第33話 密猟集団の捕獲
龍はアルスにメロメロだった。
裸のままのアルスは、龍の顔前で腰を抜かしている。
「マレルダ。アルスは状況を飲みこめてない。アルスと龍を頼んだ」
「あぁ。キールは?」
「やっと仕事ができる。賞金首を獲る」
オーディスに向き直る。
「大人しくなったなら、そこを狙うまで」
すでにオーディスが宙を飛んで、槍を龍に向かってかまえていた。
「させるか」
後ろ腰のダガーを引き抜いて、オーディスの前に飛び出た。
突き刺そうとする槍を振りはらう。
金属のぶつかった高い音が、谷に響きわたった。
「邪魔するものは、狩るまでだ。ドラゴンでなくてもな」
オーディスは俺に向けて槍をかまえ直す。
「狩られるのは、お前のほうだけどな」
ダガーをかまえ直す。
「賞金稼ぎ。お前は俺だけを狩りたいんだろうが、こっちは密猟集団だ」
辺りからライフルの発砲音が、数回鳴った。
サッとよけると、地面に複数の穴が空く。
「身のこなしは良さそうだな」
「そうだな。それなりに自信はある。ただ、賞金のかかっていないやつらにはあまり興味がないんだが、報酬アップの足しにする交渉材料にさせてもらうか」
また、ライフルの発砲音がなった。
弾をよけて、体を1回転させて、投擲ナイフを発砲してきた方向に投げ飛ばしていく。
「あっ」
「ぐあっ」
「クッ」
と、辺りからライフルを落として、声をあげる密猟者たち。
「しばらく静かにしててもらうぜ」
なにが起きたのかわからずにいる密猟者たちに向かって駆けた。
「ゔっ」
「ふげっ」
「ぼぎぁ」
密猟者たちを気絶させた。
「んっ?」
ガサガサッと、林の中で音がした。
「おい、逃げるんじゃねーよ。まだ仕事が終わってねぇぞ」
オーディスが叫んだ。
「「うぎゃぁぁぁ」」
逃げた密猟者たちの悲鳴が響いてきた。
逃げようとした密猟者たちは、ドラゴンにつかまっていた。
ある密猟者は、爪むき出しの飛竜の足でつかまれて。
ある密猟者は、龍のとぐろに巻かれて泡を吹いていた。
「キール。ドラゴンたちが逃げた密猟者たちをつかまえたって」
マレルダの声が聞こえてきた。
「おぉ、助かった」
マレルダに手を振ってみせた。
「残る密猟者は、オーディス。あんただけだな」
ダガーの先をオーディスに向けた。
「そうでもない。もう1人いることを忘れたか?」
「もう1人?」
「そうだ……マオノ。まさか、お前はそっちについたわけじゃないだろ?」
オーディスに名前を呼ばれたマオノは、胸元のローブをぐっとつかんて息を飲んでいた。
震えている。
「村のやつらがどうなってもいいのか?」
「村? なんのことだ?」
「賞金稼ぎには関係ないことだ。――さっきはコイツに助けられて命拾いしたな。また、自分の仕事ができる機会が来たじゃないか。なぁ、マオノ」
マオノはローブを頭にかぶって、オーディスとキールの間に歩き立った。
そして、魔法のステッキをかまえた。
「わかってるじゃないか、マオノ。なんのためにココにいるのか……」
オーディスはニヤリと口角をあげた。
「はい……」
もう彼女には魔法を放つ魔力はないはずだ。
それでも前に立つか。
それだけの理由が……。
「どんな事情があるのか知らないが、お前はもう戦えないだろ」
「それでも、私はみんなのために……」
マオノは顔を伏せて言う。
「お前はアイツらに使われているだけだろ?」
「それで、みんなの命が守れるなら……」
ステッキの先を俺に向けてきた。
そのステッキが震えている。
握る手に力がこもってもいた。
まさか魔力をむりやり引き出しているのか?
「おい。そんなに無理したら、魔力が枯渇して自分の命が……やめろ」
「黙ってて。もう私はヤルしかないの」
魔力がないなりに、集まってきてるな。
このまま魔法を放てば、本当に……。
「やめろ」
「……極・……」
「その状態で、そんな超上威力魔法を使ったら――」
地面を蹴って、いっきにマオノとの間合いをつめた。
ステッキを持つマオノの腕をつかむ。
「やめるんだ」
んっ?
なんだ?
体の力が抜けていく。
……まさか!
「これで、人1人くらい殺せる魔力は……」
丸メガネの奥のマオノの目は、強く閉じられていた。
「俺の魔力を吸収するために、わざと」
魔力を吸収できる魔導師だったとは……。
すると、マオノが目を開いて、俺を見つめた。
その悲しさと優しさが同居する目では、人は殺せないぞ……。
マオノが急に涙をこぼしはじめた。
ど、どうしたんだ?
「あ、あなたは……」
マオノの大きく見開いた目で見つめられた。
「俺がどうした?」
俺のなにに驚いているんだ?
「マオノ。お前がやらないなら……」
待ちかねたオーディスが、槍をかまえて走り駆けてきた。
「マオノ。村人たちは計画に使われて、どのみち助からないんだ。悲しまないように、ひと思いにここで殺してやるよ」
「えっ、そ、そんな……私が協力すれば、命は助けるって……」
と、マオノはふり返った。
涙の粒が弧を描いて飛んでいった。
「ちょうどいい。2人ともそこで死ね」
オーディスは槍で俺とマオノを貫こうとしていた。
握ったままのマオノの腕を引っぱる。
マオノの体を抱きとめる。
そして、ダガーの切っ先で、槍の先を受けとめる。
「なにっ?」
オーディスの槍は、それ以上前に進んでこない。
「仲間をなんだと思ってるんだ?」
「単独の賞金稼ぎが、仲間を語るんじゃねぇーよ」
オーディスは槍を引いて、また狙いの位置を変えて、突き刺してくる。
ダガーで槍の先を振りはらう。
金属の弾ける音が響く。
「賞金稼ぎ風情が、いちいち首を突っこんでくるんじゃねぇーよ」
「お前らがドラゴンを密猟するのは、単にカネを稼ぐためじゃなさそうだな。目的はなんだ?」
「いちいち答えるわけねぇーだろ。人を抱えて、さっきの身のこなしができるか、賞金稼ぎーーー」
オーディスは両手でかまえた槍を連続で突き刺してくる。
マオノを抱えたまま体を回転させて槍の攻撃をよける。
そして、オーディスの背後へと回り、オーディスの首元にダガーの刃を向けた。
「なんなんだ、その身のこなしは……殺すなら殺せ……」
「人の命も自分の命もそんな粗末に扱うんじゃねーよ。急・暗黒拘束」
「うがっ」
オーディスは、黒い煙の紐のようなもので全身を縛られる。
「か、か、か、が……」
石のよう固まってしまったオーディスはその場に倒れた。
「しばらく痺れる楽しい時間を過ごしていてくれ」
「う、くっ、かっ……」
「なにか言いたそうだが、しゃべれないぜ」
つい、暗黒魔法を使っちまったぜ。
生きたままつかまえることができたからいいか。
オーディスなら、上威力の拘束魔法でも死ぬことはないだろう。
「大丈夫だったか? マオノだったか?」
「あ、は、はい……」
「俺の魔力を吸収したから、大丈夫だよな」
「え、えぇ……ありがとうございます。じゃなくて、魔力を吸い取ってしまい申し訳ございませんでした」
マオノが勢いよく頭を下げた。
「いや、そんな能力を持っているとは思ってなかった」
マオノがまた頭をあげる。
その勢いで、ローブに隠れていてもわかる大きな胸が跳ね揺れている。
「いえ、あなたこそ、マナ徒、だったとは……」
「えっ?」
――どうしてそれを。
俺はマオノと目を合わせたまま動けなかった。
「おもしろかった!」
「続きが気になる、読みたい!」
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