続いていた。
「そろそろソピナ村の地域よ……」
マオノの声が緊張していた。
自分の村が徐々に近づいてきて、もう時期どうなっているのか、わかってしまうからだろう。
「ねぇ、向こう。煙が見える」
エレナが指差しながら、振り向いてきた。
その方向を見ると、同じ辺りから複数の煙がのぼっているのが見えた。
「村の中心のほう……」
背後から俺の腰に回しているマオノの手に力が入った。
背中がマオノと密着する。
「きっと大丈夫だ、マオノ……」
「うん……」
しかし、村の集落に近づいていくと、家が燃えていた。
村人が外で騒いでいる声も聞こえてくる。
「やっぱり、なにかあったんだわ」
「急ごう」
上空から少しずつ高度を下げて、村の中心へと近づいていく。
「キャー、やめてーーー」
女性の悲鳴が響いてきた。
「あっちか」
リフィーの右へと向かわせる。
「あそこかっ」
村人が何人も集まっている場所があった。
大剣を持った男に、村の男が胸元をつかまれていた。
剣を振りかざそうとしている。
――何人もやったあとじゃないだろうな。
「先に降りる。コレ、頼んだ」
リフィーのたずなをエレナに手渡す。
「えっ、ちょっと、私……待ってキールっ」
俺はリフィーの首元にかけてあった剣を握る。
「リフィーなら、ちゃんとわかってくれるさ」
アルスが修復してくれた剣を持って、リフィーの上から飛び降りた。
「キール、こ、コレっ、ど、どうするの〜〜〜」
「お、落ちますぅぅぅ〜〜〜」
エレナとアルスの悲鳴がどんどん遠ざかっていく。
サッと着地。
今にも大剣を振り降ろそうとしている男の前に、剣を振りかざす。
キーンと、金属同士のぶつかった音が一帯に響いた。
もうひと振りっ。
大剣を持った男が勘づいて、後方に飛びのいた。
――へー。できるヤツか。
「なに者だ?」
細身だが筋肉質で、目つきの悪い男だった。
「この村に人を届けにきた通りがかりの賞金稼ぎだ」
「賞金稼ぎが配達? 俺が賞金首900万のダフネル兄弟の弟、ファルコ・ダフネルとわかって、もちろん剣を向けているんだろうな?」
「あんた、賞金首だったとは……それは、好都合」
――まさか賞金首に出会えるなんて、もしかして俺は幸運の持ち主なのでは?
「ふんっ。ダフネル兄弟の名を知らないなら、今のうちに逃げなよ。こっちは本物の殺し屋だ。配達屋が出てくるところじゃないぜ」
「この村から手を引くっていうなら、今回は見逃してやってもいい」
「はははっ、バカが。こっちは雇われて仕事をしているだよ。仕事を放棄するわけないでしょ。邪魔をするヤツは、村人と一緒にバッサバッサと真っ二つにしちゃうよ」
殺し屋と名乗ったファルコが突っこんできた。
ふたたび、金属のぶつかり合う音が何度も一帯に響く。
――細い体躯のわりには、大剣の力も速度もあるな。
「ほらほら、どうした? その剣は、攻撃を防ぐだけか?」
「どうも、剣の修復具合が良すぎることがわかったよ」
「あぁ? なにを言ってる? そんな剣ごと真っ二つだぁ」
キーンと、ファルコの大剣を振りはらった。
「なにっ?」
ファルコの手から大剣が離れて、回転して宙に飛びあがった。
「きさまっ……はっ」
「こっちだ」
ファルコの背後から、後ろ首に手刀を打ちこんだ。
「グハッ」
ファルコがその場に倒れると、ファルコの顔の真横に大剣が落ちてきた。
地面に刺さる。
賞金首をケガさせると、賞金が下がったりもするから、大人しく眠っていてくれ。
「おぉー」
「これで助かったぁ……」
周囲から歓声があがった。村人たちから拍手も。
――とりあえず、コイツだけのようだな。
「キール」
リフィーが着陸して、エレナたちが降りてきた。
「無事、降りてこれたようだな」
「うん、リフィーが言うこと聞いてくれたの」
「だから言ったろ」
「村の人たちは?」
マオノが心配して聞いてきた。
「無事だ。だが、コイツは誰かに雇われて、村人を襲うように言われいたようだ」
「クラオエの言っていた?」
「たぶんな」
「くっ、みね打ちとはなめられたもんだ」
ファルコが首を押さえながら立ちあがった。
――アレをくらって、もう目を覚ますとはたいしたヤツだな。
ファルコはズボンのポケットから、赤い液体の小瓶を取り出した。
「使うつもりはなかったが、試してみるか……」
見たことのないポーションだな。いったいなにを飲んでいる?
「おもしろかった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「キールたちは、どうなるのっ……!」
と思ったら
下にある ☆☆☆☆☆ から、作品への応援お願いいたします。
おもしろかったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直な気持ちで大丈夫です!
続きが読みたい方は、ぜひブックマークもしていただけると本当にうれしいです。
よろしくお願いいたします。




