第39話 旅立ち
夜中、気配を感じて目が覚めた。
はぁ、寝づれー。
エレナとアルスに挟まれて寝ていた。
宴が終わってから、結局、みんな、俺の家に来て寝ている。
マレルダだけは、ドラゴンたちとともに谷へ帰っていった。
気配のあった中庭に出ると、月明かりのもと、子供の飛竜がいる。
マレルダの言うことを聞かず、居残り、俺の家の庭に連れてきた。
そして、もう1人。
庭の真ん中に立っていた。
マオノか?
服を身につけていない。
染み1つないきれいな後ろ姿をこちらに見せて、腕を広げていた。
波打つやわらかなボディラインがくっきり浮かびあがっている。
「えっ、なんで、裸?」
「えっ、キ、キール?」
マオノは、とっさにふくよかな乳房を隠すようにしてしゃがみこんだ。
その細い腕では、その全部を隠しきれてはいなかった。
脱ぎ置いてあったローブを身につけた。
「すまない。庭に気配を感じて」
「わ、わたしこそ、こんな姿で……」
いや、悪くなかったぜ。
「いったい、なにをしていたんだ? 真夜中に唱える呪術か?」
「月光浴」
「月光浴?」
「月の光を浴びることで、より早く魔力が回復する……そういう言い伝えがあって、魔力を使いすぎたときはよくやってて」
そんな言い伝え、聞いたことなかったな。
「そうだったのか。邪魔して悪かったな」
その場を立ち去ろうとする。
「キール」
呼び止めてきたマオノが近づいてきた。
「本当に頼りにしていいのか? まだ会ったばかりなのに……」
手を大きな胸の膨らみの上に置いているマオノが見つめてくる。
「もちろんだ。賞金稼ぎとはいっても、カネを要求したりはしない。あ、でも、礼をしたくなったら、いくらでもしてくれよな」
マオノの肩に手を置いた。
ローブの布越しに、人肌のぬくもりが感じとれた。
「あぁ。ありがとう」
と、マオノが俺に体をあずけてきた。
「不安だよな……きっと、大丈夫だ」
そっとマオノの背中に腕をまわした。
「うん……」
飛竜は、しばらく抱きあう俺たちを見るのに飽きたのか、目を閉じた。
翌日。
庭で、アルスが剣の修復作業にとりかかる。
エレナ、マオノ、飛竜も見つめる。
折れた黒い剣先と持ち手をもとの形に並べる。
接合部に、昨日、入手した黒いドラゴンのうろこを重ねる。
アルスは、剣に手をかざした。
淡い光が剣を包みこむ。
その光の中で、ドラゴンのうろこが溶けるように剣の接合部に染みこんでいく。
「おぉ」
俺だけでなく、みんな修復されていく光景を凝視していた。
そして、剣はすでに剣としての形を取りもどしていた。
「もう少しです。硬質化しますぅ」
「あぁ。できるだけ、折れないようにしてくれ」
「も、もちろんですぅ」
キランと、剣が光りを反射する。
剣を包んでいた光が消えた。
「完成です。ど、どうでしょうか?」
剣を持って眺める。
黒光りする表面に俺の顔がはっきりと反射している。
「へー。じっくり見ても、折れたところがまったくわからない。すごいな、アルス」
「あ、い、いえ、そんな、わたしは……」
「ありがとうな、アルス」
「こ、こちらこそ、そう言っていただき、ありがとうございますぅ」
アルスは大きく頭を下げた。
「よし。これで旅に出られるな」
剣を鞘にしまう。
「っと、その前に」
パブ兼バウンティーハンターギルドに向かった。
「事情は聞いてる。オーディスの手配書は活かしておくよ」
パブの店主アドルフが、賞金の入った袋を置いた。
「しばらくそうしておいてくれると助かる」
「で、賞金だ。すまないが、オーディスはそれなりに高額だから、ここじゃあ、200万セピーしか支払えない」
袋の口を開ける。
キラキラの光が漏れでてくる。
「わぁぁぁ、きれいですぅ」
アルスがその光に吸いこまれていく。
「いや、全額もらっても持ち歩けない」
「それで、コレを渡しておく」
アドルフが紙を手渡してきた。
「そこに書いてある町のギルドで、残額を受け取れる証明書だ。金額が大きいと、連帯で出資していることがほとんだだからな」
「これは助かるよ。世話になったな」
「もう行くのか?」
「国王に挨拶してからな」
「そうか。まさか、島流しにあって所持金のないやつが、あっという間に稼ぐ賞金稼ぎになってしまうとはな」
「いろいろ良くしてくれて助かったよ」
「なに、いいってことよ。こちらこそ、リフレリアを救ってくれてありがとうよ、キール」
アドルフに差し出された手を握り返した。
「また、戻ってくるよ」
「ってか、みんな行くのか?」
アドルフはエレナ姫を見て言った。
「もちろん、私も行きますっ」
俺の腕をがっしりつかんでくる。
「ははは……これは国の一大事だな、ははは……」
パブをあとにして、国王と面会する。
アドルフとうって変わって、国王は鬼の形相である。
「ならん。王女を旅には出せん」
まぁ、当然だろうな。
「いやだ。私は行くの。キールと一緒に旅をするの。放してよー」
エレナは侍従たちに取り押さえられてしまい、奥へと引きずりこまれている。
それでも抵抗をみせるエレナ。
「キールよ。いろいろ世話をかけたな。さすがに国外へ出すわけには行かない」
「はい……」
「ねぇー、キール。キールの力なら、この人たち倒せるでしょ?」
いやいや、さすがにそれはできないぜ、姫さん。
「だったら、私、賞金首になる。それなら、キール、私をつかまえに来てくれるでしょ?」
はは。
でも、賞金を受け取るためには、身柄をギルドに引き渡すことになるんだが。
「すまない、キール。こんな騒がしい別れになってしまって」
「いえ。エレナ姫。姫さまは姫らしく、部屋で大人しくしていてくれ」
「えっ? なんで、キールまでそんなこと言うの……」
エレナは涙をこぼしながら、侍従たちに引きずられて奥へと姿を消してしまった。
「はぁ……おてんばなのも困るな」
「それでは、私たちはこれで島をたちます」
「うむ。お主たちの旅が成功することを祈っておるぞ」
「ありがとうございます」
アルスとマオノも会釈をし、王の間をあとにした。
「良かったのか? エレナ姫を連れて行かなくて」
マオノが聞いてきた。
「エレナ姫がいなくなると、さびしくなりますぅ」
悲しみを混じらせたアルスの声。
「誰も連れて行かないとは言っていない」
ニヤリと、口角をあげて見せた。
「ど、どういうことですかぁ?」
アルスとマオノは目を合わせていた。
中庭に出ると、子供の飛竜が待機している。
そして、飛竜の首から垂れ下がる形で、大きなカゴが取りつけられていた。
飛竜部隊の兵士にお願いしておいたものだ。
「これで荷物を簡単に運べますね」
ググー
アルスの声に、機嫌よく答えた飛竜。
「さぁ、行くか」
飛竜に乗る。
俺の前にアルスが座り、背後からマオノが俺の腰に腕をまわしてくる。
飛竜の顔につながったたずなを軽く引っぱる。
翼が広がり、羽ばたいた。
2度3度翼が強く打つと、宙に浮き、高度があがって行く。
「ど、どこへ行くんですか?」
なかなか城から離れない飛竜の動きをみて、アルスが聞いてきた。
「さて、どの部屋だ? あそこか!」
飛竜を城の高い位置にある窓へと近づけていく。
窓際で、エレナはうつむいていた。
「えっ、キール、まさか」
背後からマオノが言ってきた。
「エレナ姫〜」
その姿に気づいたアルスが手を振る。
「エレナ姫。言った通り、部屋で大人しくしていたか?」
「キール? キール!」
「姫さんも行くなら、今のうちだ」
片手を差し伸べる。
「うん、行くに決まってるよ」
ドレス姿のまま窓枠を蹴って、飛竜に飛び乗るエレナ。
「よっ、と」
手をとってエレナを抱きとめる。
「キール!」
エレナが強く抱きしめてきた。
同時に、ぐらっと飛竜が傾いた。
「お、落ちるですぅ〜」
泣き叫ぶのはアルス。
「落ちない」
たずなを引いて、その勢いのまま城を離れていく。
「いいの? お姫さまなんてさらっちゃって、バレたら……」
マオノがあきれていた。
「賞金稼ぎから賞金首になっちまうかもな」
高度をあげ、みるみるうちにリフレリアの島は小さくなっていた。
第1章 終わり
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
新章の構成を練るため、更新をお休みします。
再開は、2週間後くらいを予定。
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