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第27話 ドラゴンの谷へ

 ドラゴンの谷へ行くことになった。

 しかし、ドラゴンの谷は王都からは遠い。


 ドラゴンに乗って行ければと、城のドラゴンに乗せてもらえないか、王と謁見することになった。


「事情はエレナから聞いたぞ、キール」


 バルドウィン国王とエレナが並んで、俺とアルスの前に現れた。


「はい」


「お父さま、お願い。キールなら飛竜を操れるから」


「うむ。わしもキールにたずなを握ってもらいたい」


「ありがとう、お父さま」


 ピョンピョンと跳ねてやってきたエレナが、俺の腕をつかんだ。


「貸してくれるって」


「あぁ。国王、急な用件に快諾していただき、ありがとうございます」


 俺は頭を下げた。


「それはよいのだが、密猟者たちの討伐をまたキールにさせてすまぬな。いろいろと苦労をかけてたいへん申し訳なく思っている」


「い、いえ、苦労など……」


「兵を増強してドラゴンの谷の警備を強化できればよいのだがな」


「事情もおありでしょう。私はただそこに賞金首がいるというので、仕事をしにいくだけですから」


「して、密猟者はなかなかのつわものと聞く。エレナとアルスは、どうしても行くというのか?」


 王がひとつ咳払いをして言った。


「うん。だって、キールが行くから私も行くの」


 王は顔をかいて、苦笑いをしている。


 エレナの行動にもうなにも言えないのだろう。あきらめか。


「わ、わたしはキールにはお世話になりっぱなしであります。剣の修理のための材料を探しに行きます」


 アルスは全身をこわばらせていた。


「その材料はアルスにしかわからないので、連れて行きます。もちろん、責任を持って私がお2人を守ります」


 ふたたび俺は頭を下げた。


「よろしく頼む。エレナ、アルス、ちゃんとキールの言うことを聞くのだぞ」


 国王の顔は、王というより父の顔だった。


「うん」


「は、はい」


「では、キールよ。頼んだぞ」


「はい、おまかせください」


「今、飛竜を中庭に用意させている。エレナ、案内しなさい」


「はーい。こっちだよ」


 エレナに腕を引っぱれていく。アルスもあとをついてくる。


 中庭には、1匹の飛竜が準備されていた。


「こちら、ドラゴンの谷へのマップです」


「それは助かる」


 兵士から受け取ったマップを折りたたんで懐に入れた。


 最初に俺が飛竜の背中になった。


「ほら、アルス」


 おっかなビックリのアルスの手を握って、引っぱり上げる。


 アルスは俺の前に座らせる。


「エレナ姫」


 エレナ姫も引っぱり上げる。エレナは俺の後ろに座って、すぐに腰に腕をまわしてきた。


 ぴったり背中に体をくっつけてくる。

 背中が温かくなる。


「さ、3人も乗って、ちゃんと飛ぶのでしょうか?」


 アルスが首を回して、うるんだ目で俺は見つめられた。


「この大きさの飛竜なら問題ない。しっかりつかまってろ」


「う、う、う……はい」


 アルスの肩に力が入った。


 飛竜の口につながれたたずなを握って引っぱる。


 飛竜がゆっくりと体を起こして、飛竜の背中が少し斜めになった。


「うわわわ……お、落ちますぅ〜〜〜」


 飛竜の首に抱きつくようにつかまるアルスが叫ぶ。


「まだ飛んでないから、落ちることもないぞ」


 たずなを強く引っぱると、バサッと翼を広げて羽ばたいた。


 飛竜がふわっと浮いた。


「うわぁわぁわぁ……」


「暴れると、自分から落ちちゃうからな」


「はっ、はいぃ〜〜〜」


 飛竜は何度も羽ばたくと、前に進みながら高度をグングンあげていく。


 城からどんどん離れて、あっという間に城が小さくなってしまった。


「すごーい! さすがキール。こんなスムーズに飛竜って飛ぶのね」


 背後のエレナが耳元で叫んだ。


「普通、こんなもんじゃないのか?」


「わたしがやると、全然言うこと聞いてくれないから」


 それは、たずなの握り方を知らないだけなんじゃないのか。


 まぁ、そうひょいひょい姫さんに乗られて城を出ていかれたら、国王や兵士もたまったもんじゃないな。


「アルス、これで安定したぞ」


「は、はい……すっごい高い」


 辺りに見える山よりも高い高度になった。

 北西に進路を取り、飛竜の背中は並行になってまっすぐ飛ぶ。


「大丈夫か?」


「少し怖いですけど、風がとても気持ちいいですぅ」


「そうだな」


「あっ、見て見て! 湖」


 エレナが右斜め下を指差した。


「ど、どこですかぁ」


「あそこだ」


 アルスの右側から腕を伸ばして湖の方向に指を差した。


「わぁ、きれいですぅ」


 山賊テオの住み処があった場所から見えた湖だ。

 上から見ると、あんなに大きかったんだな。


 いくつかの山を越えた。


 懐からマップを出して、見る。


「この辺りだから……あそこか。よし、降下していくぞ」


「は、はいぃ……」


「あっという間だね。もっと飛んでいたかったなぁ」


 谷の入り口に、無事、降りた。


「こ、これは……リフレリア城の飛竜。えっ? エレナ姫さま?」


 リフレリア兵士が現れて、なにごとかと目を大きく開けて驚いていた。


 ドラゴンの谷の守衛か。


 エレナはサッと降りて、ここに来た理由を簡単に説明した。


「そうでしたか。賞金稼ぎのキール、あなたでしたか。話は聞いております。エレナ姫も谷へ?」


「うん」


 すぐに俺の腕に引っついてくるエレナ。


「深追いはしない。俺らが戻ってくるまで、この飛竜を見ていてくれ」


 今乗ってきた飛竜を指差した。


「はい、それはもちろんです。今し方も奥からドラゴンのうなり声が聞こえました。おそらく密猟集団クラオエが現れたのだと思います」


 だったら、ここにいないで捕まえに行ったらどうだ、と言いたいが。


「タイミング良く現れてくれて好都合だ」


「奥へ行けば行くほど、危険なドラゴンも増えるので気をつけてください」


「わかった」


「それと、最近クラオエではない者も目撃されています。赤い鎧の騎士が1人」


「そいつも密猟者なのか?」


「いえ、まだそこまでは不明です」


「1人でドラゴンを狩るのは無理だろう」


 となると、ドラゴンの谷を守るなに者か、俺と同じ賞金稼ぎか……。


「情報もありがとう。さっさと取りに行ってくるか」


 エレナとアルスは、おそるおそる谷へ入る。

 しかし、怖れはどこへやら。


「うわぁ、すごい。なにこれ」


「この草は、精製に使えるやつです。こんなところに生えているんですねぇ」


 エレナとアルスは見るもの、触れるもの興味津々。


 全然、進まないじゃないか。


「もう少し先に進むぞ。そんなんじゃ、いつになってもドラゴンのうろこは見つけられないぞ」


「待ってよ、キール」


「お、おいて行かないでくださいぃ」


 なんとか2人の興味を先へ先へとうながしながら進んでいく。


 グガァァァァ


 突然、ドラゴンらしき悲鳴が聞こえてきた。


「すぐ近くだ」


 カーブを進む。


 飛竜型、翼の生えたドラゴンが1匹地面に倒れていた。


 わずかに動いていて死んではいなかった。


「あっ、首に――」


 エレナは息が止まったように口元を手で押さえた。


 太い槍が飛竜の首に刺さり、血が流れていた。


「おもしろかった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「キールたちは、どうなるのっ……!」


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