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第32話 龍を鎮めた者

 マレルダの龍は、密猟者と理性を失った龍が争う場所の近くまでやってきた。

 龍の威嚇する声や銃声、魔法の破裂する音、密猟者たちの声が聞こえてくる。


 まだ、やりやってるのか。

 どちらもある意味、しぶといな。


「ゆっくり近づいてくれ」


 マレルダに言うと、うなずいた。

 そして、その意思をくみ取ったように、龍が減速した。


 突然、戦いの場に突っこんだら、さらなる混乱を招くだろう。


「ここからは俺1人で行く。ここにいてくれ」


「本当に1人でやるつもりなのか?」


 マレルダが聞いてきた。


「あぁ。1人のほうが動きやすいからな。鎮静剤が効いたら、マレルダ、君が龍を説得してくれ」


 マレルダはうなずいた。


「キール、気をつけてね」


「あぁ。エレナ姫、アルスとここで静かに待っていてくれ」


 2人はうなずいた。


 アルスはともかく、エレナ姫はなにを言っても動いちまいそうだが。

 マレルダがいるから、止めてくれるだろう。


 マレルダの龍から飛びあがって、崖の上から向かった。

 戦況が見える木陰からうかがう。


 オーディスたちもねばってるな。

 先にどちらの体力が尽きるかは明白だが、なぜ、そこまで必死に狩ろうとする?

 ドラゴンの血がほしいのか……。


 マオノが氷の魔法を放った。

 氷で作られた巨大な氷柱が、龍の胴体に激突する。

 しかし、氷柱は先っぽから細かい氷に砕けていった。


 マオノは肩で息をしている。


 あの女魔導師、だいぶ疲れてるな。

 もう魔力がないのか。


 龍はマオノのそばに尾を振り降ろした。

 地面がえぐれたその衝撃で、マオノは吹き飛んだ。


「キャー」


 オーディスの足下に転がったマオノ。


「おいおい、魔導師さんよ。もっと強い魔法を使ってもらわないと困るぜ」


「は、はい……で、でも、もう……」


 マオノは、ケガした肩に手をあてて立つ。

 しかし、立っているのがせいいっぱい。


「いいんだぜ。ここで逃げても……」


「そっ、それは……」


「だったら、ちゃんと仕事してもらわないとな」


「は、はい……」


 マオノはステッキを龍に向ける。


極・稲妻雷槍キョク・ブリッツサンダーランス


 振りかざしたステッキの先から、魔法は放たれなかった。


「そ、そんな……」


 マオノの腕がスッと下がった。


 ――完全に魔力が足りてなかったな。


「おいおい、ここでスカしてどうするんだ、魔導師さんよ。なんために連れてきたと思ってるんだ」


 グシャラララァァァ


 龍が口を開けて、向かっていく。


「もう使い物にならないなら、最後くらい仕事して死ね」


 オーディスはマオノの首元のローブをつかんで、左方向に放り投げた。


「えっ? キャーーー」


 龍の赤い目が、投げ飛ばされたマオノを追っていた。


 なんて野郎だ。

 仲間をおとりに使うとは、はっきり言って褒められたやつらじゃないな。


 崖を走り降りて、一直線にマオノに駆けていく。


 龍は、空中のマオノをひと飲みにしようと口をさらに広げた。


 ――ふっ。絶好の機会だ。


 地面を蹴って、空中でマオノを抱きとめる瞬間に、鎮静剤の球を龍の口の中に投げこんだ。


序・閃鋭風針ジョ・エッジドウィンドショット


 手をかざして、風の針を球に刺した。


 球は破裂。

 鎮静剤の液が口の中に広がる。


 ――マナ・シュネリヒカイト


 鎮静剤が光を放って、一瞬で口の粘膜の中に消えていった。


 マオノを抱きかかえたまま、閉じられる龍の口をかわす。


「うまくいったぜ。大丈夫か?」


「えっ? あっ、はい……」


 抱きかかえていたマオノをゆっくりと立たせた。


「仲間だってのに、ひどいやつらだな」


「あっ、いえ、その……痛っ」


 マオノは肩を手で押さえた。


「治癒を」


「いえ、大丈夫です。自分でやりますから……あっ!」


 マオノが顔をあげて前方を凝視した。

 龍が勢いよくこちらに向かってくる。


「も、もう……」


 マオノは、スッと顔を伏せた。


「大丈夫だ。見てみろ」


 龍は目の前で動きを止めていた。

 怒りに満ちていた目は、徐々に柔らかくなっていた。


 ヴグォ


「えっ、どうして……あっ!」


 マオノはなにか思い出したように俺を見つめてきた。


「キール、やったようだな。こんなにも早く効くとは」


 マレルダがやってきた。


「アルスが液体化してくれたおかげだ」


「わかる? 私、マレルダ……」


 マレルダは両手をあげて龍に話しかけた。


 ヴグ


「良かった。もう大丈夫よ。さぁ、巣へ戻ろう」


 ウゴォォォ


 龍の目がまた鋭くなって、マレルダを見つめていた。


「えっ? もうあいつらのことはいいから。あとは私たちが……」


「どうした? マレルダ」


「侵入者全員、生きては返さないと……」


 怒りがおさまって、逆に冷静になったか。


「マレルダ、密猟者は俺がつかまえると伝えられるか」


「わかった……ねぇ、聞いて。密猟者たちは私たちが捕まえるから安心して……」


 ヴグォォォ


「えっ、それは……」


「どうした?」


「今まで殺された仲間たちのためだからって……」


 グゴォガァァァァ


 龍は吠えて、また暴れはじめた。

 土ぼこりがあがる。


 ちっ。理性を取りもどして、冷静に怒るのかよ。

 龍はバカじゃない。

 冷静に動かれたら……

 体力的にも分が悪い。


「マレルダ、その魔導師を頼む」


「キール? お前はなにをする?」


 密猟者たちに向かっていく龍を追いかける。


 賞金首を食われてたまるか。


「目を覚ました龍、あいつらは俺にまかせてくれよ」


 龍の目が俺を一瞬、見つめた。

 尾が振り降ろされる。

 飛び退ける。


 俺も侵入者ってことか……。


 グガァァァ


 龍が方向転換して、俺に向かってくる。


 さすがに俺が龍と戦うわけには行かない。

 そのつもりもないんだが。


 突っこんでくる龍を飛びよける。


「谷にネズミが迷いこんでいると聞いたが、お前か」


 着地した近くにオーディスがいた。


「よぉ、700万セピーの賞金首。大人しく俺につかまれ。そしたら、この場のすべてが解決する」


「ふん。ネズミは、まさかの賞金稼ぎか。先にドラゴンに食われてしまえ」


「心配してやってるんだ、オーディス。お前が食われちまうと、懸賞金が出ねぇだろ」


「ははは……笑わせるな。食われる前に、ドラゴンを仕留めるんだよ」


 また龍が突っこんでくる。

 オーディスとは逆方向に飛び退ける。


 ドラゴンの動きを止めるか?

 いや、マナを攻撃に使いたくはない。

 もし、使えば、昔のアイツらと一緒だ。

 どうする……。


「キールを、みんなを、食べないでください。食べるなら、わたしを……」


「アルス? 出てくるな。戻れ」


 すぐにアルスに向かって地を蹴る。


 いけにえの真似ごとなんてしても、人の常識は通用しない。


「わたしでは満足しないかもしれませんが、どうか……」


 アルスはザッと服を脱いで裸になった。

 そして、その場に座りこんで、祈るように頭を下げた。


 こんなときに、服まで脱ぐ必要があるかよ。


 ――えっ?


 龍はアルスを凝視して、動きを止めた。


 フスーーー  フスーーー


 鼻息荒くして、アルスを見つめている。

 龍の口元から伸びているヒゲが、触手のようにアルスをプニプニ突っついている。


 フガァァァ


「キーーール」


 マレルダとマオノが追いかけてきた。


「マレルダ、龍はどうしたんだ?」


「あの娘がそばにいてくれるのなら、静かにしてやるって」


「なんだ、それ」


 それにあのだらしなく垂れ落ちた目……。

 まったく龍の威厳が感じられないな。

 まさかアルスの色香が効いてるとはね、どんな龍様だよ。


「おもしろかった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「キールたちは、どうなるのっ……!」


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