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第37話 光と闇

 そこにいた飛竜は、エレナたちから少し距離をとっていた。

 なにかするわけでもなく、そこでずっとたたずんでいた。


「あの飛竜は、ずっとこっちを見ているけど」


「さっき、アルスたちとドラゴンのうろこを取りに行ったときから、ずっと着いてくるの」


 エレナが体をぴったりくっつけてきて言った。


「もしかすると、親とはぐれたのかもしれない。ここにいれば、安心だと思って着いてきたのかもな」


 飛竜を観察するマレルダ。


「こんなに人がいるのにか?」


「ドラゴンは賢い。危害をくわえる人間なのかくらい判断できる」


 まぁ、あのでかい龍もここにはいるしな。

 って、あいかわらず、アルスにぞっこんか。


 龍は自分のヒゲで、すでに服を着ているアルスの体のあちこちを突っついていた。


「さて、密猟者どもを運びたいんだが……」


 と、マレルダに言いかけたときだった。

 辺りが突然、暗くなった。


「か、かあ様?」


 見あげたマレルダが、驚いた。

 マレルダだけじゃなく、俺もその場にいた全員が一瞬、背筋を凍らせた。

 一帯にシシシュの体の影が落ちていた。


「キャッ! キ、キール」


 エレナが俺に抱きついてきて、背後に身を隠す。


「うぎゃぁぁぁぁ、食べられてしまいますぅぅぅぅ」


 アルスが悲鳴をあげて、龍の頭の影に身を隠す。


 グシシシシシ


 龍はアルスに頼られて嬉しいそうな声をあげていた。


「シシシュ……」


 深い穴の中で身を隠していたシシシュが宙に姿を現したのだ。

 暴れていた龍よりも大きな姿に、シシシュというドラゴンの偉大さを感じた。


「エレナ姫。大丈夫だ。穴の中にいた谷の主だ」


「う、うん……」


 暗がりで見るのと、明るいところで全体の姿を見るのとでは、迫力が違った。


「ど、どうしてこんなところに? 必要があれば、私が……無理をしないで」


 光に照らされて見えた龍の呪いの傷は、思ったよりも広く深かった。


 龍にこれほどの傷を残すとは、相当の魔術師だろうな。

 それでも、その傷に耐えて生きつづける龍も龍だが……。

 なんて生命力だ。


「いや、キールたちに感謝を言いに来たのだ」


「かあ様……」


「キールよ。あの龍の暴走を止め、密猟者たちをつかまえてくれてありがとう!」


「いや、俺は自分の仕事をしたまでだ」


「ははは……そうか……そうだったな。これでまたしばらく谷は、落ち着いた時間がつづくだろう」


「あぁ」


「それと、その飛竜だが……」


 シシシュは、少し離れたところでたたずんでいる飛竜に視線を送った。


「かあ様? なにか?」


「密猟者たちに殺されたドラゴンの子供だ」


「それじゃ、あの子はこのまま1人で生きていかなければならない。くそっ、密猟者たちめ。これだから、ヒトは……」


 マレルダは拳を強く握りしめた。


「キール、どこに?」


 エレナに聞かれたが、なにも答えることなく、その飛竜に近づいていく。

 飛竜が、警戒するように顔をあげ、翼を広げた。

 それでも逃げる様子はない。


「もう少し早く来ていたら、お前の母さんを助けられたかもな。ごめんな」


 そっと飛竜の体を手で触れた。

 硬い表皮から温かさが伝わってくる。


「お前たちになんの罪はないのにな……」


 ググゥ


 翼を閉じた飛竜が俺を見る。


 まさか、言葉が通じた?

 そんなわけないか。

 俺から言えることは、1人になっても強く生きろよってことだけだな。


 グガァ


 ――キール。


 ――ん?


 シシシュ?


 その場でシシシュにふり返った。


 ――ひとつ、お主に伝えておきたいことがある。


 ――俺に?


 辺りを見回すと、シシシュの声を気にする者はいなかった。


 俺だけにしか聞こえていないのか。


 ――そうだ。お前の中にある光と闇だ。


 ――俺の中の、光と闇……。


 ――どうだ、自覚していることはあるだろう。


 うなずいた。


 まぁ、光はよくわからないが、闇は心当たりありすぎるな。


 ――光は、お主の探し人。その光があるから、こうして今ここにいるのだろ。


 ――確かに。


 ――私は神ではない。その光が、最後の最後まで輝いているかまではわからない。


 ――もちろん、俺もそれは理解している。ただ、どっちであれ、真実を知りたい。


 ――ならば、光だけを目指して進むがいい。決して、闇に突き進んではならなぬ。


 ――闇ね。


 ――そうだ。お主を救うものではない。復讐など、やめておくのだ。


 ――わかっているつもりだ。


 でも、その場になったらどうするか、わからない。

 そんな気がする。


 ――それでも光に向かうことだ。もし、光を見失っても、お主の近くで光りつづける光がある。


 ――俺の近くで光る?


 ――うむ。意識せずともわかるだろうに。ともに光れば、けっして闇に飲まれることはない。


 ――あぁ、そうだな。


「……ール。キール?」


「あっ、ん? どうかしたか、姫」


「キールこそ、じっとして黙っちゃってどうしたの?」


「あ、あぁ。ドラゴンと話してた」


「えっ、キール、ドラゴンと話せるの? どうやってどうやって? 私も話したい! どんな言葉を使うの?」


 エレナは、俺の手を握ってねだってくる。


「目を見て、心で話しかけるんだよ」


「うん、やってみる。じぃー」


 エレナは飛竜の目を見つめた。


 ウグゥ……


 飛竜は、エレナの眼力に押されて首を引いていた。


 ――俺からの光になるかわからないが、光を受け取ってくれ。


 ――お主。


 シシシュの傷口の下まで行く。

 そして、傷口に向けて手をかざした。


 ――マナ・クランクハイトハイレン


 シシシュの傷口に、光の粒子が集まって包みこむ。


 ――キール。


 ――完全にこの傷を治すことはできない。呪いの魔法を解かないかぎり。


 それでも徐々に傷口が癒えていく。


 ――やはり、お主は。


 ――あぁ、マナの使い手だ。けど、マナは破壊には使わない。とても力がありすぎるからな。もし、使えば、両親を殺したやつらと同じだ。


 ――キール。


 ――やはり、これ以上は。


 傷口のほとんどはふさがった。

 元通りとまではいかない。

 呪いの魔法の影響か、表皮はまだ紫色の部分が残ってしまっている。


「うむ。だいぶ、よくなったぞ、キール」


「キール。お前、かあ様になにを?」


 マレルダが駆けてきた。


「なに、癒しの魔法をかけただけだ。完全には治せなかったが……」


「かあ様、大丈夫ですか?」


「かなり楽になった。キール、助かったぞ」


「キ、キール……」


 マレルダと目を合わそうとしたが、視線を外される。


「キール」


「なんだ?」


「私からもお礼を言わせてくれ。ありがとう。密猟者をつかまえてくれ、かあ様の傷まで癒してくれてありがとう」


 マレルダが照れくさそうに言ってきた。


「あぁ。俺たちもお世話になってるからな、ドラゴンには。それに、剣を直すためのうろこも」


「キールのためならばいい。あまり、金もうけのために使われるのは、イヤだけど」


「生きていくためには、カネが必要だから、稼がせてはもらうがな」


「まぁ、かあ様がお前を認めたからな……そうでなければ、許さない」


「お許しついでに、手伝ってくれないか? とらえた密猟者たちを王都まで運びたいんだが」


「キ、キール、お前……まぁ、コイツらを放置されても困るからな。運んでやる」


 文句を言いたそうなマレルダだったが、笛を吹いた。

 ドラゴンが数匹、飛んできた。


 拘束魔法で動けないオーディスをドラゴンに乗せているときだった。

 袖から見えた手首の紋章が目に入った。


 ――はっ! この紋章は……。


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